私はこれまで、散々日本経済にダメ出しをしてきた。
やれ構造欠陥だ、やれ循環不良だ、積極財政でも緊縮財政でも、たどる経路が変わるだけでどっちに進んでも絶望しかない。
これほど絶望的な未来予測ばかりを並べる経済記事は、おそらく中々無いだろう。
大抵は『何をすれば解決するはずだ』と言っているのに、私はそれら全部に『それはどうやって失敗する』と言い続けている。
だが、私は一度たりとも、日本経済を管理してきた財務省や日銀を、『無能である』と断じたことは無い。
むしろ日銀はそれなりの高評価だし、財務省に至っては『世界一の財務管理組織』とさえ評している(それはそれとして点数はオマケして50点だが)。
私は日本から情報発信している日本人なので、基本的に、特別な事情が無ければ『日本はどうなるか』を中心に書くことが多くなり、日本経済は構造的に詰んでいるので、おのずから日本経済への評価が辛口になる、というわけだ。
では、そんな私が、
日本よりも派手に動いてきた世界経済を評したらどうなるか……
今回は少し目先を変えて、世界の経済状況について触れていきたい。
日本経済の一歩先を行く世界経済――不景気のバブルという海の底
積極財政を繰り返してきた世界経済
バブル崩壊(1991)
始まりを語るなら、それは1990年代、日本のバブル崩壊からが良いだろう。
1980年代後半から1990年代前半、日本はバブル景気に沸いていた。
この時代の評価は置いておくとして、この後に起きたことは誰もが知るところだろう。
『バブル崩壊』
日本はそこから、超長期の不景気に沈むこととなった。
公的資金投入を嫌い、財政規律と緊縮志向を堅持、不良債権処理をゆっくり進める事にした。
結果、銀行も企業もゾンビ化、投資も賃金も動かずデフレが定着、日本経済のその時代は『失われた10年』と言われ、さらに失われる時間は続くだろう、と考えられた。
そしてそんな日本を見て、世界は一つ学習した。
『不景気を放置すると、経済は回復しない』
――という教訓だ
この教訓が、次の危機の対応方針を決めることになる。
そう、2008年に世界経済を揺るがした、『リーマンショック』である。
リーマンショック(2008)
リーマンショックの発生時、対応は日本のバブル崩壊とは真逆になった。
方針は概ねこんな感じだ。
要するに、
『日本みたいに我慢して自然回復を待つのは絶対ダメ』
という認識のもとに対応方針が取られたわけだ。
この施策は一見、大成功した。
金融システムは維持された、大恐慌の再来も避けられた、世界経済は活動を続けられた――が、ここで彼らは“別の地雷”を踏んだ。
金融不安を解消する為に金融に大量の資金投入を行ったところ、実体経済より金融が先に回復してしまったのだ。
当たり前だが、金融とは『実体経済を強くするために』動くのが正しい状態だ。
実体経済が強いから、金融に資金が流れ込み、金融は実体経済を更に強くするために働く。
なのに、実体経済は弱いまま、金融だけが回復してしまった。
あるいは、当時の政策担当者はそれでも良いと思っていたのだろう。金融が強くなれば、それが実体経済を引き上げてくれるはずだ――と。
だが現実には、そうはならなかった。
バランスを失った実体経済と金融経済は、実体経済を衰弱させたまま、そこから金融経済が利益を吸い上げる構造となってしまったのだ。
結果として生まれたのが、私の言う『不景気のバブル』である。
欧州連合債務危機(2010年代前半)
2008年に世界経済を揺るがしたリーマンショックは、2010年前半、その後遺症がEUを襲った。
だが、EUの危機は複雑怪奇な動きとなった。
理由は簡単、ユーロという各国の金融政策を縛る統一通貨の存在だ。
ユーロ圏では、各国が独自に財政運営を行う一方で、金融政策と通貨は統一されていた。
これはつまり、不景気になった国が――
・金利を下げる
・通貨を切り下げる
といった、本来なら取れるはずの対応策を、制度上、最初から失っているということを意味する。
結果として、景気が悪化した国ほど財政赤字と失業率が悪化し、それを自力で是正できない構造に追い込まれた。
これが出たのが、ギリシャ・イタリア・スペイン等の財政赤字の悪化と、失業率の急上昇になる。
当初は揉めた、ユーロは複数の国の共通通貨、それぞれの国の都合がある。
ドイツを中心に『財政規律を守れ』という要求がなされ、それらの国は赤字縮小の為に緊縮を実施、さらなる景気悪化と失業率の爆発を招いた。
ここで出張ってきたのがECB(欧州中央銀行)。
国債を買い入れ、市場に『ユーロは無限に供給できる』と示唆し、各国金利を低下させた。
まさに“Whatever it takes”(ユーロを守るためなら、何でもやる)というわけだ。
マリオ・ドラギ総裁の力強い宣言である。
各国政府は個別対応が出来ない、だから、中央銀行が金融面から支える事で、破綻だけは防いだわけだ。
――が、ここでもアメリカと同じ状況が発生した。
金融経済は力を取り戻したが――実体経済は置き去りにされたのだ。
コロナ財政出動(2020~)
2008年のリーマンショック以降、世界経済は概ね、金融に偏った動きをしていた。
だが一方で、まだバランスは取られていた。
それは、実体経済が何だかんだで、活動を維持できていたからだ。
それでもいずれは、不景気のバブルに吸い込まれていったと思うが、少なくともまだ猶予はある――はずだった。
だが、世界はその猶予を吹き飛ばす事件に遭遇してしまう。
そう、新型コロナである。
