それより三日過ぎて、極月十五日の朝、兵法稽古座敷にめし出され、諸家中の見せしめに、御長刀にて、御自身、「小輪最後」と、御言葉をかけさせたまへば、につこと笑ひて、「年頃の御よしみとて、御手にかかる事、この上何か世に思ひ残さじ」と、立ちなほる所を、左の手をうち落としたまひて、「今の思ひは」と仰せける。右の手をさしのべ、「これにて念者をさすりければ、御にくしみふかかるべし」といふ。飛びかかりて切り落としたまへば、くるりと立ちまはりて、「このうしろつき、また世にも出来まじき若衆、人々見をさめに。」といふ声も次第によわるを、細首おとしたまひて、そのまま御涙に袖は目前の海となつて、座中浪の声、しばし立ちや…