古いJRの駅。 夏の夕暮れに、一台のバイクが滑り込む。 男はTシャツを脱ぐと、水道でジャバジャバと洗い始めた。 上半身裸のまま、ベンチの背に濡れたシャツを引っかけると、彼は濡れた前髪をぐっとかき上げ、深く、そして満足げに息を吐いた。 焼けたマフラーが、キン……と、熱の醒める音を立てる。 (今日はここまでかな……) 遠くで子供の声がする。 夏の青が紫に沈んでゆく。 西風が彼の肌をなでていった。 なんの意味も含みもない、ただの情景です。 だけど、一人旅をしたことのある人になら伝わるでしょう? そこに流れる匂いや空気、ある種の充足感が。 普遍性とは無関係な、個人の体験の中にだけ宿る絶対的な価値。 私…