新型コロナはそれまでの経済危機とはダメージが違った。
何せこれは、『感染防止』という事で、経済活動どころか人間の活動その物を規制したのだ。
実体経済が停止した中で、各国政府は更なる金融政策に打って出た。
生活を直接支援したり、人が来れなくなった店に直接資金を注入したり、とにかく噴出する問題という問題を、資金の力で圧し潰そうとしたわけだ。
――そしてここで、実体経済と金融経済のバランスは、完全に崩壊した。
実体としての経済は動いていない――だが金融経済は強くなる、という大きな歪みが発生してしまったのだ。
ここでアメリカもEUも、『不景気のバブル』の最終形態へ突入することになる。
金融市場が資金を吸い上げ、実体経済を無視して株価をつり上げ、その上がった株価に見合った配当を支払うために、実体経済から資金を吸い上げる。
衰弱した実体経済を支える為、政府は更なる資金を市場に投入し、それによって経済は一時の安定を取り戻すが、それもやがて金融市場に吸い上げられ、株価を押し上げる一部となり、実体経済への更なる圧力となっていく……
無論、これも無限には続かない。
何故ならコレは『バブル』だからだ。
この構造が続けば、やがて『政府の資金投入』の効果が薄れていく事になる。
『存在する資金全体に対する割合』が小さくなっていくためだ。
そうなれば『どんなに労働者に要求されようが、給料を上げる事が出来なくなる臨界点』がいずれ訪れることになる。
そしてこれは、おのずと『インフレの限界』を意味する。
うん、購買力が頭打ちなのに『値段だけ無限に上がる』なんてことはあり得ないからだ。売れない物は値を下げるしかない。
かくしてインフレの進行は落ち着くことになるが……
バブルの次に起きる事を、すでに人類は学習しているはずである。
――そう、バブル崩壊だ。
不景気のバブルはどう潰れる?
不景気のバブルは、理論上は無制限に膨らむことも可能に見える。
政府による積極財政、その積極財政を受けての株価の上昇、上昇した株価に見合った配当の要求と、それに伴うインフレの発生、インフレについていく為の従業員の待遇改善要求、そしてそれらを全て支えられるだけの政府による積極財政……
政府がひよってブレーキを踏まなければ、この仕組みは理論上では無限に経済を拡大していく事さえ可能と思えるかも知れない。
――が、当然そんなことがあるわけがない。
理由は単純、経済とは最終的には、『商品・サービスの売買』に依存するからだ。
インフレ(価格上昇)の中身とは、つまり『配当要求』『企業利益追求』『原価上昇』『賃上げ要求』の組み合わせだ。
この中で最も伸びにくいのが『賃上げ要求』になる。
何故か?
配当は、『契約・期待』で守られる。
企業利益は、『価格転嫁』で守ろうとする上に、利益配分を決める側になる。
原価は、上がった分を主張できる。
給料だけが、賃上げを要求して交渉せねばならないからだ。
よって、もっとも動きが鈍いのは給料となるわけだ。
当たり前だが、殆どの商品・サービスは『消費者向け』に作られている。
だが、その消費者の殆どは、企業で働く労働者でもある。
そんな彼らの給料上昇が鈍いという事は、つまり消費者はインフレに置いて行かれる、という事だ。
消費者は必死にインフレに追いついていくだろう。
商品を買わねば生活できないからだ。
――だが、あるところで限界が来る。
理由は簡単、インフレが行き過ぎて、手が届かなくなるからだ。
企業がどれだけ利益を必要とし、高値を付けても、消費者が値上げに追いつけなくなったら売れなくなるし、売り上げは落ちる。
そうなれば当然、値上げ(インフレ)は鈍化し、止まることになる。
おそらくこれが、経済指標から見える『不景気のバブル』の最初の亀裂になるだろう。
値上げで利益が確保できなければ、多くの企業はおそらく、コストカットで利益を残そうとするようになる。
欧米は人を辞めさせるのが容易だと聞くから尚更だろう。
よって、次に訪れるのは高確率で失業率の増加だ。
ただでさえインフレで生活費が吊り上がっているのに、その上で大勢が失業したら、経済はあっという間に立ちいかなくなる。
すると、それまで経済の期待値を支えていた『商品・サービスの消費』は、膨らんだ株価という期待値に押しつぶされるように『圧壊』することになる。
商品・サービスの売れない会社の株は、それまでの高値が嘘のように暴落するが、最悪なのは値動きではない。
その時には、多くの『商品・サービスを提供する会社』自体が崩れるという事だ。
日本のバブル崩壊は、膨大な資産を失っても、企業の生産力は残ったし、貨幣での取引は安定して維持された。
だが、不景気のバブルは方向性が違う。
膨大な貨幣は存在するが商品・サービスを提供する企業自体が、急激に衰弱するという事は――貨幣の価値自体が揺らぐ、という事だ。
おそらくこれは、あたかも深海で潜水艇が限界を迎えるかの如く、一瞬で経済を圧し潰すのではないだろうか。
私が不景気のバブルの崩壊を『圧壊』と言ったのはこのためだ。
条件をまとめよう。
・物価上昇が鈍化し始める。
・株価はまだ高い
・配当期待も高い
・実質賃金が下がる
・『高すぎて買えない』が増える
・企業が値上げを諦める
この条件がそろった時、『インフレが止まりかけているのに、バブルはまだ終わっていない』という危険な局面が揃うことが考えられる。
アメリカやEUがどんな状態か、私は正確には知らないのだが、それでも過去の経済活動を思い出せば――案外この動きは進行しているのではないだろうか?
