1 : 以下、名... - 2015/07/12 00:59:39.07 lKgZ5Bdv0 1/963

美希「もー……今日もプロデューサーにセクハラされたの」

美希「意味も無くミキの身体あちこち触ってきて……本当嫌いなの。死んじゃえばいいのに」

美希「そういえば最近、アイドル事務所のお偉いさん達がばたばた死んじゃってニュースになってたし……」

美希「プロデューサーもどさくさに紛れて死んでくれたらいいのに」

美希「……ん?」

美希「何だろ、この黒いノート」スッ

美希「『DEATH NOTE』……『デスノート』?」パラッ

美希「わっ。なんか英語で色々書いてある」

美希「『The human whose name ……』うーん。面倒なの。今辞書持ってないし」

美希「……でもなんか気になるの。妙に作りとか凝ってるし」

美希「とりあえず持って帰ろう」

2 : 以下、名... - 2015/07/12 01:06:38.88 lKgZ5Bdv0 2/963

【美希の自宅】


美希「よし。英文を全部翻訳サイトで翻訳したの。あー疲れた」

美希「で、どういう意味なのかっていうと……」

美希「『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。』」

美希「『書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない。ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない。』」

美希「『名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くと、その通りになる。』」

美希「『死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる。』」

美希「『死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる。』」

美希「ふーん。要するにこのノートに名前を書かれた人は死ぬ……と」

美希「……ばっかみたい」

美希「こんなの今時小学生でも騙されないの」

美希「まあでも、せっかく頑張って翻訳したんだし……」

美希「…………」カキカキ

美希「……よし! これであのセクハラプロデューサーは40秒後に心臓麻痺で死ぬの! あはは」

美希「あはは……」

美希「…………」

美希「……あほらし」

美希「もういいや。寝ちゃおーっと」ゴロン

美希「あーあ、本当に死んでくれたらいいのに。あのプロデューサー……」

美希「あの人さえいなければ、本当に良い事務所なのにな……あふぅ」

14 : >>5訂正 - 2015/07/12 12:04:21.79 +9Qm3CXu0 3/963

【翌日・765プロ事務所】


美希(今日もまたあのプロデューサーに会わなきゃいけないの)

美希(本当嫌だなあ。もう事務所辞めちゃおうかな)

美希(でもあんな奴のためにミキが辞めなきゃいけないのもシャクだし……)

美希(まあ考えてても仕方無いか)

 ガチャッ

美希「おはよーございますなの……ん?」

小鳥「……おはよう、美希ちゃん……」

美希「? どうしたの、小鳥? なんか様子が……」

小鳥「…………」

美希「あれ? そういえばプロデューサーは? まだ来てないなんて珍しいの」

小鳥「…………」

美希「それに律子は? 律子もまだ来てないの?」

社長「星井君」

美希「あっ。社長。おはようございますなの」

社長「……おはよう。君は今日、朝一で収録の予定だったんだね」

美希「そーだよ。だからミキ眠いけど頑張って早起きして来たの。あふぅ」

社長「それで君だけは家を出た後だったんだね。他の皆にはさっき電話で連絡したんだが……」

美希「? 何の話?」

社長「……落ち着いて聞いてほしいんだがね」

美希「え?」

社長「……昨日、プロデューサーが亡くなった」

美希「…………え?」

社長「ここで律子君と残業しているときにね。いきなり苦しみ出したそうだ」

美希「…………」

社長「律子君がすぐに救急車を呼んだんだが、心不全か心臓麻痺かだったらしく……」

美希「…………」

社長「そのまま、帰らぬ人となってしまったんだ」

美希「……ウソ……なの……」

社長「その後、律子君もショックで寝込んでしまってね。今は自宅で安静にしている。まあ無理も無い。目の前で同僚が死ぬところを見てしまったわけだからね」

美希「…………」

社長「それから今朝まで、私と音無君とで手分けして彼の家族に連絡をしたりしていて……君達への連絡が遅くなってしまったんだ。申し訳無い」

美希「……それは別にいい、けど……」

社長「そういう状態なので、今日から数日間、君達アイドル諸君は自宅待機とする。君達もショックを受けているだろうし、私と音無君は彼がしていた仕事の引き継ぎ処理をしなければいけないからね。なので、すまないが君も今日のところはこのまま帰宅してくれたまえ」

美希「えっ。で、でも……」

社長「なに、仕事先にはもう話をつけてあるから心配しなくていい。こちらの処理が落ち着いたらまた連絡するよ。彼の通夜や葬儀についても日取りが決まり次第伝える」

小鳥「ごめんね。美希ちゃん」

美希「……わかったの……」

6 : 以下、名... - 2015/07/12 01:41:03.91 lKgZ5Bdv0 4/963

【美希の自室】


美希(まさか、ね……)

美希(昨日、ミキがこのノートにプロデューサーの名前を書いたのは確か夜の7時頃)

