
「Thanks 蓮實重彦先生」 (エンドクレジットより)
カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞しています
原題の「Yi Yi: A One and a Two」は、ピンイン(音声記号)の「イーイー」と
”A One and a Two”は「ひとりずつ」「次から次へ」のような意味だそうですが
監督のヤンは「人生で起きるいくつかのことは算数の1+2と同じくらい簡単だ」と解説
物語は台北に住む簡易(ジアン)一家のひと夏の出来事で
結婚式に始まり葬式に終わります
同じ家族でもわかりあえない、あくまで個々であるという
小津安二郎の「東京物語」をリスペクトしていることがわかります
(東京や熱海まで出てきますし 笑)
ジョン・カサヴェテスやロバート・アルトマンの影響も感じます
そんな一家を冷静にかつ客観的に
名探偵の如き見つめているのが8歳になる少年ヤンヤン
ヤンヤンは人間は自分の半分しか見えていないと
父親からもらったカメラで、自分では見ることのできない
「後ろ姿」を撮影して回るようになり
もうひとつの自分の本当の姿を大人に突きつけるというもの

でも主人公はヤンヤンではなく(笑)
ヤンヤンの父親でジアン家の主人NJ
仲間とIT企業を共同経営していて、台北の高級マンションに暮らし
BMWに乗ってることから裕福であることがわかります
妻ミンミンの弟アディの結婚式があり
新婦のシャオイェンはすでにお腹が大きい
式の最中、祖母(ミンミンの母)の体調が悪くなり
その原因を(アディの恋人だった)ユンユン は
結婚相手が自分でなかったせいだと、騒ぎをおこしてしまいます

ヤンヤンは(小柄なせいで)女の子たちから虐められていて
NJは式場の外にあるマクドナルドにヤンヤンを食事に連れて行きます
その帰り(20年以上前に別れた元カノの)シェリーとばったり出会い
彼女はアメリカ人と結婚し、今はシカゴに住んでいるといいます
「電話して」とNJに名刺を渡すと(やってきた友人にも同じように名刺を渡す)
NJに「ずっと待っていたのに、何故来なかったの?」と囁き去っていきます

披露宴の後、帰宅した祖母が(交通事故か脳卒中のどちらかで)
ゴミ捨て場で倒れていて、病院に運ばれたものの昏睡状態
医師は話しかけることで意識が戻る場合もあると
ミンミンは家族で交代で祖母に話しかけることを提案します
しかしヤンヤンはそのことを拒否
ミンミンは怒り、代わりにNJが祖母に語りかけます
ヤンヤン祖母に語りかけるのは、祖母のためじゃない
母親自身が(良い家族のふりをして)満足したいだけなのだと
わかっていたのでしょうね

ヤンヤンの姉で高校生のティンティンは
祖母が倒れた原因が自分にあるのではないかと
(ゴミ出しを忘れ、代わりにゴミを置きに行って事故に遭ったのではないか)
誰にも言えず密かに悩み思い込んでいました
もし赦してくれるなら目を覚ましてと祖母に語ります
同じ頃、隣に引っ越してきた同じ年でチェロ奏者のリーリーと仲良くなり
(母子家庭で母親は大手銀行の重役)一緒に過ごすようになります
リーリーには(楽器店でバイトしている)ファティという恋人がいて
ティンティンはふたりの関係を羨ましく思っていました

だけどリーリーはファティが待ち合わせ場所のファストフード店に来なかったことで
そこで知り合った兵役中の男性と付き合いはじめたようで
リーリーと連絡が取れなくなったファティがプチストーカー化
マンションの前でリーリーを待ち伏せして
ティンティンに手紙を渡して欲しいと頼むようになります
リーリーの母親も男をすぐにマンションの部屋連れ込むような女性で
夜になると痴話喧嘩が近隣まで聞こえる始末
朝になりエレベーターで一緒になったヤンヤンが
(男に殴られた)リーリーの母親の顔を覗き込むと、失礼だとたしなめるNJ

ある日リーリーが帰宅すると、彼女の学校の英語の担任が裸で現れ
母親を責めるリーリー(リーリーの好きな先生だったようだ)
それらの様子を全て目撃してしまうティンティン
ファティからリーリーに渡す手紙を断るようになると
ファティはリーリーではなく「君にだ」とティンティンにラブレターを渡します
よほど文才があるのでしょうか(笑)
ファティからのデートの誘いに(いつもは公私ともに制服姿なのに)
頑張ってお洒落をしようとします

2度目のデートに出かけようとしたとき
リーリーが「ファティと付き合ってるの?」と尋ねます
「ただの友達」と答えるティンティン
チェロのコンサート(ファティがリーリーを忘れられないことがわかる)のあと
ラブホテルに入るふたり
しかしファティはティンティンを抱くことができず
彼女をホテルの部屋におきざりにして消えてしまいます
ひとり夜道を歩いて帰るティンティン
(こんな男と寝なくて正解だったけどせめて送っていけよ、って話よね)

