グラーツから車で2時間半、いくつもの色鮮やかな山や丘、かわいらしい民家の集まる谷を通り抜けて、ウィーンへ移動すると、まず感じるのは密度の違いである。 グラーツが知的で穏やかな「生活の都市」だとすれば、ウィーンは政治・芸術・商業の軸が交差しスパークする「劇場の都市」、すなわち「世界劇場」。 その原型をつくったのが18世紀の女帝マリア・テレジアだ。 彼女は帝国の統治を中央集権化し、建築・音楽・社交を国家の装置として整えた。 豪華な宮殿や宮廷文化はその象徴であり、政治は「演じられるもの」となった。以来ウィーンは、権威を演出する舞台として典雅に発展した。 しかし19世紀末になると、完成された秩序と形式…