管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

プロカウンセラーがやさしく教える 人間関係に役立つ傾聴 古宮昇 著

1.はじめに

古宮さんの著書は以下に続き2冊目です。

bookreviews.hatenadiary.com

産業カウンセラーの養成講座が終了し、今は受講生同士で傾聴力をつけるために自主勉協会を実施中です。

本書は今後の受験に向けて「傾聴とは何か」を改めて学ぶ意味で購入しました。

2.内容

(1)傾聴で人間関係を育む

  • 妻が寂しそうな様子で、「あなた、今日も遅いの?」と言ったのは、帰宅が遅くなるか、何時になるかについて客観的な情報がほしいわけではなく、寂しい気持ちを表現している。傾聴とは、話を聴くことを通して相手の気持ちを理解し大切にする営み
  • 傾聴によって癒しと成長がもたされているとき、その人間関係には3つの特徴がある。ただし、これらの特徴は理想であって、実際には3つの特徴がいつも完璧に存在する人間関係はあり得ない
  1. 聴き手は話し手のことをそのまま人として大切に感じ、尊重し、受け入れていること
  2. 聴き手は話し手が感じていることや考えていることをなるべく話し手の身になって共感的に理解していること
  3. 聴き手自身が人として成長を続けていること
  • 聴き手が話し手を前向きに励ましたり、否定的な考え方を肯定的なものに変えようとしたりするときには、苦しみへの共感的な理解が欠けている。傾聴に必要なのは、話し手の苦しみ、辛さ、分かってはいてもどうしようもない絶望感を、ひしひし、ありあり、いきいきと想像して感じながら一緒にいること。
  • 聴き手が話し手のことを共感的に理解しようとするとき、自分の見方や価値観からは離れる。自分の持つ「良い」「悪い」「べき」などの個人的な判断や裁きから一旦離れ、相手の経験をそのまま受け入れ、その人の経験を自分も生きる。それは、自分が信じていることを一時的に取り払うこと。それができるようになるためには、聴き手は自分自身という存在について安定感を持っていることが必要。
  • アドバイスをする本当の動機は、「この人の苦しみを聴いていると自分が苦しくなるから、苦しみをこれ以上話させないようにした」ということ。しかし、そんな考えは薄情に思えるので、「アドバイスをした」と自分に嘘をつく。そのときカウンセラーの心には無意識の嘘がある。自分の本当の心の動きと、「アドバイスをした」という自己認識の間にはズレがある。

(2)傾聴のしかた

  • 人の話を聞いていると、私たちは相手から意見を求められてもいないのに、自分の意見や考えを言いたくなるもの。話し手の言うことを、こちらの尺度で「それは良い」「それは悪い」と判断するのではなく、できるだけ相手の身になって耳を傾けるよう努めるのが傾聴。傾聴するとき、自分の判断は横に置き、できるだけ話し手の身を想像し、話し手が話していることを、できるだけ自分のことのように想像しながら聴くよう努力する。
  • ロジャーズは、技法にこだわると「真に話し手と一緒にいるのではなく、機械的になってしまう」と述べ、カウンセリング関係の中で聴き手が「人として”いる”ことが大切であり、「カウンセリング中に何を言うかは大切だが、カウンセリング関係の中での聴き手のあり方のほうがずっと重要だ」と話している。
  • 傾聴では、話し手が先生。話し手の考えや感情を教えてもらう。そのとき、話し手のことを分かっているつもりになることをなるべく避け、語っている内容が、話し手にとってどういうものかを教えてもらおう、理解しようという意図で耳を傾けよう。
  • 話し手の言葉にとらわれるのではなく、「話し手は何を分かってほしいんだろう」と、話し手が伝えたい中心的な事柄を理解しようという気持ちで聴き、大切なところだけを短く繰り返すことができれば理想的。
  • 応答するときにはくれぐれも、話し手が感じている感情をなるべく自分のことのように想像して感じながら応答しよう。それをせず、いくら上手に言葉を返しても、傾聴にはならない。感情に応答するときには、感情の強さを話し手に合わせることが大切。

(3)日常で役立つ!会話例から学ぶ傾聴

  • 話し手は明らかに、何があったかを話したい様子なので、それに応えて「何があったか、教えてもらっていいですか?」と尋ねている。このように話し手の心の動きに沿った応答をすると話し手は話しやすくなる。
  • あなたは友だちが伝えたいことを受け止めて返すのではなく、あなたが知りたいことを尋ねたり、あなたの意見を言ったりしている。これでは分かり合える対話にはならない。
  • 相手を責めるのではなく、自分の気持ちを「私は悲しい」と素直に言葉にする。このように、相手のことをとやかく言うのではなく、自分の今の感情をを言葉にすることは、互いに分かり合って関係性を育てるコミュニケーションにはとても大切なこと。
  • あなたにはおかしいとか間違いだと思えることでも、相手にとっては正しい事実。だから話し手を理解するためには、相手の言い分に1%でも正しさを見つけてそれを認めることが有益。
  • 会話の場面では、相手に質問をして相手のことを知ろうとすることがとても大切。ただしそのとき、尋問調にならないように気を付ける。そのためにできることとして、相手の言葉をまず繰り返してから質問をすることが効果的

3.教訓

人から話しかけられたり相談を受けたりすると、つい自分の意見を口にしてしまうことがあります。たまたま相手の考えと一致すれば「同じ意見でよかった」と思ってもらえるかもしれません。けれども、そうしたケースはむしろ稀です。多くの場合、相手は「なぜそう思っているのかを話したい」「自分の気持ちを聞いてほしい」と感じているだけで、必ずしも意見やアドバイスを求めているわけではありません。
だからこそ、私は会話の際に「この人はなぜこの話をしているのか」「その先に伝えたいことは何か」を意識するよう心がけています。例えば先日、同僚から「最近、パソコンの調子が悪いんだよね」と声をかけられました。これは単なる事実の共有ではなく、「困っている」「設定や操作を一緒に確認してほしい」といった意図が込められているはずです。そこで私は「調子が悪いんですね」と事実を繰り返すのではなく、「それは困りますね」と応答しました。すると相手から「ちょっと見てくれる?」と自然に続き、スムーズな対話へとつながりました。
本書の第3章では、職場・友人・家族・初対面といった場面ごとに、悪い例と良い例を具体的に示しながら会話のポイントを解説しています。帯にある通り、「日常で使える傾聴のコツ」を学べる実践的な良書だと感じました。