![]() ![]() 「佐渡ヶ嶽部屋」の取材(Click!)で久しぶりに福岡へ行く機会があり(九州巡業中だったため)、せっかくなので滞在を1日伸ばし、大分・別府を初めて訪れてみました。「べっぷ 野上本館」という旅館の貸切湯「光壽泉(こうじゅせん)」に東郷青児のモザイクタイル絵があしらわれた温泉があるということで以前から気になっており、社長の野上泰生氏にご連絡したところ見学させていただけることに! 別府出身の写真家・藤田洋三氏がデザイン・監修されたそうで、2003(平成15)年に完成したもの。野上氏によると、「別府は江戸時代より温泉地として発展し、明治や大正から現在まで続く温泉も多い。そこで、ちょうど旅館の貸切湯をつくりたいと思っていたタイミングでもあり、重層的に折りかさなる時をテーマに『刻の湯(ときのゆ)プロジェクト』としてこの温泉づくりに着手しました」とのことでした。もともと、京都・鞍馬口にある和製マジョリカタイルに彩られた「船岡温泉」がお好きだったそうで、江戸時代〜平成までのさまざまな時代のタイルを使うことに。 藤田氏が集めていた江戸、明治、大正のアンティークタイル(九谷焼など職人技でつくられたもの)、高度成長期に公団住宅でよく使われていた公団タイル、平成期に開発された焼かないエコタイルなども。「野上本館」でかつて修学旅行生生向けに使っていた食器のかけらなども一部、混じっているとか。まさに、一片一片に思い出が刻まれています。 当時、東郷が原画を提供したモザイクタイル画がいくつかあったそうで、この図案はタイルメーカーのカタログから野上氏のお母様が選んだものとか。なんともいえないレトロで妖しい雰囲気があり、メディアに取り上げられることも多いそうです。下は脱衣所の鏡に映ったカット。 ![]() 別府で宿泊した温泉宿「山田別荘」は、古い建物を今に生かすお手本にしたい宿。戦前の1930(昭和5)年に建てられた木造建築で、内部は和洋折衷。現女将・山田るみさんの曾おじいさんが、寒い北海道暮らしで体調を崩した妻のために温暖な別府に別荘として建てたのだそう。到着するとまず通されるのが、かつては要人をもてなしたという、この光あふれるサロン。お茶を飲んでひと休みした後、ここでゆかたを選ぶなどして過ごしました。 ![]() ![]() さりげない草花のあしらい、アンティークの家具、そして民藝の布やかごなど、日本に昔からあるいいものが空間とみごとに調和しており、いつか古い家に暮らすことがあったらこんなふうに暮らしたいな……とあこがれをかきたてられました。いつもは狭いビジネスホテルに泊まることがほとんどなので、居室の広さにも感動。館内には露天風呂のほか、かつて鉄輪地区で親しまれた劇場〈ヤングセンター〉から移築されたという、乙女なステンドグラスがあしらわれた貸切湯(Click!)も。 時間がなくて湯布院や鉄輪地区には行けなかったのですが、宿の周辺だけでも〈駅前高等温泉〉や〈竹瓦温泉〉など良い温泉がたくさんありじゅうぶん楽しめました。 ![]() 散歩中に見つけて立ち寄った、「カトリック別府教会」。1950(昭和25)年に建てられた古くて美しい教会ですが、2006(平成16)年の改修工事で導入されたというポーランド製のステンドグラスが、海や太陽、そよ風を表したモダンなデザインでしばし見入ってしまいました。 ![]() 別府を訪れたら必ず行きたいと思っていた、1916(大正5)年創業の「友永パン屋」。早朝から長蛇の列で、窯から出したてのかすかにまだ湯気の立つパンがどんどん並べられていきます。「わんちゃんパン」(子犬の顔を模したチョコクリーム入りのパン)をはじめ、朝食用にいくつか購入。地方へ行くと高齢化をひしひしと感じることが少なくないですが、別府は若い人が楽しそうに働いているお店が多いのも印象的でした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 「フジヨシ醤油」のカトレア醤油。九州の少し甘めの醤油が好きで、大阪でも手に入りやすいフンドーキンのものなど時々買っていたのですが、カトレア醤油も大好きな味に。ラベルにあしらわれたカトレアの花は創業者がカトレアの鉢を手に微笑む、思い出の写真から取られたものとか。醤油づくりは7人の息子たちに受け継がれ、現在はその息子や娘、孫たちも手伝うようになり……と昭和から令和にいたるまでの家族の物語が詰まった醤油なのでした。 ![]() ![]() 福岡〜別府で食べたものの1部。左上)福岡到着直後、お昼に食べた「牧のうどん」のごぼ天うどん。麺が出汁をどんどん吸うので、小さいやかんに入った出汁を継ぎ足しながら食べるという独特のスタイルに衝撃を受けました。右上)別府「西野食堂」のとり天定食(看板に「東洋一の味」と書いてあり、吸い寄せられるように入店)。左下)別府の地元スーパー「マルショク」で見つけた池田パンの「ラビットパン」。右下)福岡バスセンター内で見つけた、ムツゴロウ型の「むっちゃん万十」。あんこやカスタードはもちろん、おかず系までさまざまなテイストが。このほか、「WEST」のもつ鍋や明太子丼など何を食べてもおいしく、九州へ移住したい気持ちに……。 ![]() なお、今回の旅で最も印象に残ったのは、やはり「佐渡ヶ嶽部屋」の親方や力士たちのこと。相撲の知識がほぼゼロだったため不安もありましたが、朝稽古時の厳しさとは打って変わった和やかな空気感のなかぶじ終了。力士たちは皆15歳〜20代の男の子たちなのですが、伝統の世界で勝負していく人生について思いを馳せました。昼食にふるまっていただいた、佐渡ヶ嶽部屋に伝わるあっさりした塩味のちゃんこ、かつおのたたきなどのおいしさも忘れられません……。 稽古が終わった後、力士のひとりが土俵の中央に盛り土をして御幣(ごへい)を立てる様子に、相撲が神事だった時代のスピリットを感じたりも。土俵内は女人禁制だったりと現代にそぐわない部分ももちろんあるのですが、いにしえの日本人が持っていた信仰心が今もこのような形で伝承されていることに感動を覚えました。 帰宅後、別府駅裏に岡本太郎の貴重なモニュメント(Click!)があったことを知り、リサーチ不足を猛省。信楽焼のタイルを使った作品で、1969(昭和44)年に完成したもの。大阪万博の準備に奔走していた岡本が、合間を縫って滋賀県に出向き見つけたタイルで構成されています。関西万博で岡本太郎が再評価されていることから、地元ではこのモザイクタイル画にも注目が集まるのでは?と期待されているとか。 駆け足の旅でしたが、昭和の空気感が色濃く残る別府は大好きなまちに。また、きっとここを訪れる。そう想うことが心の拠りどころとなりそうです。
by interlineaire
| 2025-06-25 04:47
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