ヤンヤンが学校で風船を膨らませ遊んでいると
(叔父さんのデキ婚で男の子たちが性に目覚めてしまう)
「コンドームを持ってきている生徒がいる」と
担任の先生から容疑をかけられてしまうヤンヤン
ポケットから出てきたのは風船でしかありませんでしたが
この常に竹刀を持った先生、お気に入りの女生徒たちを集めては
コカ・コーラを与えて風紀委員みたいなことをやらせていて
気に入らない生徒の虐めに加担するような、とんでもないイヤなやつ

でもヤンヤンはそのなかのひとり、背の高い女の子が好きなんですね
いつも目で追いかけてしまいます
彼女がプールで泳いでいるを見ると
洗面所に水を溜めてどれだけ息を止めれるか練習したり
誰もいないプールに服のまま飛び込んだりします
(人間の感情とか水とか、形はないけれど存在するものに対する興味)
ヤンヤンが友だちと竹刀の先生に水風船を投げたあと
視聴覚教室に逃げ込むと、その女の子も入ってきて
ドアにスカートがひっかかり白いパンティと長い脚が見えてしまいます
ヤンヤンは授業で流れるビデオではなく彼女の横顔だけを見つめていました

デキ婚したアディは借金が原因でシャオイェンに追い出され
元カノのユンユンのアパートに転がり込み助けを求めます
さらにアディは儲け話で騙され、出費した男に夜逃げされていました
こういうとき頼りになるのが、やはり長い付き合いのユンユン
で、夜のほうまでご奉仕してしまうという有様
だけどシャオイェンが出産し帰宅を許されたアディは
我が子の可愛さにもうメロメロ
つまりアディは2度(デキ婚と妻の出産で)ユンユンを捨てたわけです
これを許せる女がいるでしょうか

アディとシャオイェンの出産祝いのパーティにやって来たユンユン
当然シャオイェンは怒り、アディの友達は共通の友人であるユンユンを味方します
ユンユンの仲間と、シャオイェンの親族が喧嘩になり
シャオイェンの父親は娘と孫を実家に連れ戻すことを宣言します
遅れてやってきたNJに送られ
(妻は資産家らしい)立派なアパートに戻ったアディはひとり落ち込みます
しばらくしてシャオイェンが帰ってくりと
ガスの臭いが充満し、浴室ではアディが倒れていました
自殺したのかと思いましたが、そうではなく
窓を締め切った状態で給湯器の不完全燃焼をおこしてしまい失神
アディはシャオイェンのおかげで命拾いし
シャオイェンもアディへの愛を確信したのでした

ミンミンは昏睡状態の母親に毎日同じ事しか話していないと悩んだ末
新興宗教の高僧を頼り、山(修業所)に籠る決意をします
NJは「看護師に新聞の新しい記事を読んでもらうよう頼む」と
(看護師より新しい話題がないと悩むミンミンに教えてやれよ)
妻の申し出を快く引き受けます
出家に伴い「お布施」をもらいに来るミンミンの同僚と高僧
そちらもなんの疑いも持たず、小切手で快くお布施を渡すNJ
(妻が家を留守にすることが、ありがたいとしか思えない 笑)

NJの経営する会社ではハード事業(パソコンの販売)が
競争の激化で衰退し倒産危機
そこでソフト事業(ゲーム)に乗り出そうと
日本人のカリスマゲームデザイナー、大田(イッセー尾形)を台北に呼び
新しいゲームの開発の交渉(酒場での接待)をすることになりますが
経営側のひとりが、大田のゲームのコピー会社の小田にしたほうが
安く済んでいいと提案
NJは大田との取り引きをいったん諦めるわけですが

そこに大田のゲームなら金を出すという自称女性運動家が現れ
大田と契約するため急遽日本に出張することになったNJ
NJは(妻の不在をいいことに)シカゴのシェリーの留守番に伝言を残し
日本で再会します
事情を察した太田のはからいで、NJとシェリーはともに過ごすものの
NJにシェリーの求愛を正面から受け入れる勇気はありませんでした
一緒に行った熱海のホテルの部屋も別
かって彼女の前から消えてしまった理由を
「自分以外のものに指図される人生はみじめだった」のだと教えます
彼女や彼女の家族から、卒業後は(安定した生活のため)
エンジニアになってほしいという希望
結婚へと曳かれたレール、プレッシャー

そんな束縛から逃げたのに、結局は君の言う通りエンジニアになった
だけど君もアメリカ人の実業家と結婚して幸せになった
これでよかったのだと
でも「愛したのは君だけだ」
朝食のとき迎えに来ると、ホテルの彼女の部屋の前で約束し
NJは太田と最後の契約に向かいます

