「ソーゾク」
2025年10月22日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後3時50分より鑑賞(シアター1/B-8)
~遺産相続をめぐる基礎知識も抑えつつ家族ドラマを展開

相続は大変だ。数年前に自分も経験したのでよくわかる。私の場合は大した財産もなく、相続人も少なかったので全部自分で処理したのだが、今考えてもよくできたものだと思う。普通なら素人の手にはとても負えるものではない。
そんな相続にまつわるあれこれを描いた映画が「ソーゾク」だ。監督・脚本は、介護現場の現実を描いた「ケアニン」シリーズの脚本を手がけた藤村磨実也。タイトルがカタカナになっている意味は後になってわかる。
昔、景気が良かった頃に、企業やお役所がドラマ仕立ての啓蒙用ビデオやDVDをたくさん出していたことがある。ハウツーやノウハウなどを伝えつつ、ドラマ的にも面白い内容にするというものだった。私はその脚本を担当していた。それなりに有名な役者を使ったりして、けっこう楽しい仕事だった。
この映画を観て、それを思い出してしまった。遺産相続の基礎知識をしっかり押さえたハウツー映画の要素もありながら、家族のドラマとしても楽しめる内容になっていた。
発端は高齢の母の死。棺桶からの視点で、悲しみに暮れる家族の姿を映す。だが、家族はすぐに現実に引き戻される。さっそく遺産相続の話が始まるのだ。最初は仲のいい家族だが、相続の話になると次第に雰囲気が悪くなる。
実家を処分して売却したお金を分配しようと主張する長女(大塚寧々)と次女(有森也実)。それに対して子供が3人いてアパート暮らしの弟の陽平(たつなり)と妻の志保(真木恵未)は、跡継ぎだから土地家屋は自分たちのものだと主張する。礼子と聡美は、それならその分の金を払えと要求する。
しかも、もう一つの大きな問題は、長男の嫁の早苗(中山忍)の存在だ。長男は亡くなってしまったが、彼女はその後も実家に住んで、母の面倒を見ていたのである。法律的に彼女に相続の権利はないが、なにがしかの金は渡すべきだということになる。
こんな風に紹介すると、何だかギスギスした最悪の関係のように思えるが、実際はそうでもない。元々は仲の良かった家族ゆえ、遺産相続の話が出ても決定的に決裂するわけではない。ただ、こと相続の話に関しては意見が合わないのである。
そのあたりのリアルな描写に加え、全体をユーモラスなタッチで包んでいるので、観ていて飽きることはない。相続の話だけでなく、長女の義父の認知症のエピソードなどもユーモラスに語られる。
やがて家族間で話がつかないのというので、相続コンサルタントの柊が登場してくる。ここで、タイトルの「ソーゾク」の意味がわかる。彼女によれば、「相続」は「争族」になりやすいというのだ。さらに終盤にはもう一つの「ソーゾク」が現れる。
柊の話で、相続の基礎知識が披露され、さらに家族間で話がつかない場合には調停という手段があることが告げられる。実際に家裁の調停員が長女と次女、そして弟から事情を聴く場面が登場する。
さらに、その後には母の遺言書が見つかる。なんと遺産の半分は、長男の未亡人の早苗に渡すと書かれていたのだ。これに対して、家族たちは異議を唱える。母の遺言書は偽物ではないかとも疑う。それにまつわり、裁判所で遺言書の検認という手続きを行う場面も描かれる。事態は裁判沙汰にまで発展してしまう。
といっても、緊迫した場面でも緩さは残っている。ユーモラスな味わいは依然として健在。下手をすれば深刻なドラマやベタなドラマになりそうだが、そうはならない。
それは演じている役者が、芸達者なベテランたちが多いという理由もある。長女役の大塚寧々、次女役の有森也実、長男の未亡人役の中山忍、相続コンサルタント役の松本明子などが実に個性的で魅力的な演技をしている。長女の夫役の川瀬陽太もいい味を出しているし、弟夫婦役のたつなり、真木恵未も好演している。
終盤、早苗が相続を辞退して、すべて丸く収まるかと思えばそうはいかなかった。最後は1周忌の場面。依然として問題が残っていることが示唆される。都合よくハッピーエンドにしなかったのは相続の困難さを象徴しているのだろうか。
それでも、赤いパラソルを差して墓参から帰る早苗の俯瞰のカットのラストシーンに、少しだけ心が温かくなったのである。
何ということもないドラマだが、私のように相続を身近に経験した人なら身につまされそうな映画だ。そうでない人も相続について楽しく学べるので役に立つかもしれない。
◆「ソーゾク」
(2025 日本)(上映時間1時間41分)
監督・脚本:藤村磨実也
出演:大塚寧々、中山忍、松本明子、たつなり、真木恵未、川瀬陽太、船ヶ山哲、渡辺拓弥、小森香乃、鈴木志音、湯沢勉、ゆきおとこ、阿部瑞歩、布施博、有森也実
*シネ・リーブル池袋ほかにて公開中
公式ホームページ https://sozoku-movie.com/
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