美希(社長が律子から聞いた話によると、プロデューサーが倒れたのも夜の7時頃)

美希(そしてプロデューサーの死因は心不全か心臓麻痺……)

美希「……って、だからそんなのあるわけないの!」

美希「ばっかみたい。こんなのただのグーゼンに決まってるの。グーゼン」

美希「あーあ、それにしてもよかったの。プロデューサーが死んでくれて。ミキ的には超スッキリしたってカンジなの」

美希「これでもうセクハラされることもない、し…………」

美希「…………」

美希(……何なの? この胸のモヤモヤは……)

美希(だからこんなノート、デタラメに決まって……)

美希「……そうか」

美希「だったらもう一度試してみればいいの」ペラッ

美希「それで名前を書いた人が死ななければ、ただのグーゼンだったってことが証明されるの」

美希「……でも、誰の名前を書こう?」

美希「どうせこんなの嘘に決まってるんだから、誰でもいいけど……」

美希「でも万が一ってことも……」

美希「あ」

美希「そういえばさっき、リビングのテレビで……」ピッ

TV『……昨日新宿の繁華街で無差別に6人もの人を殺傷した通り魔は、今もなお幼児と保母8人を人質にこの保育園にたてこもっており……』

TV『……警視庁は犯人を音原田九郎・無職42歳と断定……』

美希「よし。覚えたの。顔と名前」カキカキ

 『音原田 九郎』

美希「これで40秒経っても何もなければ……」

美希「…………」

TV『あっ! 人質が出てきました!』

美希「!?」

TV『皆、無事のようです。そして入れ替わるように警官隊が突入! 犯人逮捕か?』

美希「ま……まさか……」

TV『えー、どうやら犯人らしき人物は出て来ていないようです。一体どうなっているのでしょうか……』

美希「…………」

TV『今情報が入りました! 犯人は保育園内で死亡! 犯人は死亡した模様です!』

美希「!」

TV『人質の証言によると、犯人は警察官が射殺したのではなく、突然苦しみ出して倒れたとのことで……』

美希「…………!」

美希「や、やっぱり、これ……」

美希「い……いや……」

美希「いやぁああああああああああああ!!!」

8 : 以下、名... - 2015/07/12 01:56:25.92 lKgZ5Bdv0 5/963

【翌日・美希の学校】


美希(昨日は結局一睡もできなかったの)

美希(だってミキは……ミキは……)

美希(この手で……二人も……)

美希(いや、でもまだ……そうと決まったわけじゃ……)

女子生徒「ねぇ美希、聞いてる?」

美希「え? あっ、ごめん……聞いてなかったの」

女子生徒「もー。……っていうか美希、なんか顔色悪くない? 大丈夫?」

美希「あー、うん。へーき、へーきなの。ちょっと寝不足なだけで……」

女子生徒「寝不足? あんなに寝るの大好きだった美希が?」

美希「まあ、ちょっと色々あって……」

女子生徒「そっか……やっぱり大変なんだね。アイドルのお仕事って」

美希「あはは……まあそんなカンジなの」

男子生徒A「なんだ星井、寝不足だって?」

美希「あー……うん。(こいつ……いつもいつもミキの気を引こうとしてちょっかいばっかりかけてくるの。よりによってこんな時にまで……)」

男子生徒A「そりゃあ良くないなあ。ちゃんと睡眠取らないと、自慢のバストにも栄養がいかないだろ?」

美希「! …………」

女子生徒「ちょっと! 何てこと言うのよ!」

男子生徒A「いやいや、俺は星井の為を思ってだな……ところで星井、次の写真集はいつ出す予定なんだ? また水着着たりするのか?」

美希「…………」

女子生徒「もう。そっとしといてやんなさいよ。美希疲れてるんだから」

男子生徒A「なんだよ。俺はアイドル星井美希の一ファンとして質問をしてるだけだぜ? なあ星井。どうなんだよ」

美希「……次の写真集の予定は特に無いの」

男子生徒A「なーんだ。もしまた出るんならオカズに使わせてもらおうと思ってたのになー」

美希「!」

女子生徒「ちょっと! いい加減に……」

男子生徒A「はいはい。わーったよ。るせーやつ」スタスタ

美希「…………」

女子生徒「み、美希? 大丈夫? 後で私から先生に……」

美希「ううん。いいの」

女子生徒「でも」

美希「ミキなら大丈夫だから。こういうの、慣れてるし」

女子生徒「美希……」

美希「それよりほら。もう始業のチャイム鳴るよ?」

女子生徒「う、うん……」スタスタ

美希「…………」

15 : >>9訂正 - 2015/07/12 12:05:47.44 +9Qm3CXu0 6/963

【休み時間・女子トイレ】


美希(……念の為、持って来ておいてよかったの)スッ

美希(まあ、本当は怖くて家には置いておけなかっただけだけど……)

美希(……あんな奴、どうせ死んでも誰も困らない)

