円地文子『女坂』(1957年)読了。 三人の着飾った女たちが菖蒲園の花を愛でる場面のあでやかさは谷崎潤一郎の『細雪』に出てくる姉妹の花見を思い出させるが、この三人が姉妹ではなく、二人は妾、あとの一人は息子の嫁だがどうやら舅の手がついているらしく、しかも全員が一つ屋根の下に住んでいるとなれば、その関係は重く複雑で隠微な色を帯びる。 妾どうしにもかかわらず仲良しの須賀と由美、病気がちでやや陰のある前者と上背があり少年のような後者の励まし合い慰め合う関係、寵を失った由美が嫁いでゆく前の晩の二人の寝床での静かな会話が印象的。 その後の展開で、異母兄妹が恋愛の手前までゆくところなどを読むと、谷崎よりはむ…