大問1:歴史総合(時代の識別と流れ)
8つの「メモ」をもとに、歴史の基本的な流れ(通史)と、各時代を象徴する出来事や文化遺産を結びつける総合問題です。単なる用語暗記ではなく、「時代の長さ(期間)」の感覚や、地理的知識(遺跡の場所)とのリンクも問われる、非常に良質な構成となっています。
問1(重要語句の記述)
【考え方】 メモ①の「飛鳥時代」「現存する世界最古の木造建築物」という記述に着目します。 飛鳥時代は、仏教文化が花開いた最初の時代です。聖徳太子が建立に関わったとされる寺院はいくつかありますが、「世界最古の木造建築」というフレーズが出たら、奈良県の法隆寺(斑鳩寺)一択です。 なお、よく比較される「東大寺大仏殿」は「世界最大級の木造建築」であり、時代も奈良時代(創建)~江戸時代(再建)と異なるため、明確に区別しておきましょう。
【解答】 法隆寺
問2(人物の特定)
【考え方】 メモの「源頼朝の死後、その妻が( )となって政治を行った」という記述がヒントです。 鎌倉幕府を開いた源頼朝の死後、源氏の将軍は3代で途絶えてしまいます。その混乱期に、実質的なリーダーシップをとったのが、頼朝の妻であり北条氏の出身である北条政子です。彼女は出家して尼(あま)となり、「尼将軍」と呼ばれて幕府の危機(承久の乱など)を救いました。
【解答】 北条政子
問3(時代の並べ替え)
【考え方】 まず、8つのメモがどの時代を指しているか、キーワードから即座に判断します。
- ④ 縄文:狩猟採集・三内丸山遺跡
- ⑧ 弥生:稲作・登呂遺跡・貧富の差
- ① 飛鳥:法隆寺・蘇我氏の台頭
- ⑤ 奈良(C):聖武天皇・大仏・伝染病
- ⑥ 平安(D):藤原氏(摂関政治)・源氏物語
- ③ 鎌倉(B):御恩と奉公・元寇・北条政子
- ⑦ 室町:金閣/銀閣・応仁の乱
- ② 江戸(A):参勤交代・武家諸法度
これらを古い順に並べます。
【歴史の流れ】 [狩猟の縄文] → [稲作の弥生] → [仏教伝来の飛鳥] → [律令の奈良] → [貴族の平安] → [武士の鎌倉] → [動乱の室町] → [泰平の江戸]
【解答】 4→8→1→5→6→3→7→2
問4(時代の長さの比較)
【考え方】 A(江戸)、B(鎌倉)、C(奈良)、D(平安)の4つの時代を、期間が短い順に並べます。年号を厳密に覚えていなくても、「政治体制の安定度」と「概算年数」で判断可能です。
- C:奈良時代(710年 平城京 ~ 794年 平安京)
約84年間。100年に満たない短い時代です。
B:鎌倉時代(1185年 壇ノ浦 ~ 1333年 鎌倉幕府滅亡)
約150年間。
A:江戸時代(1603年 江戸幕府 ~ 1867年 大政奉還)
約265年間。戦乱のない時代としては世界的に見ても長期政権です。
D:平安時代(794年 平安京 ~ 1185年 壇ノ浦)
- 約390年間。古代で最も長い安定期です。
【達人の視点:時代の長さランキング】
| 順位 | 時代 | 約何年? | イメージ |
|---|---|---|---|
| 最長 | 平安時代 | 約400年 | 鳴くよ(794)ウグイス~イイクニ(1192)の手前まで。圧倒的に長い。 |
| 2位 | 江戸時代 | 約260年 | 徳川15代の平和な時代。 |
| 3位 | 室町時代 | 約240年 | 実は鎌倉より長いが、戦乱(戦国時代)を含む。 |
| 4位 | 鎌倉時代 | 約150年 | 武家政権の始まりとしては短め。 |
| 最短 | 奈良・飛鳥 | 100年未満 | 都がコロコロ変わった不安定な時代。 |
【解答】 C→B→A→D
問5(地理・遺跡の場所)
【考え方】 地理と歴史の融合問題です。
- 「伊豆」の場所:源頼朝が流された伊豆国は、現在の静岡県です。
- 静岡県の遺跡:選択肢のメモの中から静岡県にあるものを探します。
- メモ④:三内丸山遺跡 → 青森県
- メモ⑧:登呂遺跡 → 静岡県(静岡市)
登呂遺跡は、弥生時代の水田跡と住居跡がセットで発見されたことで、稲作の様子を解明する決定打となった遺跡です。
