毎年お盆になると、メタセコイア並木を抜けた先に佇む、会社所有の別荘へと足を運ぶ──それが、わが家の夏の儀式でした。だが今年は違う。ブレインフォグ療養中の身体は、無理をすれば必ずその代償を払わされます。私はあえてその恒例を断ち切った。これは“諦め”ではない、“選択”でした。 代わりに選んだのは、マキノサニービーチ。夏の終わりを彩る舞台にふさわしいその場所は、私たち家族にとって新たな記憶を刻むはずでした。しかし、到着すると目に飛び込んできたのは「満車」の無情な看板。駐車場も、シャワーも、更衣室も──その全てを失った瞬間でした。 不満を顔いっぱいに浮かべ、車から降りようとしない次女。その小さな背をな…