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Running cat

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 この画像をトップに持っていきたかったので、少し記事が前後する。
 これは実際に、チコの後ろを追いかけながら撮影したのがこの画で、同じ画は二度と撮れない。耳介の空気抵抗最小化の位置といい見惚れる。
 しかもこのときには、カメラ構えて、チコと同い年の末っ子を片手で抱いていたので、体力が有り余っていた頃の画だ。私もやるもんである。もちろん、彼がスピードを緩める前には、彼には追いつけなかった。後肢が前肢を超えて力強く蹴り出していく。本当にチーターと同じ。だから、最初の動画はやはりちょっと残念。おそらくトラッキング(足跡)を見たら、身近な動物なら、キュウシュウノウサギに類似だとわかる。
 ちなみに、猫の足跡は、あらゆる場所で見てきた膨大なフィールドサインに混じって確認することがあるが、疾走しているものはない。彼らはもともと追跡型の狩猟をしない。基本スタイルは待ち伏せ型だし、移動も情報収集をしながらするので、普通は疾走など滅多にやらないタイプの生き物だ。その必要がないところで、何かに怯えて高速で逃げる必要があったか、もしくは純粋に走りたかった?とき以外。だから3歳ぐらいまでの若い個体しか、これを行う可能性はあまりないかもしれない。
 チコもそうだった。最初の画像は走るのが楽しくてしょうがないって感じだった。ちなみに彼がその能力を失ったときに、リハビリの過程で何度も試そうとしていたのが私にも伝わってきた。
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 YoububeやSNSでこの動物の疾走速度の比較アニメ動画が出ていて、家族で視聴して楽しんだ。上記のは画面ショットを貼ってあるだけなので、アンダーラインのリンクからお願いしたい(エキサイトの仕様で、私のものはヘッダーをいじっているので、何故かリンク先の文字の色が変わらない(実は変わっているのだが青色にならない)ので(エキサイトのサービスの人がかなり一生懸命調べてくれて、結果としてこうなのでしょうがないと思っている)、わかりやすいようにアンダーラインを引いている)。
 ちゃんとイエネコのものもあった。人間よりもスプリントでは速く、これは彼らの体の大きさを考えると驚異的だが、体の大きさの比較、1/2.5スケールで考えると、チーターと同等かもしれない。また、残念ながらネコのそれは、猫の速歩を高速で回したもので、これはこれで楽しいのだが、実際には猫もチーター同様の背骨を湾曲させて身体全体をスプリングのように使って走る。このアニメーションにおけるイエネコのロコモーションはその形にはなっていない。
 ネコの疾走速度については文献根拠が示されていないので、ちょっとそのあたりは、ちょっと保留すべき部分ではある。文献を色々調べると「平均」約20マイル(32km/hr)という値が出てくる。チコの観察事例しかないが、体感的にそのくらいという気はする。おそらく48kmというのは、瞬間的な値かもしれない。もともとスプリンターなので、チーターの112km/hrみたいな数値として考えたら、それもあり得るかもしれない。もちろん、イエネコは人間同様個体差は大きな生き物で、最小と最大比べたら私とサイン・ボルトぐらいの差はあってもおかしくはないとは思う。32km/hrは最頻値あたりとして考えると良いかもしれない。

 ちなみに、哺乳類走行速度に関する一般論として、この文献(Garland, T., 1983: The relation between maximal running speed and body mass in terrestrial mammals)の結論などはちょっと面白い。こういうアロメトリー、メジャーリングの仕事は、むしろ前世紀の文献に多い。
 「最大走行速度は、平均して、最大有酸素速度の 2 倍を若干上回る。偶蹄目、食肉目、齧歯目では、最大走行速度は質量に依存せず、幾何学的に類似した動物に対する理論的予測 (T. G. Thompson,1917) と一致する。」

 それで、ちょっと最新のバイオメカニクス的な論文を探していて、以下のものがあった。

D. Labonte, P. J. Bishop, T. J. M. Dick & Clemente, C. J. (2024) Dynamic similarity and the peculiar allometry of maximum running speed. Nature Communications volume 15, Article number: 2181.

