結束バンド「今、僕、アンダーグランドから」

 一昔前、アニメの主題歌というと、番組名や主たる登場人物の名前を連呼するのが普通でした(ex.機動戦士ガンダムサザエさん)。その後、アニメ自体との関連性の薄い楽曲を時のヒットメーカーに歌わせるものが出てくるようになりました(ex.るろうに剣心。オープニングではタイトル等連呼型、エンディングでは無関係型というのもおおいですね。ex.ど根性ガエルはじめ人間ギャートルズ)。今は、番組名や主たる登場人物の名前を連呼をさせず、独立した歌として普遍的な価値を確立しつつ、アニメの世界観を色濃く反映させた主題歌が多いですね。
 そういう現代型の主題歌を作らせたら、The Peggiesのギターボーカルである北澤ゆうほさんは天才的です。
 結束バンドの「今、僕、アンダーグラウンドから」は、映画版の「ぼっち・ざ・ろっく」のエンディングテーマのために北澤さんが書き下ろした一曲です。
 「ぼっち・ざ。ろっく」は、重度の人見知りでコミュ障の後藤ひとりが、「結束バンド」に半ば強制的に参加させられたことをきっかけに成長していく物語です。
 「ギターヒーロー」として演奏動画をアップロードして承認欲求を満たしつつも、後藤ひとりとしては、重度の人見知りのため、友だちが作れなかった状況を、Aメロの出だし「溢れる感情 託したように 掻き鳴らすレスポール/言えない、言えない、言えないんだ/だって美味くしゃべれない」という言葉でさらっと表現しています。このときは、「僕だけの願い事があるんだ」と考えていたわけです。「『みんなみたいに』そう思えば思うほど上手くいかない」と考えていたわけです。
 それが、結束バンドに参加したことで「星をひとつ見つけ」、「僕たち、と思える今日」、つまり、自分には仲間がいると思える現在が生まれたわけで、そんなことはそれまで「考えもしなかった」ことだったわけです。
 この、「ぼっち・ざ・ろっく」の基本コンセプトを、説明的にならず、一人称で語り上げられるって、天才と言うしかありません。
 もちろん、「ぼっち・ざ・ろっく」は、「けいおん」とは異なり、ライブハウスを主な舞台とするストーリーなので、主人公は、「アンダーグラウンド」=「狭くてくらい箱の中」=ライブハウスで主に活動します。彼女は、そこで「ボリュームもゲインも目一杯」あげて演奏することで、「歪な僕を愛してよ」と「心が叫」び、「誰か僕の声を聞いてよ」と願うのです(「ギターヒーロー」という匿名のキャラでは、がんがんギター動画流して承認欲求を満足させているのに、後藤ひとりとしては、初対面の人と目を合わせることすらできないわけで、まあ、歪ではあります。)。
 「ぼっち・ざ・ろっく」の主人公である後藤ひとり、そしてバンドで、メインボーカル以外を担当しているバンドマンの心情を描いた楽曲として、これ以上のものというのは、想定できないですね。