美希(もし死ななければ、このノートは偽物で、プロデューサーの件も通り魔の件もただの偶然だったってことが証明される)

美希(死んだら死んだで別に構わない。もう今更二人殺すのも三人殺すのも一緒なの)

美希(…………)カキカキ

美希(今から40秒……もう次の授業が始まる頃だから、教室に居るはず)

美希(どうせならこの目で確かめてやるの)ダッ

10 : 以下、名... - 2015/07/12 02:24:08.43 lKgZ5Bdv0 7/963

【教室】


男子生徒B「だよなー」

男子生徒A「ハハハ。そうそう」

美希(……いた。時間は……)チラッ

美希(……あと5……4……3……)

男子生徒A「そんでさ、あいつが……っ!?」

男子生徒B「? A?」

男子生徒A「あっ……ぐっ……」ドサッ

男子生徒B「ちょ、おい!?」

男子生徒A「ぐあっ……あ……」

男子生徒B「ちょ……」

男子生徒A「――――」

男子生徒B「う……うわぁあああああああああ!!!」

女子生徒「きゃああああああ!!」

男子生徒C「お、おい……なんだよ、なにやってんだよ!?」

男子生徒B「し、しらねーよ! い、いきなり苦しみ出して……!」

 ガラッ

教師「おいお前ら静かにしろ! もう授業……ん? A? おいA!? おい!」


 ザワザワ…… ザワザワ……


美希「…………」


美希(やっぱり……)

美希(デスノート……本物なの)

17 : 以下、名... - 2015/07/12 14:13:27.83 +9Qm3CXu0 8/963

【同日夜・美希の自室】


美希(三人、殺した)

美希(ミキが)

美希(この手で……)

美希(…………)

美希(でも)

美希(今日、学校でAが死んでから一斉下校になったけど)

美希(悲しんでいる様子の生徒は一人もいなかった)

美希(女子は皆、あいつのセクハラ発言の被害にしょっちゅう遭ってたから嫌っていたし)

美希(一部の男子連中もきっと、なんとなくつるんでただけで本当はどうでもよかったんだろう)

美希(そうだよ。あんな奴、いてもいなくてもどうでもいいような奴だったんだ)

美希(プロデューサーにしたってそう)

美希(さっきのお通夜でも、皆口にこそ出さなかったけど内心ではホッとしてたに違いないの)

美希(ミキ以外にも、春香や雪歩とかもたまに身体触られるって言ってたし)

美希(言葉でのセクハラなら、ほぼ全員のアイドルが被害に遭ってたし)

美希(人をバカにするような発言も多かった。あずさに『短大卒だから教養無いんだろ』とかよく言ってた)

美希(元々は、うちの事務所に出資してる大きな会社の社長の息子で、就職先が決まらなかったからって、父親のゴリ押しでうちのプロデューサーになったって小鳥から聞いた)

美希(だから、誰も何も言えなかった。プロデューサーとしての能力も経験も無くて仕事では全く使い物にならなかったけど、裏で社長や律子や小鳥が必死にフォローして何とかしていた)

美希(そんな皆の努力を知っていたから、ミキ達も何も言えなかった。セクハラのことも、せいぜいアイドル同士で愚痴を言い合うのが精いっぱい。社長達は何も知らない)

美希(そんな風に、誰もが『どうしようもないこと』と思っていた)

美希(ほんの数日前までは)

美希(でも、その『どうしようもない』現実が今、変わった)

美希(いや、違う)

美希(ミキが変えたんだ)

美希(それだけじゃない。昨日の通り魔なんて完全に犯罪者だったし、あの時ミキがデスノートを使っていなかったらどうなっていたか)

美希(きっと人質にされていた八人は皆殺しにされていたに違いない)

美希(ミキが救ったんだ。このデスノートで)

