少し前に書いた、2歳のときの「海の記憶」がある。 引っ越しの朝、家の前の海を何時間もじっと見ていた、あの時間。言葉にならないまなざしで、ただ世界を観察していたあの記憶。 そのときと似ているけれど、また少し違う「伝わらなさ」の体験が、もうひとつある。 3歳のころの、幼稚園での「お買い物ごっこ」だ。 他の子どもたちは、先生に促されながら、お客さんやお店の人になって、楽しそうにやっていた。でも私は、なんだかそれがよくわからなかった。欲しいものがないときもある。買わないお客さんだっている。 でも、先生はそれを許してくれなかった。 お買い物ごっこの日、私はお客さんの役だった。お店を見ながら、買うこともな…