本シリーズを通じて見てきたのは、「無尽蔵である」という前提が、いかに脆い幻想であったかという事実である。 石油、ドル、国家主権、経済成長、技術進歩――20世紀文明は、それらを際限なく拡張可能なものとして扱ってきた。しかし21世紀に入り、あらゆる領…
―「資源のない国」という神話を解体する ― 日本は長らく「資源のない国」と言われてきた。石油も天然ガスも乏しく、エネルギー安全保障に弱い――それは戦後日本の自己認識として、ほとんど常識のように語られてきた。 しかし本当にそうだろうか。 本章で示し…
はじめに:一つの事件として見ない 米国によるベネズエラへの斬首作戦は、単なる「麻薬戦争」や「反独裁」の文脈で理解すると、決定的に見誤る。 これは 一国の治安作戦 一地域の政変工作 ではない。 覇権国家が、どこまで「やる」用意があるのかを示したシ…
― ソフトランディングか、ハードランディングか ― 20世紀後半から21世紀初頭にかけて、米ドルは疑いようのない世界基軸通貨であり続けてきた。軍事力、経済力、技術力、そして石油という実体資源を背景にしたペトロダラー体制は、他に代替のない秩序として機…
――21世紀の「新本位制」の萌芽** 20世紀後半から現代に至るまで、世界金融の中心にあるのは米ドルであり、その基盤を形づくってきたのは国際石油取引におけるドル決済の強制構造、いわゆるペトロダラー体制であった。アメリカは軍事力と市場支配力を背景に石…
0.はじめに 年の瀬から年始にかけて、ある種の言説が、決まった構文で増殖しているように見える。 それは必ずしも新しい主張ではない。だが、妙に道徳的で、妙に攻撃的で、そして驚くほど空虚だ。 賛同と非難が高速で入れ替わり、誰もが何かを「告発」して…
――紅白・皇室報道・朝ドラという三つの被写体 大みそかのテレビを眺めながら、あるいは朝の習慣として朝ドラを流し見しながら、「なんとなく嫌な感じが残る」「言葉にできない違和感がある」そう感じたことはないだろうか。 これは特定の出演者や思想への好…
はじめに 日本の乳児死亡率は世界最低水準にある。この点に異論はない。 一方で、指標の取り方を変えると、別の像が浮かび上がる。本稿では、総務省の人口推計に基づき、 各年10月1日時点の「0歳人口」と「1歳人口」を比較する という、きわめて単純な方法で…
はじめに 発達障害をめぐる議論には、しばしば奇妙なねじれが生じる。「先天的だ」と強調されたかと思えば、次の瞬間には「可塑性がある」と語られる。意図的か無意識かは別として、論理的には矛盾を孕んだままだ。 しかし、本当に重要なのは原因の所在では…
(※本稿は、特定国や民族への攻撃を目的とするものではなく、命名原理と論理的一貫性を考えるための思考実験である) 1. はじめに:笑いながら振る野太刀 「日本海は『東海』と呼ぶべきだ」という主張を耳にしたとき、多くの人は反射的に賛否の立場を取らさ…
生成AIとの対話を続けていると、ある瞬間から明らかに質が変わることがある。 応答が速くなった、賢くなった、という話ではない。それまで散発的だった言葉が揃い、比喩が再利用され、短い一文が深く刺さるようになる。 量の変化ではなく、相の変化だ。 この…
はじめに 「科学で説明できないものは存在しない」「科学が最終的にすべてを解決する」――こうした言説は、一見すると理性的で近代的に見える。しかしそれが思想として無自覚に絶対化されたとき、それはもはや科学ではなく、科学万能論という信仰に近いものへ…
― 構造と実存のアウフヘーベンとしての人間 ― 本書(ブログ)は、構造主義と実存主義という、20世紀思想の両極が見つめ続けた問い――「人間を決めるのは構造か、自由か」――この古い対立を越え、統合する試みであった。 レヴィ=ストロースが見抜いたように、…
― 構造が再び肥大化する時代に、実存は何を守り得るか ― 20世紀の全体主義は、「人間を構造が飲み込む」最悪の形として現れた。ナチズム、スターリン主義、文化大革命――いずれも人間の実存を圧殺し、構造(制度・言語・規範)が肥大化し、人間を単なる“機能”…
―― 構造と実存の相互作用としての人生 ――** レヴィ=ストロースは「構造主義の父」として語られる。しかし、彼自身の人生を丁寧に辿ると、その軌跡はむしろ――構造(Structure)と実存(Existence)の相互作用 が作り上げた「動的な生成の過程」だったことが…
