2023年度 入試傾向と対策概況
栄東中学校(A日程1月11日)の理科は、試験時間50分・満点50点の構成です。1月10日の日程と比較すると、「実験結果から法則性を見抜く論理的思考力」がより強く求められる傾向にあります。 特に物理と化学分野では、単なる知識の当てはめではなく、「なぜそうなるのか」という因果関係を正確に追う力が合否を分けました。生物・地学分野でも、丸暗記では対応できない「現場での推論」が必要な良問が揃っています。
【大問別寸評】
| 大問 | 分野 | テーマ | 難易度 | 寸評 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 物理 | ばねの計算と力学的思考 | やや難 | 直列・並列の基本から、未知のばね定数の算出まで。Q7は難問。 |
| 2 | 化学 | 熱の移動と比熱 | 応用 | 金属の熱伝導、熱膨張の仕組み、比熱計算。計算力が試される。 |
| 3 | 生物 | 環境・植物・菌類 | 標準 | カビの繁殖実験の条件整理など、科学的リテラシーを問う問題。 |
| 4 | 地学 | 月と地球の関係 | 標準 | 月から見た地球の姿や、日食・月食の原理的理解。 |
- 2023年度 入試傾向と対策概況
- 大問1:物理(ばねの複合問題)
- 大問2:化学(熱と物質の変化)
- 大問3:生物(環境と実験)
- 大問4:地学(月と地球)
- プロ理科講師の総評:合否を分けたポイント
- 対策におすすめの書籍
- 栄東中学校の過去問解説シリーズ
大問1:物理(ばねの複合問題)
ばねの「自然長」と「伸び」を区別し、さらに異なるばね定数を持つばねを組み合わせる高度な問題です。
問6(直列つなぎと重さの比)
【難易度:B(標準)】 目標:絶対に正解したい
【整理】
状況: 天井から「ばねA(上)」→「おもりa」→「ばねA(下)」→「おもりb」の順につるされている 。
条件: おもりaの重さは、おもりbの [3倍] である 。
ばねの重さ: 無視できる 。
【考え方(超・精細解説)】 「それぞれのばねを引っ張っている力は何か?」を分解して考えます。
- 下のばねAにかかる力
- 下のばねを引っ張っているのは、その下にぶら下がっている「おもりb」だけです。
かかる力 = おもりb
上のばねAにかかる力
- 上のばねは、その下にある「おもりa」と「下のばねA(+おもりb)」の全てを支えています。
ばね自体の重さは無視できるので、かかる力 = おもりa + おもりb となります。
比の計算
- おもりbの重さを [1] とします。
- おもりaの重さはその3倍なので [3] です。
- 下のばねにかかる力: 1
- 上のばねにかかる力: 3 + 1 = 4
- 同じばねであれば、伸びは力に比例します(フックの法則)。
【解答例】
- 下のばねを引く力:おもりb = 1
- 上のばねを引く力:おもりa + おもりb = 3 + 1 = 4
- よって、伸びの比は 4 ÷ 1 = 4倍
- 答え:カ
問7(未知のばねを含むつり合い)
【難易度:D(難)】 目標:合否を分ける一問
【整理】
図9の状態: 容器の中で「ばねA - 100g - ばねA」がつながり、両方のばねAの長さは [18cm] で静止 。
図10の状態: 片方を「ばねB」に変え、「ばねA - 100g - ばねB」で静止 。
ばねAのデータ: 自然長10cm、20gで1cm伸びる(グラフより)。
ばねBのデータ: 自然長10cm、50gで1.5cm伸びる(問5の誘導より算出)。
【考え方(超・精細解説)】 手順が多く、高い論理構成力が求められます。
- ばねA、Bの強さ(ばね定数)を確認
- ばねA: 40gで2cm伸びるため、[20gで1cm] 伸びる。
- ばねB: 問5の計算より、50gで1.5cm伸びるため、[100gで3cm] (つまり約33.3gで1cm)伸びる。
強さの比(同じ距離伸ばすのに必要な力)は、A:B = 20 : 33.3 = 3 : 5 です。
容器の幅を特定する(図9)
- 図9では、ばねA(自然長10cm)が18cmになっています。つまり [8cm] 伸びています。
- 左右対称なので、容器の「ばねが取り付けられている壁から壁までの距離」は、
- (18cm) + (おもりの直径) + (18cm)
※おもりの直径は計算中に相殺されるため無視、あるいは「ばね部分の合計長さ」として 36cm と考えます。
図10でのつり合いを考える
- 容器の幅は変わらないので、「ばねAの長さ + ばねBの長さ」は合計36cm で一定です。
- 静止しているとき、左右のばねがおもりを引く力(張力)は等しくなります。
- 重要法則: 張力が同じとき、「伸び」は「ばねの強さ」の逆比 になります。
- 強さの比 A:B = 3:5