美希「ふ、ふふふ……」

???「気に入っているようだな」

美希「!?」

18 : 以下、名... - 2015/07/12 14:24:39.32 +9Qm3CXu0 9/963

美希「きゃ、きゃあっ……!」

???「何故そんなに驚く。そのノートの落とし主、死神のリュークだ」

美希「し……しにがみ……?」

リューク「ああ。それにお前、さっきの様子だともうそれがただのノートじゃないってわかってるんだろ?」

美希「…………」

リューク「どうした。俺が怖いのか?」

美希「……こ……」

リューク「?」

美希「怖く、ないの……」

リューク「ほう」

美希「覚悟なら……もうできてるの」

リューク「覚悟?」

美希「ミキは……ミキは、このデスノートでもう三人もの人間を殺したの。皆、死んでも誰も悲しまないっていうか、死んでもどうでもいいような奴だったけど……」

リューク「…………」

美希「でも、人を殺したことには変わりないの。それでミキはどうなるの? あなたに魂を取られるの?」

リューク「ん? 何だそれ? 人間が作った勝手なイメージか?」

美希「えっ」

リューク「俺はお前に何もしない」

美希「…………」

リューク「人間界の地に着いた時点でノートは人間界の物になる。もうお前の物だ」

美希「……ミキの物……」

リューク「いらなきゃ他の人間に回せ。その時はお前のデスノートに関する記憶だけ消させてもらう」

美希「…………」

リューク「ちなみに、元俺のノートを使ったお前にしか俺の姿は見えない。もちろん声もお前にしか聞こえない」

リューク「デスノートが人間・星井美希と死神・リュークをつなぐ絆だ」

美希「……絆……」

リューク「ああ」

美希「じゃあ本当にデスノートを使った代償って何もないんだね」

リューク「……強いて言えば……」

美希「…………?」

リューク「そのノートを使った人間にしか訪れない苦悩や恐怖……」

美希「…………」

リューク「そしてお前が死んだ時……俺がお前の名前を俺のノートに書くことになるが……」

美希「…………」

リューク「デスノートを使った人間が天国や地獄に行けると思うな」

美希「! …………」

リューク「それだけだ」

美希「…………」

リューク「ククッ。……ま、死んでからのお楽しみだ」

美希「……なるほどなの」

19 : 以下、名... - 2015/07/12 14:31:45.98 +9Qm3CXu0 10/963

美希「じゃあ、ついでにもう一つ聞いてもいい?」

リューク「ん? なんだ?」

美希「なんでこのノートを落としたの? ご丁寧に使い方の説明まで書いて……しかも何故か英語で」

リューク「英語で説明を付けたのは人間界で一番ポピュラーな言語だったからだ。そしてノートは落とした理由は……」

美希「…………」

リューク「退屈だったから」

美希「退屈……?」

リューク「ああ。死神がこんなこと言うのもおかしいが、生きてるって気がしなくてな」

美希「…………」

リューク「実際、今の死神ってのは暇でね。昼寝してるか博打打ってるかだ。下手にデスノートに名前なんて書いてると、『何、ガンバっちゃってるの?』って笑われる」

美希「…………」

リューク「自分は死神界にいるのに人間界の奴を殺しても面白くもなんともない。だからといって死神界の奴をノートに書いても死なないんだからな」

美希「…………」

リューク「こっちに居た方が面白いと俺は踏んだ」

美希「面白い……」

リューク「まあそういうとこだ」

美希「…………」

リューク「もちろん、さっきも言ったがそのノートをこれからも使うかどうかはお前の自由だ」

美希「…………」

リューク「もういらないってんなら、ここで返してもらってもいいが……?」

美希「…………」

リューク「…………」

美希「ううん」

リューク「お」

美希「ミキ……使うよ。デスノート」

リューク「ほう」

美希「乗りかかった船だから……っていうのもあるけど、実際にこのノートを使ってみて分かったことがあるの」

リューク「…………」

美希「この世の中には、死んだ方が良い人間がいる」

リューク「…………」

美希「そういう人間を消すことは、悪いことなんかじゃない……むしろ世の中全体にとってみれば、良いことに違いないの」

リューク「なるほどな」

美希「そうすれば、今のこの世界が、皆がもっと楽しく生きていける過ごしやすい世界になる……いや、そういう世界に変えてみせる」

リューク「ククッ……世界を変えるなんて、神にでもなるつもりか?」

美希「……ミキは神様になんかならないよ。ただ、皆がもっと笑って生きていけるようになったらいいなって思うだけ」

リューク「まあ、俺には人間の価値観なんて分からないからどうでもいい。面白いものが観れればそれでいい」

美希「じゃあ、まずは――……」パラッ

リューク「おっ、早速殺る気か?」

美希「……世界のお掃除なの」

20 : 以下、名... - 2015/07/12 14:38:11.73 +9Qm3CXu0 11/963


【一週間後・ICPO国際刑事警察機構会議】

『ここ一週間で分かっているだけで52人です』

『その全てが心臓麻痺です』

『全て追い続けてきた、もしくは刑務所に留置されていた犯罪者』

『普通に考えて、居場所の分からない指名手配犯の多くも死んでいますな』

『そう考えると軽く100人以上……』

『こうなるとまたLに解決してもらうしかありませんな』

係長「……夜神局長。『L』って何ですか?」

総一郎「ああ。君はこの会議初めてだったな」

総一郎「Lというのは名前も居場所も顔すら誰も知らない……しかしどんな事件でも必ず解決してしまう、まあ探偵とでも言えばいいのか」

総一郎「世界の迷宮入りの事件を解いてきたこの世界の影のトップ、最後の切り札……そんなところだ」

係長「へぇ……そんなすごい人がいたんですね」

???『Lはもう動いています』

係長「? な、なんだあのコートの男は……?」

総一郎「彼はLとコンタクトを取れるただ一人の男……ワタリだ。もっともワタリの正体も誰も知らない」

ワタリ『Lはとっくにこの事件の捜査を始めています。今からLの声をお聞かせいたしますのでお静かに願います』

一同『…………』

(ノート型PCを設置するワタリ。PC画面に『L』の文字が映し出される)

