Billion Hits!

ダウンロード売上、ストリーミング再生回数、Billboard JAPAN Hot 100などのデータを通じて国内の楽曲人気動向を把握するブログ

2011年Billboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧

この記事では2011年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうち、オリコンと1位が異なった全12週をピックアップして回顧する。

 

この一年間の週間1位変遷表は以下のとおり。回顧対象週には色をつけている。

 

 

 

Billboard JAPAN Hot 100とは、「社会への浸透度を計る」ことを明確に理念に掲げ、複数の要素も加味して作成されている総合チャートである。2011年の集計対象はCD売上ラジオエアプレイiTunesダウンロード売上の3指標であった。

 

しかし、長い歴史を持つオリコンが既に権威と知名度を確立していた中で発足した後発サービスであったこともあって、当時のBillboard JAPANは権威と知名度をほとんど有していなかった。

 

2006年以降は新たな音楽の聴き方としてダウンロードでの購入が無視できない規模に普及しており、RIAJのダウンロード認定もこの年より発足している。よって、ヒットチャートであれば、2006年以降はCD売上だけでなくダウンロード売上も集計すべきだったのだが、オリコンはそれを一向に開始しなかった。結果、この年以降10年以上に渡り「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」が生じることとなってしまった。

 

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2006年以降は、CD売上チャートだけを見ていても、ヒットの全貌を把握することはできないのであるしかし結局、全国網羅的にダウンロード売上を集計し指数も公開するようなチャートは当時誰も作成しなかったため、2006年以降はヒットチャートが存在せず、オリコンがヒットチャートとして誤使用される時期が長く続いた。

 

そのような中でも、Billboard JAPAN Hot 100をオリコンと比較しながら振り返ることにより、当時のヒット認識を少しでも多面的に捉え直すことは可能である。なぜなら、ダウンロードでの人気をiTunesやラジオエアプレイ指標によって捕捉することに成功しているケースがいくつか見られているためである。本記事ではこの違いに着目しながら振り返りを行っていく。

 

なお、一部の週においては、旧ジャニーズ問題に対する当ブログの対応に従い、解説を割愛している。

 

(2011年のBillboard JAPAN年間チャートは以下記事参照↓)

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1/26公開週1位 フレンチ・キス「If」

 

 

1/26公開週1位はフレンチ・キス「If」フレンチ・キスAKB48柏木由紀ら3人により結成された派生ユニットである。オリコンでは山下智久「はだかんぼー」が1位だったが、フレンチ・キスとの1位争いの劣勢を受けて週後半に緊急握手会を開催し逆転するという経緯だったため一部では炎上していた。ビルボードサウンドスキャン)では緊急握手会における売上を集計対象外としていたため逆転は起きず、フレンチ・キスがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

3/16公開週

  

 

4/6公開週1位 レディー・ガガ「ボーン・ディス・ウェイ」

 

 

4/6公開週1位はレディー・ガガ「ボーン・ディス・ウェイ」。洋楽史上3曲目のJAPAN Hot 100週間1位獲得となった。CD売上はマキシマム ザ ホルモン『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011~2011』が前週に続き2週連続1位となったが、東日本大震災の発生により多くの新作CDが発売延期となったことも影響しており、その売上は2万枚程度と多くなかったため、ラジオやiTunesの加点により総合ではレディー・ガガが逆転した。

 

「ボーン・ディス・ウェイ」は同名2ndオリジナルアルバムのリードトラック。楽曲は自らの生き様に自信を持つこと、そこに誰からの承認も必要ないことが力強く歌われており、前例のない表現を続けてきたレディー・ガガが歌うことによる説得力もあって全世界で大ヒットを記録。日本国内だけでもその人気は絶大なものとなり、フル配信100万ダウンロード*1を売り上げた。

 

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2011年末にはMステスーパーライブにも出演し、番組のトリを飾るなど、洋楽でありながら本曲は2011年屈指の大ヒット曲となった。年間でも2011年の3位を獲得している。


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4/13公開週1位 Mr.Children「かぞえうた」

 

 

4/13公開週1位はMr.Children「かぞえうた」東日本大震災の復興支援ソングとして急遽リリースされた配信限定シングルである。CD売上ではKARA「ジェットコースターラブ」が1位で、その売上は約11万枚と当時決して低くない水準だったが、Mr.Childrenが特にiTunesダウンロード売上で類稀な高水準を記録したことにより、CD売上加点のない曲がCD11万枚を売った曲を総合で逆転するという滅多にない大波乱の展開となった。「かぞえうた」は2011年のiTunes年間チャートでも4位に入っている。

 

5/4公開週1位 少女時代「MR.TAXI」

 

 

