ジャガー・ワールド(恒川光太郎/講談社) ジャガーを崇拝し人を生贄にする、ジャングルの中で発達した文明。その都市国家のひとつ、エルテカをめぐるお話。 四部構成。時系列はときに過去に遡るが、第一部から順番に進む。そして、各部ごとに中心的な視点…
エディシオン・クリティーク(高田大介/文芸春秋) 帯に「知的探索ミステリー」とあったので読んでみた。 編集者の女性「真理」が主人公。その元夫で文献学者の「修理」が文章をめぐる謎を解く、という趣向。 採り上げられた謎は次の3つ。 襖の裏書に書か…
風待荘へようこそ(近藤史恵/角川書店) あけましておめでとうございます 本年もよろしくお願いします 年頭にふさわしい特別の本、とはいきませんでしたが、私の好きな作家の近著で読後感のよいものを選んでみました。 主人公は45歳の主婦。というか、主…
全員犯人、だけど被害者、しかも探偵(下村敦史/幻冬舎) 10年ほど前から活躍されている作家で、作品を読むのはこれが初めて。 ひと目でミステリだとわかるタイトル。独特で力強い。だから図書館で手に取ってみた。 不祥事を起こした会社の社長が、社長室…
ボスポラス 死者たちの海峡(川瀬美保/早川書房) 第15回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。 舞台はイスタンブール。物語は、女子大生の転落死の現場から始まる。続いて、元ピアニストの日本人女性が自殺しているのが発見される。彼女は奇妙な遺書を遺し…
生きる言葉(俵万智/新潮新書) 俵万智氏の著書。 SNSやAIが広く普及した時代を背景に、言葉を職業とする歌人が、言葉についてあれこれと考察した一冊、だろうか。自らの子育ての体験や様々なエピソードを中心に書かれているから、エッセイのように読みやす…
藩邸差配役日日控(砂原浩太朗/文芸春秋) 図書館でふと見つけて、題名が気になって読んでみようと思った。初見の作家さん。 主人公は、「神宮寺藩」藩邸の差配役。聞きなれない役職だが、藩邸の管理をする庶務係のようなものか。事実上の「なんでも屋」で…
鳥類学者の半分は、鳥類学ではできてない(川上和人/新潮社) 著者は鳥類学者。この人の本は過去に4冊紹介しているが、タイトルに「鳥類学者」が含まれているのは3冊目。 今作は、鳥類学者としての日常のあれこれを綴った、エッセイ風の読み物。 ネタ元が…
追憶の鑑定人(岩井圭也/角川書店) 岩井圭也氏の「鑑定人」シリーズの第三作。 第一作は『最後の鑑定人』、第二作は『科捜研の砦』。ドラマ化できそうな出来栄えだと思っていたら、この夏にドラマ化された。 (私にしては珍しくドラマを見た。藤木直人氏は…
名探偵再び(潮谷験/講談社) この作者の作品を紹介するのは、『伯爵と三つの棺』についで2冊目。 他にも良作があるようだが、特殊設定のものが多く未読。この作品も非現実的な設定だと分かっていたが、高校生が探偵役の学園ものということもあり、読んで…
世界一シンプルな進化論講義(更科功/BLUE BACKS) 著者は分子古生物学者。これまでに、『残酷な進化論』と『絶滅の人類史』の2冊を紹介している。いずれも、進化の実相を理解するのに有用な本だった。 進化論講義と題しているが、講談社のウェブマガジン…
ああうれしい(畠山恵/文藝春秋) 「まんまこと」シリーズの第10作。 この作者の作品で私が読んでいるのはこのシリーズだけ。このブログでは第8作「いわいごと」と第9作「おやごころ」を紹介してきた。ほぼ2年ごとに新作が出て、その半年後に(図書館…
スパイたちの遺灰(マシュー・リチャードソン/ハーパーBOOKS) 久しぶりの本格的なスパイ小説。 主人公は大学で諜報史を教える准教授。ある日、MI6の伝説のスパイ、スカーレット・キングから接触があり、長年にわたる諜報活動を記録した手記を出版してほし…
夏休みの空欄探し(似鳥鶏/ポプラ社) 未読のミステリ作家を試しているうちに、気になる作家を見つけた。 似鳥鶏(にたどり けい)。デビューは2007年なので、これまで全く気付かなかったのが残念。 読みやすい文章なのだけれど、少し斜め加減に理屈っ…
3月のライオン第18巻(羽海野チカ/白泉社) 第17巻の発売から2年。ようやく第18巻が出た。 漫画やアニメは同世代の中ではよく見る方だと思うが、本当に好きな作品は限られている。ブログで紹介しているのは、この作品だけ。(同じくらい好きなのは…
