★★★☆☆
あらすじ
文化大革命中の中国の小さな町。映画の次の上映先を確かめていた男は、幼い子供がフィルムを盗むのを目撃する。
チャン・イーモウ監督。中国映画。103分。
感想
盗んだ映画のフィルムがきっかけで芽生える、男と少女の交流を描く物語だ。序盤は、なぜかフィルムを盗もうとする少女となぜか執拗に取り戻そうとする主人公、二人のやりとりが、どこかユーモラスに繰り広げられる。
中でもヒッチハイクした車の中で、運転手を味方につけるため、両者が共に嘘の身の上話をする場面は面白かった。運転手が素直で、どちらの話も信じて少女を叱ったり、主人公を非難したりする。
また、次の上映先にフィルムを届けようとする主人公のあとを、少女がトボトボと付いて行くシーンも印象深い。子供が大人のあとをついて行くシーンを昔はよく見たような気がするが、最近はめっきり見かけなくなったなと思ったりした。
やがて二人は、次に映画が上映される町にたどり着く。ここで両者がフィルムにこだわる理由が明らかになる。互いの理由に納得した二人は、少し心を許すようになる。ちょっとした協力関係が出来上がる。
当時は何か月かに一回やってくる映画が唯一の娯楽だったようで、町の人々の映画に対する熱狂ぶりがすごい。上映を待ちきれずに集まってきたり、映写技師にいい席を頼んだりと、皆がそわそわと浮足立っているのがよく分かる。
そんな映画への愛を描いた映画でもある。主人公と少女の序盤のやりとりは古い映画のオマージュのようだったし、皆でフィルムを修復するシーンも映画をどうしても見たい皆の熱い気持ちが表れている。そして人が溢れるほどの熱気に満ちた会場で、映画のスクリーンを夢中で見つめる観客の様子を映し出す映像にもグッと来た。スクリーンの裏側にまで観客がいることに驚かされる。
映写技師の優しい気遣いもあり、心温まる人情噺として終わるのかと思いきや、厳しい現実が立ちはだかる。ここには文化大革命に対する批判的なまなざしが感じられた。幼い子供を働かせることや些細な喧嘩で矯正施設に入れること、平等なはずなのに有力者がいてコネが効くことなど、社会のゆがみや矛盾が示されている。善良そうな映写技師を密告に走らせたのもそれだった。
途中まではかなり良い出来で心を掴まれるが、終盤に失速してしまう。話のまとめ方や終わらせ方がいまいちなのが残念だ。それから、町のすぐ近くにガチの砂漠があるなんてと、広大な中国のエグさを実感する映画でもある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 チャン・イーモウ
脚本 ヅォウ・ジンジー
出演 チャン・イー/リウ・ハオツン/ファン・ウェイ
音楽 ラオ・ツァイ