構造主義と実存主義は、長らく“対立する陣営”として位置づけられてきた。 構造主義:人間は構造の産物 実存主義:人間は選択の主体 だが、アウシュビッツという極限点で露わになったのは、両者は対立していないという事実だった。 むしろ――片方だけでは人間…
構造と実存――この二つの力は、本来なら互いを高め合う“両輪”になりえたはずだ。 だが、西洋思想の歴史は、驚くほど一貫して「二つの力を対立させ続けてきた」という特徴を持つ。 その呪いが、構造主義を「構造の囚人」にし、実存主義を「孤独な個人の叫び」…
――覇権=国家という前提の崩壊 20世紀まで、覇権とは基本的に「国家」が握るものだった。だが21世紀に入り、この前提が静かに崩れつつある。その背景には、技術革新のスピードが国家の制度・官僚機構を追い越し、民間企業や国際金融資本、AIデベロッパー、宇…
アウシュビッツという、構造が極限まで肥大化し、人間の意味世界がほぼ完全に破壊された空間。そこでは言語も文化も制度も、すべてが「死へと傾斜する力学」に書き換えられていた。 にもかかわらず――そこから“人間”が消え去ることはなかった。 その理由こそ…
なぜ今、ハンナ・アーレントなのか なぜ今、ハンナ・アーレントなのか。それは彼女が「正しかったから」ではない。ましてや「勇敢だったから」でもない。 彼女はただ、考えることをやめなかった。それだけのことが、これほどまでに不都合だった。 全体主義は…
文明史を振り返ると、世界の覇権は単なる軍事力や領土の広さだけで決まったわけではない。そこには常に、技術、エネルギー、そして通貨という三つの力が絡み合い、さらに国家を超えた国際金融資本の働きが影を落としてきた。覇権の移行は偶然の産物ではなく…
人間は自由に生きていると思っている。しかしその自由は、あらかじめ設置された“見えないレール”の上を走っているにすぎない。 そのレールこそが、本章で扱う 構造=Structure である。そして構造は、人間の背にそっと取り付けられた 軛(くびき) のように…
― 構造が人を殺しに来たとき、実存が立ち上がる ― 世界はいま、かつてない速度で“構造”の支配を強めつつある。 国家の政策、企業のアルゴリズム、言語空間の劣化、そして「空気」という名の非対称な圧力。人々はいつの間にか、透明で巨大な構造のなかに包摂…
「自己責任社会」とよく言われる。だが、どうにも腑に落ちない。 コロナ、ワクチン、就職氷河期、タワマン、金融商品、過疎化、晩婚化、少子化。一つひとつを見れば事情は違う。しかし、眺めていると共通した違和感がある。 これは本当に「自己責任」なのだ…
イ.事件の概要 2025年12月6日午後、沖縄本島南東の公海上空で、中国海軍の空母「遼寧」から発艦した中国軍戦闘機 J-15 が、航空自衛隊の F-15戦闘機 に対して 二度にわたりレーダー照射を行った事案 が発生したと防衛省が発表した。第1の照射は 同日16時32…
石油資本と化石燃料依存 21世紀初頭、世界は化石燃料依存からの脱却を模索し始めた。しかし、石油資本は容易にこの流れを許さなかった。理由は単純である。石油ビジネスの基盤が揺らぎ、利益が脅かされるからだ。 石油は単なるエネルギー源ではない。産油国…
21世紀の文明を想像してみよう。都市は光に包まれ、工場やインフラは休むことなく動き続ける。しかし、その背後では、膨大なエネルギーが絶え間なく消費されている。ここで問われるのは、文明を支える力をどう確保するかだ。 核融合発電は夢の力を秘めている…
自然エネルギーと化石燃料の対比 人類の文明は、長らく化石燃料という有限資源に依存してきた。石炭、石油、天然ガス──いずれも地球上で限られた量しか存在せず、大量消費は必ず枯渇と環境問題を伴う。しかし、太陽や風、海流、地熱といった自然エネルギーは…
夜空を見上げると、星々が輝き、その光は何万年もかけて地球に届く。その星の中では、絶えず核融合が起こり、膨大なエネルギーを放っている。人類もまた、この星々の力を手に入れようとしている。 核融合発電──それは、CO₂を排出せず、まるで無限のエネルギ…
― 技術の出自を見つめ直すための、ひとつの静かな物語 ― 人は、あまりに長いあいだ、“見ないようにしてきた真実” から目をそらすことに慣れるものです。 そして、見ないようにしていたものが再び姿を現すとき、それは多くの場合、「時代そのものが変わりつつ…