5/4公開週1位は少女時代「MR. TAXI」CD売上ではチャン・グンソク「Let me cry」が1位だったが、少女時代との差は2万枚程度と小さく、ラジオやiTunes指標の加点の差により総合では逆転が生じた。

 

「MR.TAXI」は少女時代にとってシングル表題曲では初の日本オリジナル楽曲。タクシードライバーを意識したセクシーな衣装と振り付け、サビにあえて入れた韓国語の歌詞のキャッチーさが大人気となり、フル配信100万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを突破する2011年屈指の大ヒット曲となった。

 

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5/11公開週1位 少女時代「MR.TAXI」

 

 

5/11公開週1位も少女時代「MR. TAXI」。前週に続き2週連続1位となった。CD売上ではぱすぽ☆「少女飛行」が1位だったが、少女時代との差は推定2万枚程度と小さく、ラジオやiTunes指標の加点の差により総合では逆転が生じた。

 

なおぱすぽ☆の売上は4万枚程度と推定されるが、本作は合計11種類の複数種販売が展開されており、サウンドスキャンを見ると4万枚の売上は約4,000人が11種類全てを購入したことによるものであることが分かる。この影響もあってか、本作はオリコンにおいて史上初めて週間1位の翌週100位圏外に転落する推移を記録した。CD売上週間1位の楽曲人気指標としての機能不全が露呈する結果となったが、Billboard JAPAN Hot 100ではCD以外の要素によって少女時代が1位となったため、このような事態は回避された。

 

6/8公開週1位 AKB48Everyday、カチューシャ

 

 

6/8公開週CD発売2週目AKB48Everyday、カチューシャが前週に続き2週連続1位を獲得した。CD売上ではB'z「Don't Wanna Lie」が1位だったが、AKB48との差は3万枚程度と小さく、ラジオやiTunes指標の加点の差により総合では逆転が生じた。

 

Everyday、カチューシャ」はメンバーがカチューシャと水着で踊るMVが人気となったこと等により、フル配信100万ダウンロード、着うた50万ダウンロードを突破する大ヒットとなった。ダウンロード販売には握手券等の購入特典が付属していなかったことから、これは楽曲人気相応の数字である。2011年屈指の大人気曲であることがこのデータから証明されており、当週の結果は楽曲人気上極めて妥当性が高い

 

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こうしてダウンロード指標で大人気を示していた「Everyday、カチューシャ」だが、当時はオリコンがダウンロード売上の集計を一向に開始しなかったことなどからその大人気は可視化されず、所謂AKB商法によって積み上げられた莫大なCD売上が不適切に注目を浴びる状況となっていた。当然、大量のCD売上枚数からは楽曲人気が読み取れないため、本当に人気なのか(=音楽チャート上位独走状態は適切な結果なのか)に関して疑問が噴出するという不健全な事態が生じることとなった。

 

この事態は、①特典商法による販促の影響力が大きくなったCD売上と楽曲人気が相関しなくなったこと、②オリコンに代表されるCD売上チャート発表者がその説明をしないまま、楽曲人気指標として機能していないチャート設計を維持し続けたこと、③オリコンに代わる総合楽曲人気チャートが国内に存在しなかったこと、以上三点によって引き起こされたものである。AKB商法が目立ちすぎたことにより実際の楽曲人気規模が適切に理解されずファンとファン以外の層との間で分断が加速、最新音楽文化の受容理解発展が阻害されたと考えれば、音楽チャートの責任は重大である。

 

そのような中でビルボードは新時代の楽曲人気チャートを目指すべく試行錯誤を重ねており、AKB商法に関しては、劇場盤集計対象外とすることでその影響力を幾分抑制する事に成功していた。加えて、ラジオやiTunesダウンロード売上というCD売上以外の指標からも一定程度の楽曲人気動向を拾うことができていた。

 

まだチャート設計上の課題は多く、楽曲人気チャートとしての合格点には達していなかったもの、CD売上だけのチャートと比べれば楽曲人気指標としての機能不全が緩和されており、ビルボードは既に当時国内で最も楽曲人気チャートに近い存在になっていたのである。当時まだほとんどビルボード知名度が普及していなかったことは残念であった。

 

劇場盤を集計対象に含めていたオリコンでは「Everyday、カチューシャ」の初週CD売上がMr.Children「名もなき詩」の歴代最多初動売上記録を塗り替える事態となった。しかし、同じ指標でも、中身が変質したのなら、時代横断的に比較しても、楽曲人気を考える上では何の意味も見出せない。2011年以降はCDシングル売上が楽曲人気指標として一切機能していないため、2011年以降の人気曲を語るうえでCDシングル売上データを用いることは不適切な行為である。AKB48の楽曲人気を語る際は特に注意が必要である。