 アロメトリーってちょっと懐かしい言葉で、専門用語としての日本語では「相対成長」という訳語がついているが、「生物の体の大きさによらず、部分どうし、または部分と全体の大きさや重量、生理学的な諸量(代謝量、寿命など)との間に見られる量的関係」という意味として捉えて、確かに成長というダイナミズムを分析した仕事も多かったのだが、そのまま「アロメトリー」で使う方が、「成長」という言葉が入らないので混乱しないと思う。
 Fig. 1: Animals small and large move by using muscle as a motor, but the maximum running speed
they can achieve varies non-monotonously with size: the fastest animals are of intermediate size.
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 ちなみに私も分野の論文を一つだけ書いたことがあるのだが、それは戦略としての成長スケジュールに注目したもので、学位を取るときに、恩師が褒めてくれた仕事の一つだ。
 上記のLabonte et. al. (2024)によるありがたい仕事、一般化モデルとしてはこれで正しいわけだが、イエネコの場合、チーター同様のロコモーションが使えるので、この同じ体重の哺乳類の幅の中、比較すれば高速で疾走できる方の動物だとは思う。チーターが、ゾウやサイの姿をスケールダウンさせた高速追跡捕食者であるはずはないので。そういう想像もちょっと面白い。
 スタートレックの第一シーズン『カヌーソ・ノナの魔力 “A Private Little War”』で、ゴリラ型の捕食獣が出てきたときには、幼心にその違和感に妙に興奮した。ゴリラ型の捕食者って進化の実験を見ても、いないのだよね。一番近いのはヒトだが、とても興味深いと思う。『ダンジョン飯』のライオスみたいな変態性を感じますか?多分気の所為だよ。
 シカ・ウシ目と食肉目で体重200kg未満のところに最速値のピークが来て、そこに高速追跡型の哺乳類が生まれ、そのサイズが最適解があると考えたほうがいいと思える。捕食者側の戦略には、大きく二種類あって、長距離追跡と短距離勝負。もちろん、それぞれさらに待ち伏せ、グループ捕獲などのオプションや組み合わせも生まれる。

 古くからトレッドミル(歩行・ランニングなどの走行マシーンね。OK! GoのPVで初めて名前を覚えた)による観察や実験がされているが(例えばJ. A. Vilensky and M. Charlene^Patrick, 1984. Inter and intratrial variation in cat locomotor behavior)、あれの仕様から見てこの上で疾走してくれるところまで持っていくのは、難しいかもしれない。動画で結構上がっているが、仕様からみても、この歩行器に付き合ってくれている猫たちは、みんな速歩までである。だから最初に上げたアニメーション動画もそうなってしまったのかもしれない。
 しかし、Cat Wheelのものでは、ネコは疾走している。こっちを使うべきだったのかもね。しかし、ちょっとネコにとっては危ないかもなというのは感じる。

 トップの画像をドヤで載せた今から19年前のチコの疾走写真を上げた記事(「疾走」)でも、似たような考察をやっているのだが、スケールモデル比較では、重力や物理的強度を上げる必要が大きくなるほど指数的に上がるため、小型である方が有利になることも確かである。ラジコンカーでも、スケール比較だと300km/hr出すのは簡単なことであるので。上のグラフでも体長に対して3次である体重が、指数で1単位落ちても、速度は1単位は落ちない。

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 ここに越してきたときには、畑や田圃、チガヤ原だらけで、道路もわざとデザインされたかのように通り抜けできない道が入り組んだ土地で、車の侵入も限定されていた。だから妻と公陳丸と家族一緒に越してきたのだった。
 そんな環境でチコは思う存分、そこを駆けて抜けていっていた。この姿形でイエネコが疾走する画像ってそんなに撮れるものではないって思っている。私にとってはこの子の残してくれた思い出、遺産の一つ。いろいろなことを考えながら、自分の目にも焼き付けた。いろいろなこととは、彼を失う日が訪れた後、そして、自分が消えゆくときにもそれを思い出せるだろうか、とか、ぼんやりとそういう事を考えたいたという話だ。

 それで、最近気に入ったネコの疾走動画がこれである。ジェット機のSEを入れたくなるのは、わからんでもない。この子、確かにぶっ飛んでいる。関連動画はたくさんあるのだが、今のエキサイトブログは、仕様により、使いたい関連動画があっても、一枚しか貼れないので、これ以外はリンクにしてある。