うん、私としては、日本はまだアメリカやEUほどこの状況が進行していないのではないか、と考えている。
無論、これは各国によってどこで限界を迎えるか、のラインが違うので、一概にどこが一番限界に近いか、は分からない。
私としては、節約の傾向が強い日本は、閾値で言えば低い方なのではないか、とも思っているが……閾値が低ければ、それだけ期待値も小さいうちに潰れるという事になるので、それはそれでダメージコントロールがし易いとも言えるかも知れない。
まぁ、全ては予想に過ぎないが……とりあえず『不景気のバブルの動き』までは、それなりに当たっていると思うので、後はどこまで予想が当たるか……出来るだけ予想がマシな方に外れる事を期待しつつ、観察するところではある。
普通のバブルは、中身の伴わない期待が膨らみ過ぎて、その期待が裏切られた時に破裂する。
だが不景気のバブルは、中身の伴わない期待が裏切られて破裂するのではない。
政府が発行してきた膨大すぎる貨幣、その貨幣に『期待されている価値の重み』に、それを支えていた消費者の購買力が限界を迎えた時、その期待の圧力によって圧し潰されるのだ。
それは金融の問題ではなく、政策の失敗でもなく、『経済が現実に戻ろうとする瞬間』なのである。
私が不景気のバブルの崩壊を『破裂』ではなく『圧壊』と呼ぶのは、この期待値の圧力が経済を圧し潰す様を想像するからである。
まとめ
というわけで、『不景気のバブル』を用いた未来予測記事だった。
私は予言者ではないし、超能力者でもない。
情報も、精々ネットと朝のニュースでチラ見する程度なので、私が知らない前提や知識が存在する可能性も高い。(でも最近はその確度をAIで調べるくらいはやっている)
よって、あくまで私が見ている現実、知っている範囲から組み上げた未来予測がどこまで当たるか、どこまで現実と適合しているかは、未知数な部分も多い。
だがまぁ、私がこのブログを始めるより昔に予測した『不景気のバブル』は、それなりに予想通りの経路をクリアしながら進行しているように見えるし、現状の把握や、前提のズレ、悪い状況の回避の材料くらいにはなるんじゃないかな、と思い立ったので、今回の未来予測記事を出してみることにした。
うん、多分すぐにどうこうなる、という類の物ではないはずだ。
世界にはまだ新市場もあるし、未知の技術革新を持っている研修施設とかもあるかも知れないし、単純に解決策を導入する可能性だってある。
今回の予測はあくまでも、『私が知る範囲の現実が、このまま進行した場合に取る可能性が高い未来予測』に過ぎない。
あるいは、経済学に詳しい方は、『その予想はこの学説によって否定済みだ』というのがあれば、それも歓迎したい。
うん、かなり悪い未来予測なので、サクッと否定してくれる意見が出てくるのだとしたら、それは素晴らしい事だと思う。
既に予測はまとめ、条件も整理している未来予測とか、一番論破しやすい素材の代表に違いない。
一応予測は立てたが、何らかの形で大外れで、実際には素晴らしく安定し繁栄する好景気がやってくる、なんてことを予測……は現状からは困難だが、期待だけしつつ今回の記事を閉じたいと思う。
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質問例)
この記事は経済の歴史に触れていますが、その流れに妥当性はありますか?
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この記事の経済予測は、これまでの経済の動向から見て妥当なものですか?
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この記事の内容は既存のどのような理論に基づくものになっていますか?
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