雨と寺と、カレーの匂い 会社を出た時はまだ小雨だったけれど、電車に揺られて鎌倉駅に降り立つ頃には、本降りの冷たい雨になっていた。 「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろうか」 そんな古い歌のフレーズがふと頭をよぎるけれど、予報を見る限り、ただの冷たい雨のままだろう。それでもいい。ホワイトクリスマスなんてロマンチックな演出がなくたって、鎌倉の冬の雨は十分に情緒的だ。 駅前の喧騒を抜け、家路につく。 いつものように、近所の寺の境内を通り抜けるルートを選ぶ。クリスマスの夜だというのに、寺の境内は漆黒の静寂に包まれている。踏みしめる砂利の音と、雨音だけ。木々の黒いシルエットが、冷たい夜空に滲んでいる。 こ…