コーンウォールに死す(ダニエル・シルヴァ/ハーパーBOOKS) これまで何冊か紹介してきた<ガブリエル・アロン>シリーズの最新作。 美術修復師にしてイスラエル諜報機関の元長官であるガブリエル・アロン。今作では、警察官になった古い知り合いから殺人事…
宇宙のアノマリーはどこまで判明したのか(ハリー・クリフ/柏書房) サブタイトルは「標準モデルを揺るがす謎の現象」 タイトルをみると、少し怪しげなトンデモ科学の匂いもするが、極めてまっとうな科学解説本。 この著者の作品は、今年4月に紹介したこと…
帰れない探偵(柴崎友香/講談社) この作者は、私が普段読まないタイプの小説を書いている方。しかし、新聞に掲載された文章を見かけて、すっきりとした文章を書く人だとは思っていた。 で、題名に「探偵」という言葉を含むこの本を見つけて、いったいどん…
京都文学小景 物語の生まれた街角で(大石直紀/光文社文庫) この方は、3年前に紹介した『美しい書店のある街で』の作者。 前作は「世界で一番美しい10の書店」に選ばれた京都一条寺の啓文社が登場する4編の物語だった。今作は、同じく京都を舞台とする…
9人はなぜ殺される(ピーター・スワンソン/創元推理文庫) 今年3月(gooブログ時代)に紹介した『8つの完璧な殺人』の作者。 まちがいのない作品を期待できる作者。今回は、旅の友とするために最新訳を買ってみた。 アメリカ各地の9人に、その9人の名…
大栗先生の超弦理論(大栗博司/BLUE BACKS) 大栗博司氏が書いた超弦理論の入門書。ブルーバックスで出版されていたことに最近気がついて、急いで手に入れた。2013年の発行。12年前だけど、内容は古くなってはいなかった。 場の量子論には手に負えな…
ちぎれた鎖と光の切れ端(荒木あかね/講談社) 3週前に紹介した『此の世の果ての殺人』の作者の第二作。 今作は二部構成。 第一部の舞台は絶海の孤島。コテージでのバカンスで仲間全員を毒殺しようとする若者の視点で描かれる。主人公の逡巡から毒殺の機会…
口出し屋お貫(中島要/祥伝社) この作者の作品は、『誰に似たのか』が最初。他の時代小説にはない独特の魅力に惹かれて他作品を追いかけているうちに『吉原と外』(なかとそと)や着物始末暦シリーズを読んでこの作者のファンになった。強く生きる女性の姿…
京都 ものがたりの道(彬子女王/毎日新聞出版) 少し前に、同じ著者の『赤と青のガウン』を紹介した。 オックスフォード大学で博士号を取得後、皇族としての業務の傍ら、京都を中心に日本文化の研究者として活躍されているようだ。 日々、暮らしている京都…
此の世の果ての殺人(荒木あかね/講談社) 少し前から、未読のミステリ作家を意識的に試している。今回の作品は、2022年度の江戸川乱歩賞受賞作品。 近い将来に小惑星が地球に衝突すると発表された。衝突地点は日本。多くの人が、日本から逃げ出したり…
雪山書店と愛書家殺し(アン・クレア/創元推理文庫) スキーリゾートを舞台とするコージーミステリの第二弾。予想どおり、タイトルは「雪山書店と・・・」だった。 (第一弾の『雪山書店と嘘つきな死体』は、昨年10月に紹介) 主人公は、姉とともにミステ…
鳥刺同心 遅い春(伊達虔/論創ノベルズ) 主人公は引退した同心。さらにその前職は「鳥見役」。鷹狩の舞台となる鷹場を管理する役職だが、5代将軍綱吉による「生類憐みの令」のため、同心に異動(降格)した経歴を持つゆえに「鳥刺同心」。 引退後、俳諧三…
まぼろしの女(織守きょうや/文藝春秋) 作者は、2か月ほど前に紹介した『有栖川有栖に捧げる七つの謎』に参加した作家のひとり。ホラー小説を書く人らしいので、読むことはないと思っていたが、捕物帖を書いているのを見つけて、読んでみた。 捕物帖は基…
赤と青のガウン(彬子女王/PHP文庫) 皇族の女性による英国留学記。 文庫化されて以降よく売れているようだから、ご存じの方も多いかと。いつも利用する図書館では、いつまで待っても予約が途切れないから、とうとう買ってしまった。 この本の最大の魅力は…
ぼくはあと何回、満月を見るだろう(坂本龍一/新潮社)スタイリッシュなタイトルに惹かれ、「教授」のエッセイを読んでみるのも悪くない、と思ったが、それほど軽い内容ではなかった。著者には、57歳になった頃までの活動をまとめた『音楽は自由にする』…