【解答】 登呂遺跡
大問2:公民・歴史(貨幣と政治経済)
新紙幣の発行(渋沢栄一ら)を導入として、国家の財政(公民)から、古代の貨幣・政治改革(歴史)まで多角的に問う問題です。
問1(国の財政と国会)
【考え方】 公民分野の基礎知識です。 (1) 予算の作成や税金の徴収、通貨の発行管理などを行う国の役所は「財務省」です。 (2) 内閣が作成した予算案を審議し、議決(決定)する権限を持つのは「国会」です。日本国憲法において国会は「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」と定められています。予算の議決権は衆議院に優越が認められています。
【解答】 (1) 財務省 (2) 国会
問2(人物とゆかりの地)
【考え方】 問題文のリストにある菅原道真に関連する出題です。 菅原道真は、平安時代前期に活躍した学者・政治家ですが、藤原氏の陰謀により無実の罪を着せられ、九州の役所へと左遷されました。その左遷先が大宰府(福岡県)です。 死後、天変地異が相次いだため「怨霊」として恐れられましたが、現在は「学問の神様」として太宰府天満宮や北野天満宮に祀られています。
- ア:平城京(奈良時代)
- イ:大宰府(九州の外交・防衛拠点、道真の左遷先)
- ウ:東大寺(聖武天皇)
- エ:中尊寺(奥州藤原氏・岩手県)
【解答】 イ
問3(古代の政治改革)
【考え方】 中大兄皇子(のちの天智天皇)と中臣鎌足らが、蘇我氏を倒して始めた一連の政治改革を指します。 645年の「乙巳の変(いっしのへん)」から始まり、公地公民(土地と人民を天皇のものとする)を目指した改革といえば、大化の改新です。
【解答】 大化の改新
問4(聖徳太子の業績)
【考え方】 聖徳太子に関する基礎知識の空欄補充です。
- ① 天皇が女性(推古天皇)だったため、その補佐として政治を行った役職 = 摂政
- ② 家柄ではなく個人の才能や功績で役人を登用する制度(冠の色で区別) = 冠位十二階
- ③ 蘇我氏と協力してあつく信仰し、国作りの柱とした宗教 = 仏教
- ④ 進んだ文化や制度を取り入れるために使者(小野妹子ら)を送った中国の王朝 = 隋(遣隋使)
【達人の視点:聖徳太子の「3大・制定/派遣」】
| 名称 | 目的・内容 |
|---|---|
| 冠位十二階 | 人材登用。家柄社会からの脱却。 |
| 十七条の憲法 | 役人の心得。「和を以て貴しとなす」。 |
| 遣隋使 | 対等外交と文化摂取。「日出づる処の天子...」。 |
【解答】 ① 摂政 ② 冠位十二階 ③ 仏教 ④ 隋
問5(縄文時代の交易)
【考え方】 縄文時代の重要交易品である「黒曜石(こくようせき)」の用途を問われています。 黒曜石は火山ガラスの一種で、割ると非常に鋭利な刃物状になります。金属器がなかったこの時代、動物の皮を剥いだり、矢の先端(矢じり)に取り付けて狩猟に使ったりするための石器(打製石器)の材料として重宝されました。 長野県の和田峠や北海道の白滝など、限られた産地でしか採れない黒曜石が遠く離れた遺跡で見つかることは、縄文時代に広範囲な「交易ネットワーク」があった証拠とされています。
【解答】 石器
問6(地図記号と条里制)
【考え方】 (1) 「田」の地図記号を選びます。
- ア:果樹園(リンゴのような形)
- イ:茶畑(実のような点々)
- ウ:田(稲を刈り取った後の切り株の形)
- エ:畑(V字=植物の芽)
(2) 「大化の改新」以降に行われた、土地を碁盤の目状に区画整理した制度(条里制)の痕跡について問われていると考えられます。奈良盆地や讃岐平野などで見られる、整然とした区画は古代の土地制度の名残です。
【解答】 (1) ウ (2) ア
問7(世界の国旗と貿易)
【考え方】 日本が塩や鉄鉱石、石炭を多く輸入している相手国であるオーストラリアの国旗を選びます。 オーストラリアはイギリス連邦の一員であるため、国旗の左上(カントン部)にイギリス国旗(ユニオンジャック)が入っています。また、南半球に位置するため、右側には南十字星が描かれています。
