「リンダ リンダ リンダ」4K
2025年8月22日(金)イオンシネマ板橋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン11/C-7)
~4K版で観る。4人の女子高生たちによる色褪せない青春映画の傑作

青春映画で何が一番お気に入りかと聞かれたら、間違いなく「リンダ リンダ リンダ」だと答える。2005年の映画だが、文句なしにその年のベスト1に選んだ。そして、それから20年が過ぎた今、「リンダ リンダ リンダ」の4K版が登場し、劇場公開されることになった。これは観ないわけにはいくまい!
ある地方都市の高校。文化祭を目前にして、軽音楽部の5人組ガールズバンドのギタリストが指を骨折し、内輪揉めでボーカルが脱退してしまう。残された3人のメンバー(前田亜季、香椎由宇、関根史織)は、成り行きで韓国人留学生ソン(ペ・ドゥナ)を新しいボーカルに迎え、ザ・ブルーハーツのコピーバンドを結成する。そして、文化祭最終日の本番に向けて練習を重ねていくのだが……。
この映画の山下敦弘監督は、それまでは「どんてん生活」「ばかのハコ船」「リアリズムの宿」というダメ男三部作で知られていた監督。それが女の子たちの青春映画を撮るというので、びっくり仰天したものだ。
だが、この映画にも山下監督らしさは発揮されている。独特の間が生み出すオフビートな笑いだ。冒頭に早くもそれが表れている。文化祭の実行委員がカメラに向かってメッセージを伝える。それを撮影しているのは放送部員らしき高校生2人。今のテークがOKがNGかで悩む。結局、OKということになるが、実行委員が「もう一度やってもいい」となって再度撮影する。それが何ともおかしくて、ついクスッと笑ってしまう。そういうユーモラスな場面が、そこかしこに出てくる映画だ。
続いて映るのは、学校内の廊下を足早に歩く女子高生の姿。それを横移動のカメラで捉える。その生徒は響子。バンドのメンバーだった。途中で響子は指を骨折した生徒と遭遇する。彼女のケガが引き金となって、バンドは出演するはずだった文化祭を前に空中分解しそうだった。出演をキャンセルするのか?
だが、プールに浮かんで何事か考えていたメンバーの恵は「やる」と言う。ドラムの響子、ベースの望に加え、キーボードだった恵がギターを担当し、新しいボーカルを入れて演奏するというのだ。曲はカセットで偶然聴いたザ・ブルーハーツの歌。
では、ボーカルはどうやって決めるのか。恵は彼女たちの前を最初に通りかかった生徒にすると言う。そして、偶然、目の前の階段を下りてきた韓国からの留学生ソンさんに白羽の矢が立つ。その際のやりとりが面白い。日本語が十分でないソンさんは、理解しているのかどうかわからないままに、「はい」と返事をする。あとで事の真相を知り、慌てて断るがもう遅い。
こうして、本番までたった3日のバンド練習が始まるのだ。
この映画では高校生たちの息遣いがリアルに描かれている。基本的には文化祭に向けて練習する4人が描かれるのだが、その合間には様々な寄り道がある。そこで刻々と変化する彼女たちの心理がスクリーンに刻み付けられる。
とにかく4人のキャラが秀逸だ。特にボーカルのソンは、あまり日本語を話せないこともあって最初は何を考えているのかよくわからない。しかし、実は彼女が好奇心旺盛で、積極的にバンドメンバーに溶け込もうとしていることがわかってくる。他のメンバーも、ドラマが進むにつれてそれぞれの個性が見えてくる。
4人を演じるペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織がいい。当時の彼女たちは、登場人物とそれほど年が違わないだけに、等身大の演技を披露している。実際に撮影では同じホテルに泊まり、とても仲が良かったという。その空気感がそのまま表れている。
印象的なシーンはいくつもある。いや、すべてのシーンが印象的だと言っても過言ではない。
夜の校舎の屋上で4人が取り留めのない話をするシーン。無人の体育館でソンが舞台に上がり、メンバー紹介をするシーン。トイレでソンが恵に「(バンドに)誘ってくれてありがとう」と言い、恵が「入ってくれてありがとう」と答えるシーン。
ソンを好きな高校生の槙原(松山ケンイチ)が告白するシーンも秀逸。必死で韓国語で告白する槙原。それに対してソンが「嫌いじゃないけれど好きじゃない」と答えるところは名シーンだ。
たった4日の間に、猛特訓でバンドの演奏は進化する。当初は聴けたものではなかったが、後半に進むにつれて明らかに上達してくる。演奏は彼女たち自身の手になるもの。実は、この映画の後、劇中のバンド・パーランマウムはCDを出し、渋谷AXでライブも行っている。私はCDを購入し、ライブも観ることができた。バンドは映画の中を飛び出したのである。
映画のクライマックスは言うまでもなく、高校最後の文化祭のステージだ。ただし、その時、4人は練習したまま眠り込んで危うく寝過ごしそうになる。そこで、恵の見た夢の世界を映し出した映像がとてもいい。彼女たちは武道館のステージに立ち、ラモーンズやピエール滝がそれを見守っているのである。このあたりのユーモアも山下監督らしい。
そして、ついに上がったステージ。それは高揚感に満ちた瞬間だった。彼女たちの演奏に合わせて歓喜するスクリーンの中の観客とともに、スクリーンのこちら側もノリノリで大興奮してしまうのだった。
特別なことは何もない。ごく普通の高校生たちの出来事だ。だが、それはキラキラと輝いている。二度とない青春の輝きに彩られている。そんな青春の1ページを見事に切り取った映画である。
おそらく公開時に同世代だった観客は、登場人物たちに共感してしまったに違いない。そして年齢を重ねるごとに違った見方をするだろう。私はこの映画を観て高校生たちのリアルな青春を体感し、戻りたくてももう戻れないあの頃に思いを馳せた。この映画がいつまでも色褪せない理由はそこにある。まさに奇跡のような映画だ。それをスクリーンでもう一度観られた幸せよ!

◆「リンダ リンダ リンダ」
(2005年 日本)(上映時間1時間54分)
監督:山下敦弘
出演:ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、湯川潮音、山崎優子、甲本雅裕、松山ケンイチ、小林且弥、小出恵介、三浦誠己、りりィ、藤井かほり、ピエール瀧、山本浩司、山本剛史
*新宿ピカデリーほかにて公開中
公式ホームページ https://www.bitters.co.jp/linda4k/
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