
「人は幸せな時は人生の意味などに関心を持たないものだ」
原題は「Солярис」(太陽の)
1961年に発表した小説「ソラリス」

海に覆われた未知の惑星ソラリスの軌道上に浮かぶ宇宙ステーションに
調査のためにやってきた心理学者の前に10年前に自殺したはずの妻が現れます
それはソラリスの海がその人の意識を反映して具現化させた物質でしたが
そのコピーはだんだんと本当の妻らしくなっていき
学者も本気でコピーを愛するようになってしまう・・というもの

アンドレイ・タルコフスキーの名前を世界に知らしめた作品で
1972年カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を受賞
しかし原作者のレムは内容の変更や、感性の相違から
タルコフスキーに会うためモスクワまで乗り込み
激しい口論の末「大馬鹿野郎!」と捨て台詞を吐きタルコフスキーと決別
「タルコフスキーが作ったのは「ソラリス」ではなくて「罪と罰」だ」と
語ったそうです(それって悪口になっていないような気が 笑)

SF映画の金字塔のひとつですが、SF的な描写や映像はなく
敢えて言うなら宇宙ステーションのセットくらい(笑)
冒頭、両親と暮らす心理学者のクリス・ケルヴィンのもとに
クリスの父親の友人で、かって宇宙飛行士だったバートンがやって来て
ソラリスで飛行していたときの奇妙な体験を証言したビデオを見ます
(ビデオの中身は不定の未来で、すでに恒星間飛行が行われている)

バートンはソラリスの海の表面が変化し、街や巨大な赤ん坊となり
その赤ん坊はバートンの知人の赤ん坊にそっくりだったといいます
クリスはソラリスの観測宇宙ステーションからの通信が途絶えため
調査のため宇宙ステーションに赴くことになっていましたが
バートンの言うことをにわかに信じることはできませんでした

そこから突然、東京の首都高が延々と現れ
なんでも未来都市のフッテージ(編集されていない映像)だったそうですが
そもそもこの映画のエピソード自体が順不同に撮影されており
同じカットでも登場人物の服装が違ったりと後からトラブル発生
気付いたときには撮り直しや編集することが間に合わず、タルコフスキーは
「ファンタジーがある、みんなにこれが正しい姿だと思わせてやれ!」と
手を振ったそうです
(意外とそういうところは雑なのね 笑)

クリスがステーションにつくと、ステーションでの作業は放棄されていて
科学者のスナウトとサルトリウスは自室に籠もったまま
かわりにいるはずのない少女を見ます
サルトリウスの部屋からは小人が走り出ようとしてサルトリウスに引き戻され
クリスの友人だったギバリャンは彼にビデオメッセージを残して自殺
そのビデオにはさきほどの少女の姿が映っていました

スナウトは少女たちのことを「お客さん」と呼び
(知的生命体だと思われる)ソラリスがその人の
(最も痛ましく恥ずべき)記憶を具現化したものだと説明します
その現象はソラリスにX線を放射してからはじまり
ギバリャンは「お客さん」の存在に耐えられなくなり自殺
「お客さん」を消そうと考えていて
スナウトはサルトリウスのむやみな対策(核による攻撃)を非難
阻止しようとしていました

翌朝、クリスが眠っている部屋に死んだはずの妻ハリーが現れます
腕には彼女が自殺したときの注射の跡
クリスにとって最も痛ましい過去はハリーの死だったのです
クリスは彼女を小型ロケットに乗せ発射させて追い払いますが
翌日ハリーは再びクリスの目の前に現れ、クリスとベッドを共にします

「お客さん」は寝ているあいだに記憶を読み取り実体化
最初は見た目が妻のハリーでも、ただのコピーでしたが
日に日に学習して、人間らしい能力を身につけていきます
スナウトは「本物の妻ではない」と警告しますが
クリスは彼女を本気で愛するようになり
このままここで彼女と暮らしてもいいと望むようになります

一方のハリーもかって自殺したハリーと同じように悩むようになり
(クリスの記憶から学習した裏切りや、嫁姑問題や、喧嘩のせいで)
ついには液体酸素を飲んで自殺してしまいます
凍てついたハリーを抱きかかえ悲しむクリスですが
スナウトが「もうすぐだ」と言うと、ハリーは息を吹き返します

このハリーの蘇生(と、ふたりの無重力)がいちばん美しく
見ごたえあるシーンで(笑)
なんとハリーを演じたナターリヤ・ボンダルチュクは
あの「戦争と平和」のセルゲイ・ボンダルチュク監督の長女(当時22歳)ということ
もしかしてこの映画が成り立っているのは彼女のおかげかもしれません

人間としては死ねないと悟ったハリーは
スナウトとサルトリウスに自分のことを破壊してくれと頼みます
そこでスナウトとサルトリウスは実験として
クリスの脳波で変調したX線をソラリスの海に送ると
「お客さん」の訪問を阻止することに成功
かわりにソラリスの海には奇妙な島々が現れたのでした

クリスは死んだ母親が自分の腕を洗ってくれる夢を見ていました
目が覚めるとハリーは消え「別れの道を選んだ」と書かれた置き手紙があり

クリスが地球の実家に戻ると、家の(外ではなく)中で雨が降っていて
玄関から出てきた来た父親に抱きつくクリス
やがてカメラがゆっくり上空へ引いていくと
この場所がソラリスが(クリスの記憶に反応して)作った
小さな島のひとつであることがわかります

クリスは地球に戻るより
ソラリスに留まることを選んだということでしょうか
つまり現実よりソラリスが見せてくれる幻影を選んだということ
いつかハリーが再び現れることを願って・・
【解説】映画.COMより
ロシアの名匠アンドレイ・タルコフスキーが、ポーランドの作家スタニスワフ・レムの代表作「ソラリスの陽のもとに」を映画化した傑作SF。未知の生命体と接触し極限状態に置かれた人間の心理を独特な映像表現で描き、1972年・第25回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。海と雲に覆われ、生物の存在が確認されていない惑星ソラリス。科学者たちはソラリスの海に理性があると考え接触を図るが、失敗に終わる。宇宙ステーションは謎の混乱に陥り、地球との通信が途絶えてしまう。心理学者クリスが原因究明のため送り込まれるが、友人の物理学者は既に自殺しており、残る2人の科学者も怯えきっていた。やがてクリスの前に、数年前に自殺した妻が姿を現す。
1972年製作/165分/ソ連
原題または英題:Solaris
配給:日本海映画