直木賞候補にもなり、「本屋が選ぶ時代小説大賞」の受賞作でもある村木嵐『まいまいつぶろ』を読んだ。 徳川幕府第九代将軍家重と彼の通詞(通訳)を担った忠光を中心に巻き起こる跡目争いが主題なんだけど、この中心にいる二人が語り手になることはなく、二人の内心は霧に包まれており、周辺の人物がその霧に見出すもの映しだすもので物語が進んでいく。 その奥ゆかしさといったものがいい味をだしている。 忠光が通詞を担ったのには訳がある。家重は生まれつき麻痺があり口が回らず、誰一人として家重が発する音を言葉として聞き取ることができなかった。忠光に会うまでは。 家重の発する言葉を言葉として受け止め理解できる忠光はそれ以後…