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「旅のおわり世界のはじまり」 2019

旅のおわり世界のはじまり

★★★☆☆

 

あらすじ

 ウズベキスタンにバラエティ番組の収録にやってきた女性リポーターは、スタッフらと共に様々なロケ撮影に臨む。

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 前田敦子主演、染谷将太、柄本時生、加瀬亮ら出演、黒沢清監督。120分。

 

感想

 ウズベキスタンで長期ロケを行う撮影班の様子が描かれていく。印象的なのは彼らに笑顔がなく、雑談的な会話もないことだ。良く言えばプロフェッショナル、悪く言えば冷めていて活気がない。淡々と仕事をこなしている。仕事だから当然と言えば当然なのかもしれないが、彼らに異国の地に対する関心は全くうかがえない。

 

 女性リポーターである主人公も同様で、撮影中こそ笑顔を見せるものの、それ以外では不愛想だ。スタッフとは業務上の会話しかせず、取材相手にも冷淡で、決して楽しそうには見えない。

 

 ウズベキスタンには全く興味がないのかなと思っていたので、ロケが終わりホテルに戻ってから、彼女がひとりで街に出かけていくのは意外だった。しかし、ひとりでバスに乗り、繁華街にやってきたのにもかかわらず、話しかけてくる人をすべて拒み、小さな売店でどこにでもありそうな食料を手に入れて帰ってくるだけだった。

 

 

 暗くなった町の人気のない路地で、男たちがたむろする場所に遭遇してしまい、主人公が小走りで通り抜けるシーンがあったが、映画の中には旅先でありがちな冷や冷やするシーンが散りばめられている。急に警備員に取り囲まれたり、店の人にしつこく付きまとわれたりする。冒頭の、主人公が見知らぬ男に言われるままに、そのバイクに乗ってしまうのもそうだ。そのまま拉致される可能性だってあった。

 

 一番気になったのは、主人公が幹線道路のような大きな道を無理やり徒歩で横切る場面が何度かあったことだ。海外では歩行者が信号を無視したり、横断歩道のない場所を渡るのは珍しいことではないが、周囲の人が誰もやっていないところで彼女はやっている。せめて現地の人に合わせないと危険だろうと怖かった。これは彼女が全く周囲を見ていないことを示しているのだろう。

 

 またロケ撮影においてもハラハラする場面が多い。取材相手の好意を邪険に扱ったり、体調を崩しそうな遊園地の危険なアトラクションに何度も続けて乗ったり、相手を侮辱するようにとにかく金で解決しようとしたりしている。いつトラブルや事故が起きてもおかしくない。

 

 我々の何でもないような日常は、そんな危ういバランスの上で成り立っていることを教えてくれる。重大事故の背景にはいくつもの「ヒヤリ」と「ハッと」があるという「ヒヤリハットの法則」だ。そしてそんな場面は、時にユーモラスに、時にホラーに映る。

 

 終盤に主人公が警察に捕まり、まさかの説教を受けていたが、主人公らはウズベキスタンに興味がないのではなく、単に心を閉じているだけだということが分かる。心を閉じているから外に関心が向かないのだろう。スタッフらも食堂のおばさんが善意で出してくれた食事を皆で食べたりしていたので、決して悪い人間ではない。

 

 異国の地における主人公らの、笑えるような、怖いような言動を楽しむ映画だ。ラストのヤギを見つけるオチも、突然の歌も決して悪くはなかったのだが、上映時間が2時間は長かった。終盤に差し掛かるあたりでダレてしまい、集中力が途切れそうになった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒沢清

 

出演 前田敦子/染谷将太/柄本時生/アディズ・ラジャボフ

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旅のおわり世界のはじまり - Wikipedia

旅のおわり世界のはじまり | ABEMA

 

 

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