『ICPOの皆様。Lです』

『この事件はかつてない大規模で難しい。そして絶対に許してはならない凶悪な大量殺人事件です』

『この事件を解決する為に是非全世界、ICPOの皆さんが私に全面協力してくださることをこの会議で可決して頂きたい』

総一郎「……L……」

係長「…………」

21 : 以下、名... - 2015/07/12 14:53:04.84 +9Qm3CXu0 12/963

【数日後・765プロ事務所からの帰り道】

春香「最近すごいよねー、もうニュースから目が離せないって感じ」

千早「でも本当に不思議よね。何故犯罪者がことごとく心臓麻痺で死んでいくのか……」

「偶然にしちゃあ出来過ぎって感じだよなー」

伊織「じゃあ何? あれを全部誰かが故意にやってるっていうの? そっちの方がありえないじゃない。大体どうやって他人を心臓麻痺にさせるっていうのよ?」

「そ、それはわかんないけどさ……」

美希「…………」

亜美「ねーねー、ミキミキはどー思う?」

美希「……んー。ミキはそういうのあんまりキョーミないの。あふぅ」

真美「ありゃありゃ。ミキミキにはまだ早かったかー」

亜美「まだまだお子ちゃまだからねー、ミキミキは」

美希「むー。亜美真美にお子ちゃま呼ばわりされたくないの」

雪歩「でもこれ見て、真ちゃん」スッ

「ん? うわっ、何だこのサイト……『救世主キラ伝説』?」

雪歩「うん。『killer(キラー)』からきてるみたいだけど、もうネット上では『誰かが悪人に裁きを下している』っていう考えが浸透してるみたい」

「なるほど、それで『キラ』ね……。まああれだけたくさんの犯罪者が死んでるんだから分からなくもないけど」

伊織「ふん、ばっかみたい。非科学的だわ。だったらまずその他人を心臓麻痺にさせる手段とやらを証明してみなさいってのよ」

美希「…………」

春香「あっ」

千早「? どうしたの? 春香」

春香「えっと、そういえば……プロデューサーさんの死因も『心臓麻痺』だった……よね」

千早「えっ」

美希「! …………」

春香「もしかして、プロデューサーさんも、キラに……」

千早「春香。いくらなんでもそれは不謹慎よ。第一彼は犯罪者でも何でもなかったでしょう」

春香「それはそうだけど……。でも実際、私達、色々ひどいことされたり言われたりしてたじゃん」

千早「それは……まあ……」

春香「私もよく身体触られたりしてたし……雪歩や美希だって」

雪歩「わ、私はそんな……。確かに嫌だったけど、でも流石に死んじゃったのはショックだった、かな……」

美希「…………」

春香「ねえ、美希はどう思う?」

美希「えっ。み、ミキ的には……まあ、どうでもいいっていうか……確かにあの人のことキライだったけど、でも千早さんの言うように犯罪者とかじゃないし……」

春香「…………」

美希「……もし他の犯罪者がキラに殺されたんだとしても、プロデューサーは違うって思うな」

春香「ま、それもそうか。それにもし仮にそうだとしたら、私達の中にキラがいるってことになっちゃうもんね」

美希「!」

「確かに。アイツ外面だけは良かったから、アイツの悪いところ知ってるのって多分自分達だけだもんな」

亜美「仕事の出来なさについてはしょっちゅう律ちゃんやピヨちゃんも嘆いてたけどねー」

真美「うんうん」

美希「…………」

23 : 以下、名... - 2015/07/12 15:04:41.11 +9Qm3CXu0 13/963

千早「……皆、もうこのへんにしておきましょう。どんな理由であれ、亡くなった人をあれこれ悪く言うのは良くないわ」

春香「それもそうだね。ごめんね、千早ちゃん」

亜美「あっ。そーいえば、いよいよ来週から新しいプロデューサーが来るっぽいよー!」

真美「えっ、マジ!?」

亜美「マジマジ! さっきピヨちゃんがそれっぽい電話してるの聞いちゃったもん!」

真美「そっかー、今度は良い人だったらいいなー」

亜美「ねー。前のプロデューサーは本当サイアク……」

「こーら、亜美真美。今千早に言われたばっかだろ? もう亡くなった人の悪口はやめるさ」

亜美真美「はーい」

美希「…………」

30 : 以下、名... - 2015/07/12 20:10:46.62 +QqIoCKJ0 14/963

【美希の自室】


美希「ふー……」

リューク「ククッ。さっきは結構冷や汗かいたんじゃないか?」

美希「え?」

リューク「ほら、言われてただろ。お前らのプロデューサーもキラにやられたんじゃないかって」

美希「ああ……あんなの誰も本気にしてないの。春香だって、たまたま死因が同じだったから思いつきで言っただけだと思うし」

リューク「意外と落ち着いてるんだな」

美希「そう?」