- ア:カナダ(中央にカエデの葉)
- イ:イギリス(ユニオンジャック)
- ウ:オーストラリア
- エ:アメリカ(星条旗)
【解答】 ウ
問8(貨幣誕生の理由・記述)
【考え方】 「なぜ、米や布ではなく金属がお金として定着したのか?」という経済学の根幹を問う記述問題です。 物々交換の不便さを解消するために生まれた物品貨幣(米・塩・布など)には、以下の弱点がありました。
- 腐る・劣化する(保存がきかない)
- 品質がバラバラ(価値が一定しない)
- 持ち運びが不便(重い・かさばる)
これに対し、金属(金・銀・銅)は「耐久性(腐らない)」「希少性(価値が高い)」「分割・統合のしやすさ」を持っています。特に問題文の資料で触れられている「価値が変わらない」「劣化しない」という点に着目してまとめます。
【記述の構成要素】
- 要素A:金属は昔から貴重であった(希少性・価値の保存)。
- 要素B:劣化(腐敗)することがあまりない(耐久性)。 → これらを「~ため。」で結びます。
【解答】 金属は昔から貴重であり、また劣化することもあまりないため。
大問3:地理・産業(日本の農業と工業)
山形県(酒田市)と群馬県(太田市)を題材に、地形・気候と農業・工業の結びつきを解き明かす地理の総合問題です。「なぜそこでその産業が発達したのか?」という必然性を問う、中学入試地理の王道と言える構成です。
問1(地形名の記述)
【考え方】 地図中の位置を確認します。
- 平野ア:山形県の日本海側に広がる、最上川の下流に位置する平野です。日本有数の稲作地帯として知られる庄内平野です。
- 山脈イ:日本海側と太平洋側を分ける「日本の背骨」。新潟県から福島県・群馬県境にかけて走る越後山脈です。この山脈が冬の季節風を遮ることで、日本海側に雪を、太平洋側に乾燥した風をもたらします。
【解答】 ア:庄内平野 イ:越後山脈
問2(季節風とフェーン現象)
【考え方】 日本の気候メカニズムを深く理解しているかが問われます。
- (あ) 酒田市(夏):夏は南東からの季節風が吹きます。これが山脈(越後山脈など)を越えて日本海側に吹き下りる際、フェーン現象が発生します。空気が圧縮されて温度が上がり、乾燥するため、山形県などでは猛暑となります。この「高温」は稲の生育を助けますが、干ばつの原因にもなります。よって「暖かくて乾いた」風です。
- (い) 太田市(冬):冬は北西からの季節風が吹きます。日本海側で雪を降らせて水分を失った風が、山脈を越えて太平洋側(群馬県)に吹き下ります。「上州のからっ風」や「赤城おろし」と呼ばれ、冷たくて乾燥しています。
【解答】 あ:イ い:エ
問3(農業施設)
【考え方】 資料の写真にある、巨大なサイロのような施設は、刈り取った籾(もみ)を大量に乾燥させ、貯蔵するための設備です。庄内平野などの大規模な稲作地帯によく見られます。 エレベーターのような搬入機能を持つことから、カントリーエレベーターと呼ばれます。
【解答】 カントリーエレベーター
問4(流通の変化)
【考え方】 「生産者が消費者に直接注文を受ける」手段を問われています。 かつては卸売市場を通すのが主流でしたが、現在は生産者がWebサイトやSNSを使って消費者に直販するケースが増えています。現代の通信手段として最も適切なのはインターネットです。
【解答】 インターネット
問5(キャベツの生産と気候)
【考え方】 キャベツの産地と気候条件のロジックを整理します。
- 春・冬キャベツ:温暖な千葉県や愛知県が産地。→ (あ) 暖かい
- 夏秋キャベツ:群馬県(嬬恋村)や長野県などの高原が産地。
- なぜ夏に高原で作るのか? → 夏でも平地より涼しい((い))からです(抑制栽培)。
- 高原野菜がおいしい理由は? → 昼と夜の気温差が大きい((う))ため、養分を蓄えやすいからです。
表の選択肢「ウ」がこの組み合わせ(暖かい・涼しく・大きい)に合致します。
【解答】 ウ
問6(近郊農業の立地)