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なおBillboard JAPAN Hot 100はオリコンと異なり○作"連続"1位記録という概念がない。総合楽曲チャートであるビルボードは、CDシングル表題曲だけでなく、アルバム曲やc/w曲など全楽曲がランクイン対象だからである。よってB'zが当週1位を逃したことにより何か途切れた記録はない。

 

CD売上しか集計していなかったオリコンではB'zの連続1位記録が継続したが、そもそもたった一度1位を逃しただけで途切れてしまうような記録がアーティスト人気持続指標として使用できるはずもなく、○作連続1位記録は運が良いというだけの話に過ぎない。アーティスト人気持続指標としては、"連続"ではなく"通算"1位記録を参照することが適切である。

 

ちなみに、例えCDシングル表題曲に限ったとしても、その全曲でBillboard JAPAN Hot 100首位を獲得しているアーティストはほとんどいない。2020年までに、B'zだけでなく、KinKi Kidsといった1位常連組も1位を逃したことがある。週間1位が必ず約束されているアーティストは存在しない。これが自然な音楽チャートの姿である。

 

7/27公開週1位 東方神起「Superstar」

 

 

7/27公開週1位は東方神起「Superstar」オリコンではNMB48絶滅黒髪少女が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では劇場盤の売上を集計対象外としていたためその売上は5万枚程度にしかならず、東方神起がCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

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9/14公開週

 

 

10/12公開週1位 back number「思い出せなくなるその日まで」

 

 

10/12公開週1位はback number「思い出せなくなるその日まで」CD売上ではYUI「Green a.live」が1位だったが、その売上は5万枚程度と多くなかったため、ラジオやiTunesの指標の加点差により総合ではback numberが逆転した。

 

「思い出せなくなるその日まで」はフル配信10万ダウンロードを記録しており、確かな人気曲である。「Green a.live」は10万ダウンロードに達していないため、楽曲人気指標として当週の結果は妥当である。

 

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この年にデビューしたback numberはこれが自身初のビルボード1位となった。2010年代後半以降になるにつれ人気は拡大していったが、この時点でも既に一定の人気を示していたことがデータに表れている。「思い出せなくなるその日」も過去に別れた女性が今でも好きだと歌う切ないラブバラードであり、back numberらしさ溢れる一曲になっている。


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10/26公開週1位 BUMP OF CHICKEN「ゼロ」

 

 

10/26公開週1位はBUMP OF CHICKEN「ゼロ」オリコンではNMB48オーマイガー!が1位だったが、ビルボードサウンドスキャン)では劇場盤の売上を集計対象外としていたためその売上は8万枚程度にしかならず、BUMP OF CHICKENがCD売上1位となり、そのまま総合でも1位となった。

 

11/30公開週1位 EXILE「あなたへ」

 

 

11/30公開週1位はEXILE「あなたへ」CD売上ではフレンチ・キス「最初のメール」が1位だったが、その差は数千枚程度と僅差だったため、ラジオやiTunesの加点の差で総合ではEXILEが1位となった。

 

この時期ダウンロードを中心に大人気曲を連発していたEXILEは「あなたへ」もフル配信25万ダウンロードを記録した。「最初のメール」は10万ダウンロードにも達していないため、楽曲人気指標として当週の結果は妥当である。「あなたへ」はEXILEが得意とするウィンターラブバラードとして期待に違わぬ確かな人気を獲得し、2011年冬のヒットシーンを彩った。

 

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まとめ

 

以上が2011年に公開されたBillboard JAPAN Hot 100週間チャートのうちオリコンと1位が異なる週の振り返りとなる。

 

オリコンはダウンロード売上の集計を一向に開始しなかったが、既にこの年はダウンロード売上の集計なしに楽曲人気を正確に把握することは不可能になっていた。オリコンはこの説明をせずにCD売上だけのチャートをヒットチャートとして世に提示し続け、多くの楽曲の人気を過大小にミスリードし続けた。

 

ビルボードも、まだ全国網羅的なダウンロード売上を集計対象にできていなかったものの、ラジオやiTunesダウンロード売上の指標で人気を拾うことで、CD売上だけのチャートよりは楽曲人気チャートに近い存在になっていた。

 

当時は知名度がなく、ほとんど注目されていなかったビルボードだが、2010年代後半になると知名度が高まり、楽曲人気指標としての権威を確立した。2011年の週間チャートも、最も楽曲人気指標に近い公式なチャートとして、今からでも押さえておきたいところである。

 

(次年2012年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧に続く↓)

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(前年2010年のBillboard JAPAN Hot 100週間チャート回顧は以下↓)

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*1:ダウンロード売上は日本レコード協会認定値。以下同様。