ちゃんとイエネコのものもあった。人間よりもスプリントでは速く、これは彼らの体の大きさを考えると驚異的だが、体の大きさの比較、1/2.5スケールで考えると、チーターと同等かもしれない。また、残念ながらネコのそれは、猫の速歩を高速で回したもので、これはこれで楽しいのだが、実際には猫もチーター同様の背骨を湾曲させて身体全体をスプリングのように使って走る。このアニメーションにおけるイエネコのロコモーションはその形にはなっていない。
ネコの疾走速度については文献根拠が示されていないので、ちょっとそのあたりは、ちょっと保留すべき部分ではある。文献を色々調べると「平均」約20マイル(32km/hr)という値が出てくる。チコの観察事例しかないが、体感的にそのくらいという気はする。おそらく48kmというのは、瞬間的な値かもしれない。もともとスプリンターなので、チーターの112km/hrみたいな数値として考えたら、それもあり得るかもしれない。もちろん、イエネコは人間同様個体差は大きな生き物で、最小と最大比べたら私とサイン・ボルトぐらいの差はあってもおかしくはないとは思う。32km/hrは最頻値あたりとして考えると良いかもしれない。
ちなみに、哺乳類走行速度に関する一般論として、この文献(
Garland,
T., 1983: The relation between maximal running speed and body mass in terrestrial mammals)の結論などはちょっと面白い。こういうアロメトリー、メジャーリングの仕事は、むしろ前世紀の文献に多い。
「最大走行速度は、平均して、最大有酸素速度の 2 倍を若干上回る。偶蹄目、食肉目、齧歯目では、最大走行速度は質量に依存せず、幾何学的に類似した動物に対する理論的予測 (T. G. Thompson,1917) と一致する。」
それで、ちょっと最新のバイオメカニクス的な論文を探していて、以下のものがあった。
D. Labonte, P. J. Bishop, T. J. M. Dick & Clemente, C. J. (2024) Dynamic similarity and the peculiar allometry of maximum running speed. Nature Communications volume 15, Article number: 2181.
アロメトリーってちょっと懐かしい言葉で、専門用語としての日本語では「相対成長」という訳語がついているが、「生物の体の大きさによらず、部分どうし、または部分と全体の大きさや重量、生理学的な諸量(代謝量、寿命など)との間に見られる量的関係」という意味として捉えて、確かに成長というダイナミズムを分析した仕事も多かったのだが、そのまま「アロメトリー」で使う方が、「成長」という言葉が入らないので混乱しないと思う。
Fig. 1: Animals small and large move by using muscle as a motor, but the maximum running speed
they can achieve varies non-monotonously with size: the fastest animals are of intermediate size.
ちなみに私も分野の論文を一つだけ書いたことがあるのだが、それは戦略としての成長スケジュールに注目したもので、学位を取るときに、恩師が褒めてくれた仕事の一つだ。
上記のLabonte et. al. (2024)によるありがたい仕事、一般化モデルとしてはこれで正しいわけだが、イエネコの場合、チーター同様のロコモーションが使えるので、この同じ体重の哺乳類の幅の中、比較すれば高速で疾走できる方の動物だとは思う。チーターが、ゾウやサイの姿をスケールダウンさせた高速追跡捕食者であるはずはないので。そういう想像もちょっと面白い。
スタートレックの第一シーズン『カヌーソ・ノナの魔力 “A Private Little War”』で、ゴリラ型の捕食獣が出てきたときには、幼心にその違和感に妙に興奮した。ゴリラ型の捕食者って進化の実験を見ても、いないのだよね。一番近いのはヒトだが、とても興味深いと思う。『ダンジョン飯』のライオスみたいな変態性を感じますか?多分気の所為だよ。
シカ・ウシ目と食肉目で体重200kg未満のところに最速値のピークが来て、そこに高速追跡型の哺乳類が生まれ、そのサイズが最適解があると考えたほうがいいと思える。捕食者側の戦略には、大きく二種類あって、長距離追跡と短距離勝負。もちろん、それぞれさらに待ち伏せ、グループ捕獲などのオプションや組み合わせも生まれる。
古くからトレッドミル(歩行・ランニングなどの走行マシーンね。
OK! GoのPVで初めて名前を覚えた)による観察や実験がされているが(例えばJ. A. Vilensky and M. Charlene^Patrick, 1984. Inter and intratrial variation in cat locomotor behavior)、あれの仕様から見てこの上で疾走してくれるところまで持っていくのは、難しいかもしれない。動画で結構上がっているが、
仕様からみても、この歩行器に付き合ってくれている猫たちは、みんな速歩までである。だから最初に上げたアニメーション動画もそうなってしまったのかもしれない。
しかし、
Cat Wheelのものでは、ネコは疾走している。こっちを使うべきだったのかもね。しかし、ちょっとネコにとっては危ないかもなというのは感じる。
トップの画像をドヤで載せた今から19年前の
チコの疾走写真を上げた記事(「疾走」)でも、似たような考察をやっているのだが、スケールモデル比較では、重力や物理的強度を上げる必要が大きくなるほど指数的に上がるため、小型である方が有利になることも確かである。ラジコンカーでも、スケール比較だと300km/hr出すのは簡単なことであるので。上のグラフでも体長に対して3次である体重が、指数で1単位落ちても、速度は1単位は落ちない。