 子どもたちやチコたちを一番良く撮影していたときには、スマホ前夜だったこともあるし、機材の問題もあるが、私は動画撮影には全く興味がなかった。目に焼き付けるというのは一瞬なので、スティルにこだわっていたというのもあったかもしれない。また、デジイチも動画機能は未搭載か、もしくは使いにくかった。
 こうやって疾走するネコを見ると、当時こういう動画を残せていなかったことについて、別に残念な気になったりはしないのだが、それでも参考になる。たしかにネコが本気になって走れば、早い。特に不整地ならヒトなど問題にならない。
 ちなみに、一緒に走ってるおじさんは、手抜きにみえるが、実際、不整地は平らなグラウンドのように人はうまく走ったりできない。訓練していない人がそれをやれば、たちまち足を挫くか、どこかで転ぶだろう。
 フィールドランニング、不整地の長距離ランニングについては、老若男女の差がなくなると、以前書いたとおりだと思う("再冒愚ブルース〜破損ー修復記 #10【私的リハビリ記】Born to Run")。ネコはその鋭い感覚により、実際にはかなり凸凹で、イレギュラーな着地点に対しても、高速フィードバックによりうまく修正しながら、駆けていっている。もちろん人も、それに慣れればある程度対応できるようになることはフィールドランニングレースが証明している。


 チコの疾走や動画の個体については、まだ若く、本当にプレジャーとして走っていると思われるが、それはそれという話だ。その走行距離も彼らが選択できていることが重要だ。
 私の悪い癖かもしれないが、件のような動画を見ると、視聴回数稼ぎにネコを脅かして、疾走するところをアップするものが現れないかちょっと、不安である。野生動物含め、ネコもそうだが、いろいろな動物が全力疾走するのは、循環器系に相当な負担をかける。彼らが天敵などに追われて疾走するのは、その選択でしか生き残る方法がないからであって、決してそういうことをずっとやる必要がない場合にはしないものだったりもする。そのように行動すべきでない場合にストレスを与えて疾走させるというのは、とても負担がかかるものなのだ。一種の虐待になってないかというシチュエーションの動画が上がらないことを願う。

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 チコは立派な長尾を持つ個体だったが、尻尾はまっすぐ後ろに伸ばさず、むしろ下向きに湾曲させたりして走っている。彼の個性なのか必然があってのことなのか、観察数が足りなくてわからないが、多分前者かもしれない。チーターはバランサーとしての棍棒のように尻尾を後ろに伸ばし、獲物であるガゼルなどの急速な方向転換に追従しできるように左右に巧みにに動く。振り子電車の理屈と同じだし、やはり長尾のウンピョウが樹上でのバランサーとしてそれを巧みに使って樹上適応しているのと同じではある。長尾という特性は、枝に巻き付けたりするように機能するよう進化した動物もいるが、移動速度が必要な場合、バランサー型として機能させるやり方になる。クモザルなど動物園などで見て、この理屈を知らない人はネズミ類でも尻尾は巻きつけるために長いと勘違いしている人は結構いる。カヤネズミは前者、クマネズミ、ヒメネズミは後者だ。彼らが細い木をタタタっと渡るときには、ヘリコプターの回転翼のようにブンブン回すのだ。

 このリンク先の記事にある動画では、この個体は尻尾をまっすぐに広報に伸ばして、方向転換するときに微妙に曲げてうまく使っているのがわかる。チーターと同じ「道具」として同じ使い方をしている(【ネコ】 そこではマラソン大会が行われていた。先頭の選手がもう少しでゴールだ! → だが、しかし…)。長距離とはいえ、ゴール前のフィニッシュでペースを上げているはずのヒトを軽々と千切っていく状況は、確かに、猫の足は、それなりに早いのかもしれない。
 この子も、競技場に入り込んで脱出路が見いだせずパニック状態になっているイエネコと同じシチュエーションだと思う。故に、疾走距離も長いので、この後が色々心配ではある、などとは私は普通に考えてしまう。野生動物を捕獲して麻酔をしてGPSテレメトリー首輪を装着して、その後のトラブルなどで苦労してきた状況もある。ネコも含めて動物は強く、美しく、そしてヒトが思っている以上に脆い部分も持っている。「野生が躍動している」と感じられるような綺麗な部分だけ見ていると、人為が干渉した後の結果には気が付かないものである。

 最後に余計なことではあるが、ヒトがたとえ長距離追跡型捕食者としてデザインされていたとしても、どうか皆様、ジョギング等、各自の最大有酸素速度以上の負荷をかけないよう、無理をなさらないようお楽しみください。ご安全に。


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by complex_cat | 2024-06-01 09:53 | Year of the Cat | Trackback | Comments(0)

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