リューク「ああ。まあ一週間であれだけの数の犯罪者を殺したんだ。そりゃ肝も据わってくるか」

美希「まーね。さて、今日もテレビのニュースで犯罪者の情報収集っと……」ピッ

リューク「随分熱心だな」

美希「当然なの。……ん?」

TV『番組の途中ですがICPOからの全世界同時特別生中継を行います。日本語同時通訳はヨシオ・アンダーソン』

美希「?」

リューク「何だ? これ」

TV『私は全世界の警察を動かせる唯一の人間、リンド・L・テイラー。通称“L”です』

美希「……“L”……?」

TV『相次ぐ犯罪者を狙った連続殺人。これは絶対に許してはならない、史上最大の凶悪犯罪です』

美希「…………」

TV『よって私はこの犯罪の首謀者、俗に言われている“キラ”を必ず捕まえます』

リューク「必ず捕まえるってよ。ククッ」

美希「…………」

31 : 以下、名... - 2015/07/12 20:32:08.27 +QqIoCKJ0 15/963

TV『キラ。お前がどのような考えでこのような事をしているのか大体想像はつく。しかし、お前のしている事は……悪だ!』

リューク「悪、ねぇ。随分な言われようだな」

美希「…………」

リューク「なあ、ミキ」

美希「ん?」

リューク「殺さないのか? こいつ」

美希「…………」

TV『すでに全世界の警察が捜査を始めている。お前がどこの誰なのかもすぐに……』

美希「……殺さないよ」

リューク「あれっ」

美希「言ったでしょ? ミキが殺すのは死んだ方が良いような悪人だけだって」

リューク「…………」

美希「確かに、ミキが世界を良くするためにやってることを悪だって言われるのは心外だけど……」

美希「でも、この人はこの人で自分が正義だと思ってキラを捕まえようとしてるだけだから、ミキ的にはほっとけばいいって思うな」

リューク「でもこいつ、キラであるお前を捕まえようとしてるってことは、いずれお前の敵になる奴かもしれないじゃないか」

美希「もう、リュークってば意外とお馬鹿さんなの」

リューク「…………」

美希「だって『デスノート』なんだよ? このノートを押さえない限り証拠も何も残らないんだから、ミキが捕まるわけがないの」

リューク「まあ、そりゃそうだが」

美希「それに、こんな生中継やってるときにこの人が死んだら、今テレビを観てる人の中にキラがいるってばれちゃうの」

リューク「……お前、結構ちゃんと考えてるんだな」

美希「そりゃあね。このノートを使って世界を良くしようって決めたんだもん。これくらい考えるのは当然って思うな」

リューク「ちぇっ。せっかく面白い展開になりそうだったのにな」

美希「残念でしたなの。それにこのLって人、結構イケメンだしね」

リューク「おいおい、そんな理由かよ」

美希「なんてね、冗談なの。っていうわけで、この話はここでおしまい。バイバイ、イケメン君。せいぜいキラ探し頑張ってなの」プツッ

32 : 以下、名... - 2015/07/12 20:43:03.92 +QqIoCKJ0 16/963

【同日夜・警視庁/凶悪連続殺人特別捜査本部(キラ対策捜査本部)】

総一郎「……というわけで、今日はこれにて解散とする」

一同「お疲れ様でした!」



係長「局長。今日はこのままお帰りですか?」

総一郎「ああ。もうここ何日も家に帰っていなかったからな」

係長「お疲れ様です。しかし、Lには正直拍子抜けでしたね……」

総一郎「…………」

係長「関東、関西、中部ときて、結局最終的には日本全地域に生中継を流したのに、何の成果も挙げられず……」

総一郎「…………」

係長「こうなると、Lのそもそもの推理の『キラは日本にいる』って線も怪しくなってきましたね。まあLに言われるがままにこっちに捜査本部置いちゃってから言うのもなんですけど」

総一郎「まあまだ判断するのは早計だろう。それにLの推理にも根拠はあるしな」

係長「最初の犠牲者が新宿の通り魔だったってことですよね? 他の凶悪犯罪者に比べて目立って罪が軽い事件だったから、殺しの実験台に使ったんじゃないかっていう」

総一郎「ああ。それに何より、この事件が報道されていた国は日本だけだった。やはりこの点は大きい」

係長「うーん……でも正直、私はLのやり方自体もどうかと思いますよ。あの『リンド・L・テイラー』って人物、結局替え玉だったんですよね? 今日死刑が執行される予定の犯罪者だったって……」

総一郎「うむ。どうやらそうらしいな」

係長「犯罪者なら死んでもいいって考えなら、キラと同じのような……」

総一郎「私もLのやり方を全て肯定しているわけではない。だがこの事件は普通に捜査していても核心に迫るのは難しいだろうとも思う。如何せん、まだキラについて分かっていることは少な過ぎるからな」