【考え方】 春キャベツ(千葉・神奈川)や冬キャベツ(愛知)の産地地図を見ると、東京や名古屋といった大都市の近くに集中していることがわかります。 大都市は人口が多く、野菜をたくさん食べる「消費地」です。消費地の近くで作れば、輸送コストを安く抑えられ、新鮮なまま届けることができます。これを近郊農業といいます。 解答には「消費」という語句を使う指定があるため、「消費量が多い大都市の近く」という文脈でまとめます。
【解答】 春キャベツと冬キャベツの主要産地は、太平洋側のキャベツの消費量が多い大都市の近くに分布している。
問7(工業地域の特色)
【考え方】 資料Ⅴの表から、群馬県の工業データを選びます。
- ア:輸送用機械が50%超、出荷額47兆円 → 愛知県(トヨタ自動車)
- イ:石油・化学の比率が高い → 千葉県(京葉工業地域)
- ウ:輸送用機械が約30%、食料品も約10%ある → 群馬県。
- 太田市には「SUBARU(スバル)」の工場があり、北関東工業地域の中核です。
こんにゃくやキャベツなどの農産加工(食料品)も盛んです。
エ:石油・化学・鉄鋼のバランス型 → 岡山県(水島コンビナート)
よって、群馬県の特徴を示すデータは「ウ」です。
【達人の視点:北関東工業地域の特徴】
| 特徴 | 具体例 |
|---|---|
| 輸送用機械 | 群馬県太田市(スバル)、栃木県上三川町(日産) |
| 内陸型 | 海に面していないため、高速道路網を利用した輸送が発達。 |
| 食料品工業 | 首都圏への供給基地として、飲料や食品工場が多い。 |
【解答】 ウ
プロ社会科講師の総評:合否を分けたポイント
2025年度の岡山中学の社会は、単なる知識の「点」ではなく、知識同士をつなぐ「線」の理解を強く求める良問揃いでした。
1. 歴史分野:流れと文化のセット暗記 大問1では、歴史の出来事を古い順に並べる問題が出題されました。年号を丸暗記するだけでなく、「縄文→弥生」の生活変化や、「平安の貴族政治→鎌倉の武家政治」といった時代の転換点(パラダイムシフト)をイメージできているかが鍵でした。特に、法隆寺(飛鳥)と東大寺(奈良)の区別は基本中の基本です。
2. 公民・経済:メカニズムの言語化 大問2の新紙幣や貨幣の問題では、「なぜ金属がお金になったのか?」という記述が求められました。用語を知っているだけでなく、「保存性」「希少性」といった概念を使って説明できる国語力が必要です。これは大学入試改革以降、中学入試でもトレンドとなっている「思考力重視」の表れです。
3. 地理分野:気候と産業の因果関係 大問3は決定的な差がついた箇所です。「季節風の向き」→「フェーン現象」→「気候の特徴」→「農業への影響」というロジックを一つでも踏み外すと失点します。また、群馬県(太田市)が「風の問題」と「工業の問題」の両方でキーになっており、一つの地域を多角的に見る視点が問われました。
【合格への対策】
- 「なぜ?」を大切にする: 「夏は涼しい」で終わらせず、「標高が高いから涼しい」→「だから高原野菜を作る」と因果関係をつなげる癖をつけましょう。
- 白地図作業: 工業都市や野菜の産地は、必ず白地図に書き込んで「場所」として覚えましょう。文字だけの暗記は通用しません。
- 時事へのアンテナ: 新紙幣や流通の変化(インターネット直販)など、身近なニュースが問題の入り口になっています。
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【解説のスタンスと免責】 本記事は、中学入試に特化した講師が独自の視点で作成した「学習補助資料」です。学校公式の模範解答ではありませんので、最終的な正誤判断は必ず赤本等でご確認ください。なお、現在は受験指導を最優先としているため、記事内容に関する個別の質問やご指摘への返信は差し控えさせていただいております。ご理解いただけますと幸いです。 ※「著作権」に配慮し、問題文・地図・統計表は掲載していません。お手元の過去問集(赤本など)と照らし合わせながらご覧ください。




