★★★★☆
あらすじ
雑誌編集者の男は、若いパーソナルトレーナーの男と付き合い始める。
鈴木亮平、宮沢氷魚ら出演。120分。
感想
若い男と付き合い始めた男が主人公だ。苦労する恋人の為に何かと援助をする。
主人公は、ファッション雑誌の編集者で、高級ブランドを身につけ、こだわりの家具や絵画で調えたマンションで暮らす男だ。自分の欲しいものややりたいことがちゃんと分かっていて、それを手に入れ、実現するために、現実的、直線的に生きてきたのだろう。自分が何をやりたいのかすら分からず、世間に流されまくっている人ばかりの中で、それだけでも大したものだ。
そんな主人公は、恋人に対しても自分のやりたいことをやっていく。何かと手土産を持たせ、お金を渡して夜の仕事を辞めさせる。相手を自分の思うようにしようとしている点では、確かにエゴイスティックだが、相手のためを思っているので利他的でもある。嘘にも良い嘘と悪い嘘があるように、エゴにも2種類あるのだろう。
序盤から主人公と恋人の激しい絡みも含めたイチャイチャが続き、これをずっと見させられるのかと思っていたら、中盤に突如、急展開が起きて驚かされた。ここから物語の質が変わる。
ただ、それでも主人公のエゴは変わらない。やりたいようにやろうとする。恋人の母親にお金を受け取らせようとするくだりは、受け取らなければ殺すくらいの押しの強さがあって、ちょっと面白かった。ここにエゴの怖さがある。
たとえ利他的であってもエゴには、自分のやることは相手に喜んでもらえるはずだと思い込んでいる傲慢さがある。だから時と場所を間違えれば、パワハラにもモラハラにもなりえるし、恋愛においてもストーカーになったり、修羅場を招いたりする。それは常に心に留めておかなければならないことだろう。
しかしそれでも、主人公の想いが伝わってくる恋人の母親とのやりとりには胸が熱くなる。もちろん、彼が若くして母親を亡くしていることも影響しているのだろう。「愛が分からない」とボヤく彼に、恋人の母親がかける言葉も感動的だ。
恋人の家に行くときのファッション特集を鼻で笑いながら、いざ自分もその状況になれば同じようにファッションを変えていたように、また、かつての同級生を完全無視していたように、普段なら主人公は他者を気にかけないエゴイスティックな嫌な奴かもしれない。だが、特別な誰かのためなら何でもできてしまう。
愛とはそもそも独善的なものだが、それを気にしすぎるとプレゼントさえできなくなってしまうわけで、どうなったら愛で、どうなったらエゴなのか、いろいろと考えてしまう映画だ。いつものように鈴木亮平の演技も素晴らしい。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 松永大司
脚本 狗飼恭子
出演 鈴木亮平/宮沢氷魚/中村優子/和田庵/ドリアン・ロロブリジーダ/阿川佐和子
音楽 世武裕子
