※多少のネタバレあり。
【コンクラーベ】
コンクラーベ(Conclave)とは、新しいローマ教皇を選ぶ選挙のことである。「教皇候補者たちが密室に閉じこもって、新しい教皇が決まるまで何度でも互選で投票を繰り返す。投票の結果は煙の色で知らされる」くらいの知識はあった。少し興味があったので、久しぶりに映画館に足を運んでみることにした。
なお、コンクラーベは、ラテン語のcom claviから来ていて、「鍵がかかった」という意味とのこと。
【実際のところ】
映画を見て分かったことは色々あった。
先代の教皇が亡くなると、様々な儀式がある。そして、新しい教皇を選ぶために世界中から枢機卿たちが招集される。百人くらいの枢機卿が集まる。彼らは完全に外部から隔離される。
選挙は、有名な観光スポットでもあるシスティーナ礼拝堂で行われるのだが、枢機卿たちはそこに寝泊まりするのではない。礼拝堂に隣接して宿舎がある。宿舎は、ビジネスホテルのような感じで、個室が割り振られ、快適に過ごせる。なお、昔は礼拝堂で寝泊まりしていたそうだが、教皇ヨハネ・パウロ二世が、高齢の枢機卿には負担が大きいと考えてこの宿舎を作り、2005年のコンクラーベからは、礼拝堂での缶詰はなくなった。枢機卿たちは部屋でリラックスしたり、庭で散策することもできる。
選挙は無記名投票で行われ、結果が読み上げられる。決選投票のような制度はなく、3分の2の票が集まるまで、何度も同じ手続きが繰り返される。
当選者が決まると受諾の意思の確認がなされ、受諾した当選者は教皇としての名前を選ぶ。そして、投票用紙を燃やした白い煙が上げられる。
【本作】
本作は、コンクラーベを題材にしたミステリである。映画として面白いように色々と設定が工夫されている。
主人公は、イギリス人の首席枢機卿Lである。Lは、仕事に嫌気がさしていて、先の教皇にも辞任を申し出たが、辞めさせてもらえず、先の教皇の急死で、コンクラーベを取り仕切ることになってしまった。Lの願いは、先の教皇の路線を継承する穏健な教皇を選んで、自分は引退することである。
有力候補者は四人いる。一人目は、アメリカ出身のリベラリストB。二人目は、カナダ出身で穏健派のJT(以下J)。三人目はナイジェリア出身で福祉事業などに熱心なA。四人目は、イタリア出身で伝統主義のGT(以下G)。
そこに前教皇の隠し玉、メキシコ出身でアフガニスタンのカブール枢機卿のVB(以下V)が飛び入り参加する。
Bは、Lの友達である。Bは前教皇のチェス仲間で、前教皇の路線の継承者でもある。Lとしては、Bを当選させたい。ところが、Bはには教皇になる気概がない。Bの願いは、伝統主義者で前の教皇と対立していたG以外を当選させたいということである。BはJを推す。そのJには、これといった主義はない。ただし、権力欲だけは旺盛で教皇になるために色々と汚い手を使っている。Aは無邪気な明るいキャラであり、一定の支持がある。俗っぽい感じで出世欲は強そうだ。Gには、特に策略はないが、伝統主義・排外主義で無礼で押しが強く感じが悪い。そして、Vは誠実そうだが、謎めいていてどこか胡散臭い。
候補者たちはこのありさまで、適任者が見当たらず、Lは苦悩する。投票を繰り返しても当選は決まらず、その内に候補者のスキャンダル情報が寄せられ、Lは内偵を開始。歯がこぼれるように候補者たちは脱落していく。そうこうしている内にどうやら外の世界では何か大変なことが起こっているらしい。結局Lは、自分が教皇になるしかないのではないかと考え始め、投票用紙に自分の名前を記すのだった。しかし、そこに意外な展開が……。
【感想】
枢機卿は、ローマ教皇の最高顧問とのことで、定員は120人程度。全世界に13億人もの信徒を有するローマ教会の最高幹部である。しかしながら、映画に出てきた枢機卿たちは、タバコを吸うわ、酒におぼれるわ、けんかをするわ、嘘をつくわで、聖職者というよりも、取締役会に召集された大企業の幹部たちのようだった。
もっとも、選挙に入る前の講話で、Lは、「確信は信仰の敵だ。疑惑こそ信仰には大切だ」などと述べており、完全なものに仕える自分たちは、むしろ不完全であることを自覚すべきだ主張する。確かに、その意味では全員が候補者としての資質を有する。
疑問に思ったのは、Lの立ち位置で、選挙を取り仕切る立場でありながら、投票にも参加し、候補者でもあって、実際にLにも何票かは入る。しかも、Lは職権で一人だけ外部から情報を得ることができ、他の候補者の内偵までする。さらには、Lは明らかにBを推している。中立性を欠くLが選挙を取り仕切るのはいかがなものか。
また、選挙のやり方は、長年の伝統によっているのだろうが、まさに根比べ。宿舎も快適になり、いつまで経っても当選者が決まらない事態にならないのだろうか(そうなった場合の手順はあるようだ)。そういえば日本でもかつて密室で首相が決められた例もあった。もし日本で同じ仕組みを導入されたとしたら、阿吽の呼吸でさっさと当選者が決まるのかもしれない。もっとも、それでは映画にはならないだろうけれど。
教皇選挙
★★★
謎の多いコンクラーベの実際を知ることができる。ストーリーを意外な展開というか、予定調和というかは人によるだろう。