Склад Памяти

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とび魚のバタフライ

化学組成が大きく異なる岩体同士の接触領域—岩相境界—には、量的には決して多くないものの、珍しい産状を示す鉱物や岩石が産出します。

石灰岩に珪長質マグマが貫入した際に境界領域に形成されるスカルン (鉱床) は、その好例です。

それらは岩石間での化学組成の勾配や水流体の流れを駆動力とした溶解・移流・拡散・沈殿析出などのプロセスを経て形成されるため、地球内部で起きている岩石間・岩石−流体間の相互作用を読み解く重要な手掛かりになります。

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今回の岩石は、かつてのプレート沈み込み境界の岩石、「透閃石岩」です。

本岩石は、沈み込むプレート上の堆積岩源変成岩と、上盤マントルの超苦鉄質岩 (橄欖岩・蛇紋岩) との境界領域に特徴的に見られます。

そのため国内では三波川変成帯別子地域をはじめとして、比較的普通に本岩石を観察することができます。

滑石–透閃石岩 (三波川変成帯)

フィールドでは、透閃石がほぼ100%を構成するものから、滑石や蛇紋石、緑泥石と共存するものまでバリエーションがありますが、無色〜淡緑色の透き通る柱状・繊維状の透閃石単結晶が目印になります。

以下、岩石薄片の写真です。構成鉱物はどれも軟らかく繊細で、丁寧な仕上げが必要です。

直交ニコル (面・線構造に垂直)

鮮やかな干渉色を示し、しなやかに湾曲する自形の透閃石と、細粒な滑石と緑泥石からなるマトリックスコントラストが特に美しいです。

左:平行ニコル 右:直交ニコル

透閃石に見られる波動消光と面構造の褶曲は、変形作用を被った証拠です。

透閃石 (左:平行ニコル 右:直交ニコル)
弱い多色性を示し、面構造・線構造を規定する。
滑石・緑泥石 (左:平行ニコル 右:直交ニコル)
もっとも高い干渉色の鉱物が滑石。対照的に低い干渉色の鉱物が緑泥石 (Clinochlore)。

直交ニコル
Tremolite fish

ルーブルーブルーブルー、

ルーブルーホワイトブルー。

 

良いお年を。

或る町の群青

長閑な比企の山間の川底に、人知れず青みを帯びた岩石が顔をのぞかせています。

川の水を掛けてみるや否や、たちまち藍染を彷彿とさせんばかりの、目覚ましい群青色を帯びるこの岩石こそ、言うまでもなく青色片岩です。

関東山地東縁には、中生代白亜紀のプレート沈み込み帯深部で生じた (低温高圧型) 変成岩からなる「三波川変成帯」が広く分布しています。

青色片岩はいわば沈み込み帯の岩石の代名詞であり、徳島県眉山や高越に広い産出が知られています。県内では小川町などで見られ、実際の岩石標本は県立自然の博物館の常設展示で、観察することが可能です(バーチャル展示室)。

深い藍色の原因は、Na2(Fe(II),Mg)3Fe(III)2Si8O22(OH)2組成式で表されるNa角閃石の一種、リーベック閃石 (Riebeckite) です。ルーペで見てやると、細粒なリーベック閃石が岩石の面構造 (片理面) に平行に伸び、かつ線構造を成しているのが観察されます。

本鉱はFeにかなり富む含水イノ珪酸塩鉱物で、その化学状態も2価および3価と面白い (ときに厄介な) 組成を持ちます。苦鉄質な結晶片岩のほか、アルカリ質な深成岩に出現します。

それだけでなく、珈琲色の細粒な繊維状鉱物も同じように成長しているのが観察されます。埼玉県の鉱物、スティルプノメレン (Stilpnomelane) です。こちらもやはりFeにかなり富んでおり、(K,Na,Ca)0.6(Mg,Fe(II),Fe(III))6Si8Al(O,OH)27 · 2-4H2Oの組成式で表される含水層状珪酸塩鉱物です。しばしば自形の磁鉄鉱も観察され、この青色片岩が非常にFeに富む全岩組成を持っていることがわかります。

ところで、実際に青色片岩を構成するNa角閃石は、藍閃石 (Glaucophane) が一般的です。リーベック閃石はこの藍閃石と連続固溶体を形成し、その化学組成は次の4つの端成分

・Riebeckite:Na2Fe(II)3Fe(III)2Si8O22(OH)2

・Magnesio-riebeckite:Na2Mg3Fe(III)2Si8O22(OH)2

・Glaucophane:Na2Mg3Al2Si8O22(OH)2

・Ferro-glaucophane:Na2Fe(II)3Al2Si8O22(OH)2

のうち3つの成分の線形結合により表されます。前世紀末まではこれらの中間的組成の角閃石はクロス閃石 (Crossite) と呼ばれていました。とくに藍閃石組成のものはざくろ石やオンファス輝石、ローソン石などの高圧変成鉱物とも共生することが多く、その安定領域の広さが窺われます。

随分と前置きが長くなりましたが、今回は三波川変成岩の一種、スティルプノメレン-リーベック閃石-石英片岩の紹介です。

以下、薄片の写真を紹介します。

薄片写真

左:平行ニコル、右:直交ニコル
左:平行ニコル、右:直交ニコル

平行ニコルで葡萄色を呈した針状ないし板柱状の伸長鉱物がリーベック閃石、茶色の繊維状鉱物がスティルプノメレン、黒色の不透明鉱物が磁鉄鉱です。リーベック閃石、スティルプノメレン、石英に富む層が互層をなしており、局所的な化学組成のコントラストが存在します。これらは細粒の燐灰石・緑簾石と共存しますが、顕微鏡サイズなため露頭で同定することは難しいでしょう。淡白な基質はすべて細粒な石英からなります。

偏光顕微鏡でリーベック閃石を鑑定する際の重要かつ鍵となる平行ニコルでの多色性 (濃青色~緑色) も観察されます。次の写真は上の写真から90度ステージを回転させた視野です。

左:平行ニコル、右:直交ニコル

クローズアップ。

リーベック閃石 (平行ニコル)

スティルプノメレン (平行ニコル)