係長「そうですね。先はまだまだ長そうだなあ……」

総一郎「君も今日はもう上がりか?」

係長「あ、はい。そろそろ家に帰らないと娘に顔忘れられそうですし」

総一郎「ああ、あのアイドルやってるっていう娘さんか。うちの娘もよくテレビ観てるよ。最近随分売れて来てるそうだな」

係長「あはは……光栄です」

総一郎「じゃあまた明日な。星井君」

45 : 以下、名... - 2015/07/14 00:07:47.52 2hgnBXYG0 17/963

【美希の自室】


美希「ふぅ。これで今日の裁きは終了なの」

リューク「しかし本当にブレないな、ミキは」

美希「えっ?」

リューク「いや、あんなやつが出てきたってのに、全然意に介さずいつも通りに裁きをこなすあたりが」

美希「あんなやつ……? ああ、あのイケメン君のこと? ミキ、もうすっかり忘れてたの」

リューク「とことんマイペースだな」

美希「前向きって言ってほしいの」

リューク「でも流石にもうちょっと警戒した方がいいんじゃないのか? 全世界の警察が捜査を始めてるとか言ってたぞ」

美希「ふふん。ミキは警察なんかちっとも怖くないの」

リューク「? なんだ、えらく自信ありげだな」

美希「うん。だって……」

 コンコン

「美希ー? 入っていい?」

美希「! お、お姉ちゃん!? ちょ、ちょっと待つの!」ガタガタ

(慌ててデスノートを机の引き出しにしまう美希)

美希「い、いーよ!」

 ガチャッ

「わー。相変わらず散らかってるね」

リューク(星井菜緒……美希の姉か)

46 : 以下、名... - 2015/07/14 00:21:40.86 2hgnBXYG0 18/963

美希「もー、入ってくるなりうるさいの。それで何か用なの?」

菜緒「うん。この前貸した漫画返してくんない? 友達が読みたいって言ってて」

美希「あー、あれなら……あっ」

菜緒「?」

美希「(しまった……今デスノートを隠した引き出しなの)あ、後で探して持って行くの!」

菜緒「あんた……まさかなくしたんじゃないでしょうね」

美希「な、なくしてないの! ホントだってば!」

菜緒「まあ、それならいいけど……」

リューク「気を付けろよ、ミキ」

美希「?」

リューク「今机の中にあるデスノート、触られたら触った人間には俺の姿が見える」

美希「! ……(そういう大切な事を今頃……この死神は……)」

菜緒「どしたの? 美希」

美希「ん? んーん、なんでもないの」

菜緒「そう? あ、それとさっきパパ帰ってきたから。まだ起きてたら下りてきて顔見せなさいって、ママが」

美希「ん。わかったの。すぐに行くの」

菜緒「じゃ、漫画の件よろしくねー」

美希「はいなの」

 バタン

美希「……もー、そういうことは先に言っておいてほしいの」

リューク「すまん」

美希「もしお姉ちゃんがリュークの顔見たら、それだけで心臓麻痺で死んじゃうって思うな」

リューク「それは流石にひどいって思うな」

美希「ミキのマネしちゃ、ヤ」

リューク「すまん。で、さっき言いかけてたのは何だったんだ? 警察なんかちっとも怖くない、って」

美希「ああ、それはね……」

リューク「?」

美希「下にいこ。説明する手間が省けたの」

47 : 以下、名... - 2015/07/14 00:38:06.57 2hgnBXYG0 19/963

【星井家のリビング】


美希「パパ、お帰りなさいなの」

星井父「おう、ただいま美希。いい子にしてたか?」

美希「うん。ミキはいつでもいい子なの」

星井父「そーかそーか。えらいぞー美希」ナデナデ

美希「えへへ」

菜緒「相変わらずパパは美希にデレデレねぇ」

星井父「む。そんなことはないぞ。パパは菜緒の事も大好きだからな」

菜緒「はいはい」

星井父「あー、またそうやって父をぞんざいに扱う! 美希ー、菜緒が冷たいよー」

美希「もう。困ったパパなの」ナデナデ

星井父「ありがとう。美希は本当に優しいなぁ……パパ感動して涙が出ちゃう」

星井母「もう、帰ってくるなり何やってるのよ」

星井父「何って……娘達とのスキンシップだよ。大切な事だろ?」

星井母「まあそれはそれで大いに結構だけど。でも帰るなら帰るって言っておいてほしかったわ。おかずもう残ってないわよ?」

星井父「ああ、いいよ。ありあわせのもんで適当に食うから」

菜緒「パパ、最近また忙しいの?」

星井父「まあな。ほら、今テレビでもやってるだろ? キラ事件っての。パパ、あれの捜査本部に入っててな」

美希「!」

菜緒「えっ、そうなんだ! あっ、じゃあ今日やってたあれもパパが絡んでたの?」

星井父「今日……? ああ、あの生中継か。あれはLって探偵が独断でやったんだ。警察はほとんど関与してない」

菜緒「そうなんだ。って、Lってあのイケメンの人? パパ、あの人と一緒に捜査してるの? いいなー」

星井父「いや、あれは替え玉だよ。本物のLは俺達警察の人間もまだ会ったことがない。一応、協力して捜査している形にはなってるけどな」

美希「! (……替え玉……)」

星井母「ちょっとあなた。そんなこと喋っちゃっていいの?」

星井父「これくらい別にいいだろう。家族なんだし。あっ、でも学校の友達とかには言っちゃだめだぞ」

菜緒「分かってるよ、そのくらい。ねー美希?」

美希「…………」

菜緒「美希?」

美希「えっ、う、うん! もちろんなの!」

リューク(……警察官の父親……! これがミキが警察を恐れていない理由……!)

