2023-01-01から1年間の記事一覧
教皇のスパイ(ダニエル・シルヴァ/ハーパーBOOKS) 本屋で見かけた題名が気になって、いつかは読むことになるだろうと思っていた一冊。 ローマ教皇が逝去したが、その死に不審をいだいた個人秘書に、イスラエル諜報機関の長官が呼び出されて・・・と…
時間は逆戻りするのか(高水裕一/BLUE BACKS) 物理学は、対称性というものに非常に大きな意味を置いている。というよりは、自然は対称性に基づいて設計されている、というほうが正しいのかもしれない。しかし、時間はなぜか、一方向にしか流れない(ように…
アボカドの種(俵万智/角川書店) 俵万智氏の最新歌集。 この方のエッセイを紹介しようと思ったこともあるが、なぜか言葉がうまくまとまらず、私の手には負えない、と思った。 歌集ならば、自分の好きな歌を選んで、少しばかりの感想を並べることができるか…
着物始末暦(中島要/ハルキ文庫) 中島要氏の着物始末暦。10巻まで読み終わった。 9月に紹介した3冊をのぞいた残りの7冊は次のとおり。 4 雪とけ柳 5 なみだ縮緬 6 錦の松 7 なでしこ日和 8 異国の花 9 白に染まる 10 結び布 主要登場人物の余…
すごい物理学入門(カルロ・ロヴェッリ/河出文庫) この人の本は、ハードカバーで『すごい物理学講義』、『時間は存在しない』、『世界は「関係」でできている』の3冊を持っている。 この種類の本は、図書館に収蔵されず、文庫化もされないおそれが高いか…
おやごころ(畠中恵/文芸春秋) 江戸の町名主の跡取り息子、高橋麻之助を主人公とする「まんまこと」シリーズの第9作。前作の紹介は2021年10月だから、2年ぶり。 お気楽な若旦那のお話だったが、物語のなりゆきで、人情噺としての色合いが、少しず…
それでも旅に出るカフェ(近藤史恵/双葉社) この作者の『ときどき旅に出るカフェ』は、2021年1月に紹介した。 続編が書かれたのは意外だったが、コロナ禍の影響が大きいのではないか、と感じている。コロナ禍をめぐる社会情勢の中で、さまざまな「生…
宇宙人と出会う前に読む本(高水裕一/BLUE BACKS) 著者はスティーブン・ホーキング博士に師事したこともある研究者で、専門は宇宙論。 多くの宇宙人が交流する宇宙ステーションに派遣されたとして、宇宙人とどのような話をすればいいのか、という…
運命の時計が回るとき(ジェフリー・アーチャー/ハーパーBOOKS) ジェフリー・アーチャーの警察小説の第4作。2023年冬に刊行予定、との予告は半年以上遅れたことになるが、それくらいで腹を立てていては翻訳小説読みはやっていられない。 作品ごとに昇…
暗殺者たちに口紅を(ディアナ・レイバーン/創元推理文庫) 40年間、暗殺組織で勤務し、60歳で定年を迎えた4人の女性。退職記念クルーズに参加すると、彼女たちを殺すために送り込まれた組織の刺客に気が付いた。 帯や裏表紙の宣伝文句で、読んでみよ…
そもそも島に進化あり(川上和人/新潮文庫) この著者は鳥類学者。作品を紹介するのは4冊目。 今作は、島の生物学。そもそも島とは何か、という定義から始まり、島に生物が到達する形態や、島での生物の進化と絶滅などが論じられる。 島は、大陸に比べて様…
可燃物(米澤穂信/文藝春秋) 群馬県警察本部捜査第一課 葛(かつら)警部が主人公の本格推理。 拝見しているブログで新刊が出ていることを知ったが、しばらく図書館では借りられそうにないので、出張先で持参した本を読み終えたのを言い訳に、購入すること…
3月のライオン(第17巻)(羽海野チカ/白泉社) 3月のライオンの第17巻がようやく出た。連載雑誌を購読していないので、いつごろ出るか予測がつかないが、従来のペースからすれば半年は遅れている。 第16巻で始まった原始中飛車での戦いは、主人公…
着物始末暦(中島要/ハルキ文庫) 中島要氏の着物始末暦。まず第1巻『しのぶ梅』を読んでみて満足できる内容だったので、全10巻をまとめて手に入れた。ゆっくり楽しみたい。 1冊ずつ紹介するのもどうかと思うので、まず、3巻までを紹介したい。 しのぶ…
プロジェクト・ヘイル・メアリー(早川書房/アンディ・ウィアー) 久しぶりの、圧倒的なSF。冒頭、名前も思い出せない主人公が、だんたんと事態を理解していく様子がたまらない。その楽しみを損なわないためには、ほとんど何を書いてもネタバレになってし…
