「教皇選挙」
2025年4月16日(水)TOHOシネマズ池袋にて。午後3時40分より鑑賞(スクリーン3/C-12)
~教皇選びの裏で繰り広げられる人間臭い争い。上質の選挙サスペンス

さる映画プロデューサーから、「某作家が書いた選挙ものの小説を映画化したいからプロットを書いてほしい」と言われて書いて提出したのだが、あれから1年以上が経ち何も連絡がないのでいまだに実現していないのだなぁ~。すぐにでも映画化できそうな口ぶりではあったのだが。
それはともかく選挙を巡るドラマは面白い。カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇を選ぶ選挙を描いた「教皇選挙」も、抜群に面白いサスペンスドラマなのであった。原作はロバート・ハリスが書いた小説。それをNetflix版「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が映画化した。第97回アカデミー賞では作品、主演男優、助演女優、脚色など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。
カトリック教会の最高指導者のローマ教皇が心臓発作で死去する。すぐに新教皇を決めるための教皇選挙「コンクラーベ」が行われることになり、主席枢機卿のローレンス(レイフ・ファインズ)がその指揮を執ることになる。世界各国から100名を超える枢機卿が駆け付け、外部から完全に遮断されたシスティーナ礼拝堂で極秘の投票が始まる。しかし有力候補たちの票は割れ、投票が繰り返されていく中、水面下で様々な陰謀やスキャンダルがうごめく。ローレンスの苦悩は深まっていくのだが……。
当然ながらローマ教皇を選ぶ選挙を描いているので、宗教的なことも色々と出てくる。だが、素人に理解できないような専門的なことは描いていない。むしろ本作は宗教の形を借りた選挙映画という意味合いが強い。なので宗教的な知識がなくても楽しめる。
ドラマの冒頭から緊迫感漂う場面が登場する。ローマ教皇が亡くなったのだ。事前に何の兆候もない急死だった。慌てて関係者が駆けつけてくる。その中には、このドラマの主人公であるローレンス枢機卿がいる。
何やら怪しげでスリリングな映像と、不穏な音楽に包まれたこのシーンを観ただけで、このドラマが魅力的なサスペンス映画であることがわかる。
その後、関係者はすぐに後任の教皇を選ぶ選挙に着手する。いわゆるコンクラーベ。日本でもおなじみだが、外部から隔絶されたシスティーナ礼拝堂に枢機卿が集まり、規定得票数に達するまで互選投票を繰り返す。当選者が決まらないと煙突から黒い煙、決まると白い煙が上がって状況が外部に伝えられる。
その選挙を仕切るのがローレンスだ。彼も後任の教皇の資格はあるが(互選なので)、本人にその気はない。実は彼は信仰に迷いがあり、前教皇の生前に主席枢機卿の辞任を申し出ていたのだ。
ところが選挙に入る前にハプニングが起きる。事前のリストに名前がない枢機卿がアフガニスタンのカブールからやって来たのだ。ベニテス(カルロス・ディエス)と言い、前教皇の生前に直接任命されたという。彼も投票に参加することになる。
選挙の大きな構図は、改革派VS保守派だ。今までの教皇の路線を引き継ぎ改革を進めようとする改革派は、ローレンスと親しいベリーニ(スタンリー・トゥッチ)を推していた。一方、保守派は極右ともいえるテデスコ(セルジオ・カステリット)を推していた。当然ながらローレンスは、ベリーニを当選させたいと思っていた。
だが、いざ投票が始まると投票のたびに情勢が変わり、事態は混とんとする。最初に浮上したのは、初のアフリカ系教皇を狙うアデイエミ(ルシアン・ムサマティ)だった。彼が当選すれば世間的なインパクトは強い。本人もその気だった。
ところが、ある修道女の行動がきっかけで、彼の過去の性的トラブルが浮上してしまう。ローレンスはアデイエミにその事実を突きつける。
ちなみに、本作は男性中心のドラマだが、そこに修道女を巧みに絡ませてドラマを組み立てるあたりも、なかなか冴えた脚本だと思う。脚本は「裏切りのサーカス」のピーター・ストローハン。
こうしてアデイエミは有力候補から消えたが、何度かの投票を経てもベリーニの票は伸びない。そんな中、野心家のトランブレ(ジョン・リスゴー)が地道に票を伸ばす。さらに、なんとローレンスもかなりの票を獲得する。さあ、最終的な結果はどうなるのか?
というわけで、高潔な聖職者たちによる選挙というイメージとは裏腹に、その裏では極めて人間臭い争いが展開する。多数派工作、陰謀、スキャンダルなどがうごめき、どす黒い欲望が渦巻く。その中で有力候補が次々に変わり、二転三転する展開で最後まで結果がわからない。まさにサスペンスとしての妙味がたっぷりだ。
その一方で、舞台装置は細部までこだわりを持って作られ、衣装も本格的。光と影を意識し、色彩感覚に優れた映像も美しく荘厳だ。その中で、あまりにも人間臭いドラマが展開するというギャップが面白い。それがサスペンスドラマとしての魅力をますます倍加させる。
ドラマが進むにつれてローレンスの悩みは深くなる。次々に発生する問題に対処する彼は、真相を明らかにする探偵的な役割を果たすと同時に、自身も有力な候補者の1人になっていく。それが彼をさらに複雑な心境に至らせる。
ローレンスを演じたレイフ・ファインズがさすがの演技を見せている。最近では「ザ・メニュー」の恐ろしいシェフ役が強烈な印象だったが、本作でもほとんど無表情で感情を表さないローレンスの微妙な心の揺れ動きを、わずかな表情の変化など繊細な演技できっちりと演じていた。
終盤、なんと爆弾テロまで絡んでさらに選挙は混沌とする。その中で、ある人物が感動的な演説を行い、それがきっかけで彼が新教皇に選出される。だが、ローレンスは彼にとんでもない秘密があることを突き止める。最後の最後まで予想もしない展開が待っている。
まあ、現実にはありそうにないが、それでも「もしかしたら……」と思わせるのがミソ。何よりもサスペンスとして抜群に面白い。カトリックの信者や宗教に詳しい人がどう思うかはわからないが、私のような凡人は十分に楽しめた。上質のサスペンスである。
レイフ・ファインズの他にも、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニなど実力派俳優の競演が見応え十分。
◆「教皇選挙」(CONCLAVE)
(2024年 アメリカ・イギリス)(上映時間2時間)
監督:エドワード・ベルガー
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、セルジオ・カステリット、ルシアン・ムサマティ、カルロス・ディエス、イザベラ・ロッセリーニ
* TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
ホームぺージ https://cclv-movie.jp/
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