伸びの比 A:B = 5:3
比例配分で長さを求める
- 合計の自然長は 10cm + 10cm = 20cm。
- 合計の伸びは 36cm - 20cm = 16cm。
- この16cmを 5:3 に分けます。
ばねBの伸び = 16cm × (3 / 8) = 6cm
ばねBの長さ = 自然長10cm + 伸び6cm = 16cm
【解答例】
- ばねAとBの強さの比は 3:5 なので、同じ力で引いた時の伸びの比は 5:3 となる。
- 図9より、ばね部分の合計長さは 18×2=36cm。自然長の合計は20cmなので、伸びの合計は16cm。
- ばねBの伸びは、16cm × 3/(5+3) = 6cm。
- よって長さは 10 + 6 = 16cm。
- 答え:ウ
☕ 休憩:理科豆知識「ばね定数と原子の結合」
物理で習う「フックの法則」は、実は原子と原子の結合にも当てはまります。固体の物質が変形しても元に戻ろうとするのは、原子同士が目に見えない「極小のばね」でつながっているからです。この「原子のばね」が切れてしまうと、物体は壊れたり形が変わったりします。
大問2:化学(熱と物質の変化)
熱による体積変化や状態変化について、実験装置の仕組みを正しく理解できるかが問われています。
問2(熱の伝わり方)
【難易度:B(標準)】 目標:絶対に正解したい
【整理】
図1: 銅板を水平に置き、端の点Pを加熱 。
図2: 銅板を垂直に立て、端の点Qを加熱 。
前提: 銅板中の熱は空気中へ逃げない 。
【考え方(超・精細解説)】 「熱は上に上がりやすい」というのは、温められた空気や水(流体)が移動する「対流」の話です。金属のような固体の中を伝わる「伝導」では、重力の影響をほぼ受けません。
- 図1(水平)
- 点Pを中心に、同心円状に均等に熱が広がります。
矢印はPから放射状に広がります。図Aが適切です。
図2(垂直)
- ここが引っかけです。「熱いものは上に行く」と考えがちですが、金属内の自由電子や原子の振動による伝熱は、上下左右関係なく均等に進みます。
- したがって、図2でもQを中心に均等に広がります。
- 上側だけに偏るEや、下に行くFではなく、均等に広がる [D] が正解です。
【解答例】
- 固体中の熱伝導は、重力の影響を受けず、温度の高い所から低い所へ均一に伝わる。
- よって、水平でも垂直でも、加熱点から放射状に広がる図を選ぶ。
- 図1はA、図2はD。
- 答え:ア
問7(液体Xの混合と温度平衡)
【難易度:C(応用)】 目標:合否を分ける一問
【整理】
液体Xの性質: 水と同じ条件で温めると、温度上昇にかかる時間が水の [半分] で済む 。
これは「温まりやすい」、つまり比熱が水の半分であることを意味します。
水100gを1℃上げる熱量 = 100 とすると、液体X 100gを1℃上げる熱量は 50 です。
混合条件: 10℃の水200g + 80℃の液体X 150g 。
【考え方(超・精細解説)】 「熱量保存の法則」を使います。「水が得た熱量 = 液体Xが失った熱量」となりますが、「水換算(重み付け)」を使うと計算が楽になります。
- 液体Xを「水」に換算する
- 液体Xは水の半分の熱量で温度が変わるため、熱の容量としては「半分の重さの水」と同じ働きをします。
液体X 150gは、水 [75g] に相当します。
てんびん法(または食塩水の濃度の要領)で計算
- 「10℃の水 200g」と「80℃の水(相当) 75g」を混ぜる計算になります。
- 温度差:80 - 10 = 70℃
- 重さの比:(冷たい方) 200 : (温かい方) 75 = 8 : 3
温度変化の比は重さの逆比になるので、3 : 8 になります。
温度を求める
- 70℃の温度差を 3:8 に分けます。
- 冷たい方(10℃)から、70℃ × 3/(3+8) だけ上がります。
- 70 × 3/11 = 210/11 ≒ 19.1℃
- あれ? 計算結果が選択肢と合いません。再確認します。
- 再考プロセス(AI分析官の修正):
問題文:「液体Xが100℃に達するまでの時間は水の半分」 。
時間半分 = 熱量半分で同じ温度上昇 = 比熱は半分。ここまでは正しい。
- 計算:
- 水200gの熱容量比 = 200 × 1 = 200
- X 150gの熱容量比 = 150 × 0.5 = 75
- 合計熱容量 = 275
- 総熱量 = (200×10) + (75×80) = 2000 + 6000 = 8000
平均温度 = 8000 ÷ 275 = 320 ÷ 11 ≒ 29.09℃
よし、今度は合いました。選択肢 [ウ 29℃] が正解です。
- (最初のてんびん計算で、3/(3+8) ではなく、逆比の取り違えがあった可能性があります。総熱量÷総容量 が最もミスのない方法です。)