探偵フレディの数学事件ファイル(ジェイムズ・D・スタイン/化学同人) タイトルのとおり、数学に基づいて事件を解決する探偵のお話。 最初にお断りするが、この本はお勧めではない。数学をネタにしたミステリーを期待する人にとっては、謎解きともいえな…
街とその不確かな壁(村上春樹/新潮社) 村上春樹の最新作。ようやく借りられた。 いくつかの感想。これはいつも思うことだが、村上氏の非現実を含む作品を「ファンタジー」と呼ぶことに違和感がある。魔法などが出てこなければファンタジーではない、とい…
都会の鳥の生態学(唐沢孝一/中公新書) まずは本書「はじめに」からの引用。 生態学は「関係の学問」である。生物どうしの関係、生物と環境との関係を通して生物の生活を明らかにしようとする。 こういう意味での生態学は、動物行動学(エソロジー)と並ん…
空のあらゆる鳥を(チャーリー・ジェーン・アンダーズ/東京創元社) 「ネビュラ賞・ローカス賞・クロフォード賞受賞の傑作SFファンタジイ」という宣伝文句に惹かれて読んでみた。 二人の主人公。ひとりは早熟な天才科学少年。もう一人は、なかなか覚醒し…
上海灯蛾(上田早夕里/双葉社) 2022年1月に、この作者の『破滅の王』を紹介した。細菌兵器を主題とする国際謀略小説で、第二次世界大戦前から終戦までの上海を舞台としていた。 時代と場所はほぼ同じ設定だが、今作の主題は阿片。 序章で死体を川に沈…
吉原と外(なかとそと)(中島要/祥伝社) 今年4月に『誰に似たのか』を紹介して以来、この作者の作品を追いかけている。その中で捕物帖も見つけたが、2冊だけで続編が途切れているのが残念だ。ノンシリーズも何冊か読んだが、その中で一番、印象に残った…
旅のつばくろ(沢木耕太郎/新潮社) 沢木氏の本で、明確に読んだ記憶があるのは『テロルの決算』で、40年以上前だ。その本を、都心から水戸方面に行く列車の中で読んだことまで覚えているのは、会いに行った女性との会話で、その本が話題になったから。 …
量子テレポーテーションのゆくえ(アントン・ツァイリンガー/早川書房) 量子力学の本を読んでいると、「EPR論文」や、「ベルの不等式」という言葉を見かけることがある。 「EPR論文」は、神はサイコロをふらない、と信じるアインシュタインが、局所…
おはようおかえり(近藤史恵/PHP研究所) この人の作品を紹介するのは、2022年3月の『たまごの旅人』以来。 タイトルは、挨拶をふたつ重ねたものではなく、早く帰ってね、の意を含んだ「いってらっしゃい」。物語の最初と最後に、この言葉がある。 舞台…
トーキョー・キル(バリー・ランセット/集英社) 先週と同じ作者による「ジム・ブローディ」シリーズの第二作。 旧日本陸軍の兵士だった老人が主人公の探偵事務所を訪れたとき、すでに死者は8人を数えていた。満州での戦友2人が家族ともども殺されたこと…
ジャパンタウン(バリー・ランセット/集英社) サンフランシスコのジャパンタウンで、日本人家族5人が惨殺される。主人公は、市警察の警部補から現場に来るように呼び出しを受ける。当地で美術商を営む傍ら、亡父が東京で営んでいた探偵事務所の共同経営者…
日本史を暴く(磯田道史/中公新書) タイトルはやや過激だが、読売新聞に連載されている歴史コラムを収録したもの。 著者は歴史学者。古文書を読みこなして、これまで見過ごされてきた新たな事実を掘り起こすのが得意なようだ。そのスタイルに既視感を覚え…
無限の書(G・ウィロー・ウィルソン/創元海外SF叢書) サイバーパンクと魔術的世界が融合する傑作SFファンタジイ(裏表紙に書かれた宣伝文句) サイバーパンクといえばウィリアム・ギブスンが思い浮かぶが、そうした雰囲気はあまり感じられず、むしろ…
異常(アノマリー)(エルヴェ・ル・テリエ/早川書房) 本屋で見かけたとき、異色ではあるが評判のよさそうなSF、という感じがした。 読んでみると、いきなりクールな殺し屋が出てきて、それから、性別、年齢、国籍、職業の異なる、様々な人々が描かれる…
パンクなパンダのパンクチュエーション(リン・トラス/大修館書店) これは、4月に紹介した『図書館司書と不死の猫』の作者リン・トラスの作品。 パンクチュエーションというのは耳慣れない言葉だが、「句読法」と訳されている。句読点の使い方、というこ…