そこで太田はNJにトランプで手品を披露
なぜ数字を当てることができるのかNJが聞くと
太田は種も仕掛けもない、全てのカードを暗記しているからだと答えます
つまりNJと契約してもいいと思っているのは
NJが(種も仕掛けもない)正直な人間だと信用しているから、だと

翌朝シェリーの部屋に向かうと
清掃スタッフが「チェックアウト」したと伝えます
ロビーに電話で確認すると昨夜のうちにシェリーはチェックアウトしていて
続けざまに会社から電話が入ると
女性運動家のスポンサーが小田と(女性でEカップだったため)契約したので
太田との契約は適当に破棄して台北に戻ってくるよう言います
「お前らに誇りはないのか!」と電話を叩き切るNJ

ファティがリーリーを自転車の後ろに乗せ出かけるを見るティンティン
ティンティンと別れた後ファティとリーリーはヨリを戻したことがわかります
マンションの前でファティを見たティンティンは
ただ(自分のことは)「気にしないで」と伝えただけだったのに
イライラしたファティから物凄い勢いで罵倒されてしまいます
ショックを受けたティンティンが相談できるのは意識のない祖母だけでした

それから間もなくして、マンションの入り口に救急車やパトカーが集まり
ティンティンは警察に呼ばれ、リーリーについて質問を受けていました
何も知らないと答えるティンティン
テレビでは英語教師が刺殺されたというニュース
教師はマンションに住む女子生徒とその母親の両方と関係を持ち
女子生徒の恋人が殺人の容疑者として逮捕されたいいます
(台湾では未成年でも実名で放送されるのかな)
警察から戻ったティンティンが祖母の部屋に向かうと
祖母は起き上がり元気になっていて
折っていてた折り紙の蝶をティンティンに渡します
祖母に赦してもらえたと、これで安心して眠れると
祖母の膝で深い眠りにつくティンティン
目が覚めると自分のベッドの上で
部屋を出ると医師が祖母の逝去を伝えていました

母の死の知らせを受け葬儀のため戻ったミンミンは
宗教は救いにならなかったことをNJに伝え
NJも若いころに戻ってやり直すチャンスがあったが
そうならなかったことを打ち明けます
「人生は一度きりでいい、やり直す必要はない」 のだと
葬儀のあと、NJの同僚は小田のゲームはやはりクソゲーだった
だけど小田は女性運動家の愛人になれたのでもうけものだと笑い
(品質が悪くとも女性運動家から会社に金が入ったのだろう)
NJに会社に戻ってほしいと頼みますが、NJは断ります

ヤン・ヤンは母親に「おばあちゃんに話したい」と頼み
ノートに書いた作文の朗読をはじめます
僕はまだ分からないことだらけ
おばあちゃんがどこへ行ったのか見つけたい
知らないことを人々に伝え、見えないものを見せたい
生まれたばかりのいとこ(赤ちゃん)がおばあちゃんのことを思い出させる
おばあちゃんはいつも「年だから」と言っていた
だから僕も赤ちゃんに「年だから」と言たいのだと

拝金主義、利己主義、占いや宗教依存・・
ヤンヤンから見た大人の不思議(漢民族系のアイデンティティ)を
次の世代に知らしめたいという願望
それは大人の自分勝手への批判でしかないのですが(笑)
母はヤンヤンの立派なスピーチに涙するのでした
【解説】映画.COMより
「牯嶺街少年殺人事件」「カップルズ」などで知られる台湾ニューシネマの名匠エドワード・ヤンが、台北に暮らす5人家族にそれぞれ訪れる人生の変化を静かに見つめ、2000年・第53回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した家族ドラマ。
小学生のヤンヤンは、コンピュータ会社を経営する父NJと母ミンミン、高校生の姉ティンティン、優しい祖母と一緒に、高級マンションで何不自由ない生活を送っている。幸せを絵に描いたような家族だったが、母の弟の結婚式を境にさまざまなトラブルに見舞われる。祖母は脳卒中で昏睡状態となり、父は初恋の人に再会して心揺らぎ、母は新興宗教に救いを求める。父は倒産の危機に陥った会社の経営を立て直すため、天才的ゲームデザイナーの大田と契約するため日本へ旅立つ。一方、姉は隣人リーリーのボーイフレンドと付き合いはじめるが……。
イッセー尾形がゲームデザイナーの大田役で出演。ヤン監督は2007年に逝去したため、彼が最後に完成させた長編映画となった。2025年・第78回カンヌ国際映画祭カンヌクラシック部門のオープニング作品として4Kレストア版が上映された。
2000年製作/173分/G/台湾・日本合作
原題または英題:Yi yi (A One and a Two)
配給:ポニーキャニオン

































































