【解答例】
- 液体Xは水に比べて熱しやすく冷めやすい(比熱が0.5倍)。液体X 150gは、水75g相当の熱容量を持つ。
- (200g×10℃ + 75g相当×80℃) ÷ (200g+75g)
- 8000 ÷ 275 ≒ 29.1℃
- 答え:ウ
大問3:生物(環境と実験)
問7(カビの増殖実験の考察)
【難易度:B(標準)】 目標:絶対に正解したい
【整理】 実験結果の表 を分析します。
- 条件1(水5mL・密閉):カビ0
- 条件4(水5mL・24時間開放):カビ+
- 条件6(水20mL・24時間開放):カビ+++++
- 比較: 開放したほうがカビが多い、水が多いほうがカビが多い。
【考え方(超・精細解説)】 「考察として間違っているもの」を選ぶ問題です。
- 選択肢の検討
- ア: 水が多い方が増殖しやすい → 表の結果(条件4<5<6)から正しい。
イ: 「水をかけないで実験をした場合、カビは絶対に増殖しない」
科学において「絶対に」という言葉は要注意です。パン自体にも水分は含まれています。条件1(水5mL)でカビが見えなかったとしても、水をかけなければゼロとは断言できません(時間はかかるかもしれませんが)。これは疑わしいです。
ウ: リビングには胞子が存在する → 開放した条件でカビが増えたことから正しい。
- エ: 条件1にも胞子がいる可能性がある → 正しい。環境が合わず発芽しなかっただけかもしれません。
オ: 「食パンにかけた水に入っていたカビが増殖している」
実験条件に「水は煮沸したものを利用する」 とあります。煮沸すればカビは死滅します。よって、水由来のカビではありません。これは明らかに間違いです。
結論
- 明らかに間違っている実験前提の オ と、断定が強すぎる イ が誤りです。
【解答例】
- イ:パン自体に含まれる水分でカビが生える可能性があるため、「絶対に」とは言えない。
- オ:使用した水は煮沸されており、カビは死滅しているため、水由来ではない。
- 答え:イ、オ
大問4:地学(月と地球)
問2(月から見た地球)
【難易度:C(やや難)】 目標:思考力の見せ所
【整理】
図1の月: 右側が光っている三日月(眉月) 。
位置関係: 地球から見て、月は太陽に近い方向(右側)にあります。
【考え方(超・精細解説)】 「地球から見た月」と「月から見た地球」は、満ち欠けが正反対(あべこべ) になります。
- 原理
- 月が「新月(真っ暗)」のとき、月から見た地球は太陽の光を正面から受けて「満地球」に見えます。
- 月が「満月」のとき、月から見た地球は逆光で「新地球」に見えます。
両者の満ち欠けを足すと、ちょうど「満月」の形になります。
図1の解析
- 図1は「右側が少し光っている」状態です。
- これを反転させると、「左側が大きく光っている」状態になります。
つまり、「左側が膨らんだ形(欠けた円)」 に見えます。
選択肢の選択
- 左側が大きく膨らんでいる図を選びます。
- 選択肢 カ が、左側が光っている形状です。
【解答例】
- 地球から見た月と、月から見た地球の満ち欠けは逆になる。
- 右側が光る三日月の逆は、左側が光る更待月(ふけまちづき・欠けた卵型)のような形になる。
- 答え:カ
プロ理科講師の総評:合否を分けたポイント
1月11日の栄東は、知識量よりも「条件整理の正確さ」で差がつきました。特に大問1のばねの問題や大問2の比熱計算は、問題文の数値を雑に扱うと絶対に正解にたどり着けません。「水換算」や「力の釣り合い」といった原理原則を、図を書きながら丁寧に整理できた受験生が合格を勝ち取っています。
【合格へのアクションプラン】 今回は「4. 自分ノートの作成」が最も効果的です。
- 大問1の「図9・図10のばね」や、大問2の「熱伝導の図」をノートに書き写してください。
- 特にばねの問題は、「自然長」「伸び」「全長」のどこを問われているのかを色分けして書き込む練習をしましょう。この一手間が、ケアレスミスを根絶します。
対策におすすめの書籍
栄東中は首都圏屈指の受験者数を誇り、その良問は他校の対策にも最適です。
栄東中学校の過去問解説シリーズ
- [ 2023栄東中(A日程1月10日) 理科 解説
] * [ 2022栄東中 理科 解説 準備中]
【解説のスタンスと免責】 本記事は、入試問題を徹底的に分析・研究するプロフェッショナルが作成した「学習補助資料」です。学校公式の模範解答ではありません。解き方は一つではありませんので、塾の先生の指導も尊重してください。最終的な正誤判断は必ず過去問集等でご確認ください。 ※「著作権」に配慮し、問題文・図版は掲載していません。原典にある精細な図を観察しながら考えることが合格への近道です。お手元の過去問集と照らし合わせながらご覧ください。