48 : 以下、名... - 2015/07/14 00:59:44.79 2hgnBXYG0 20/963

星井母「明日はまた早いの?」

星井父「ああ。それに多分また数日は帰って来れないと思う。なんせ雲をつかむような事件だからな」

菜緒「そうなんだー。じゃあまだキラってのがどんな奴かってのも分かってないんだね」

美希「!」

星井父「そうだな。もしかしたら今日の生中継である程度目星が付くかとも思われてたんだが……」

菜緒「てんで手がかりなしって感じ?」

星井父「まあそんなとこだ」

菜緒「そっかー。まあそもそも本当にキラなんているの? って感じだしね。心臓麻痺で人を殺すなんてさ」

星井父「まあな。今日めぼしい結果が出なかったこともあって、警察の中でも結構意見は割れてるよ」

美希「…………」

星井母「美希? どうしたの? なんかさっきからえらくおとなしいけど」

美希「えっ? そ、そんなことないの! ただえっと、ちょっとお話が難しいかなって……」

星井父「はは。まあ美希にはまだちょっと早かったかな」

菜緒「新聞も読まないしね、美希は」

美希「むー。お姉ちゃんだってテレビ欄と四コマ漫画しか読まないくせに」

菜緒「うっ、うるさいな! 大学生は忙しいの!」

美希「ふーんだ。ミキだってアイドルやってて忙しいもん」

星井母「はいはい、もうくだらないことでケンカしないの。今日は遅いからもう寝なさい。パパは明日も朝早いんだし」

菜緒美希「はーい」

49 : 以下、名... - 2015/07/14 01:12:12.15 2hgnBXYG0 21/963

【美希の自室】


リューク「警察官の父親か……なるほどな。父親からある程度警察の情報を得られる自信があったから、警察なんて怖くないって言ってたのか」

美希「まあね。でもまさかキラ事件を直接捜査するチームに入っていたとまでは思わなかったの。ミキ、ちょっとびっくりしちゃった」

リューク「ククッ。どうだ? 父親に追われる気分ってのは」

美希「追われる? 何言ってるの? リューク」

リューク「えっ」

美希「パパ、さっき言ってたじゃん。警察はまだ全然キラの目星も付いてないって」

リューク「いや、でも捜査情報の全部を話しているとは限らないだろ」

美希「大丈夫だよ。パパはミキ達家族には絶対ウソつかないもん」

リューク「……ああ、そう……。(どこからくるんだ? こいつのこの根拠の無い自信は……)」

美希「でもまさかあのイケメン君が替え玉だったとはねー。Lって人もなかなかやるの」

リューク「どんな奴なんだろうな? 本物のLって奴は」

美希「さあね。ま、どっちにしろミキにはカンケ―無いの。今日はもう眠いから寝ようっと。あふぅ」

リューク「…………」

54 : 以下、名... - 2015/07/15 20:03:19.27 z2bo+kr60 22/963

【数日後・765プロ事務所】


社長「えー、今日は諸君らに大事な話がある」

アイドル一同「…………」

社長「プロデューサーだった彼が突然この世を去るという痛ましい出来事から二週間余り……おそらくまだ諸君らの心の傷は癒えてはいまい」

社長「だが、いつまでもこうして立ち止まってはいられん。彼の為にも、我々765プロはより強固に団結し、より高みを目指さなければならない」

社長「そこで今日は、君達をその高みへと導く新たなる仲間を紹介しようと思う。君、こちらへ」

「こんにちは。今日から765プロのプロデューサーになった○○といいます。よろしくお願いします」

アイドル一同「よろしくお願いします!」

「はは……なんか照れくさいな」

千早「? あの人……」

あずさ「どうかしたの? 千早ちゃん」

千早「いえ……確かどこかで……」

亜美「ねぇねぇ、新しいプロデューサーの兄ちゃん!」

「ん? 何だ?」

亜美「ここに来る前は何やってたの?」

真美「もしかしてニートとか?」

「違うわ! えっと……」チラッ

社長「ん? ああ、構わんよ。別に隠すことでもあるまい」

「ありがとうございます。……実は俺はこの前まで、961プロっていうアイドル事務所でプロデューサーをやっていたんだ」

アイドル一同「えーっ!」

55 : 以下、名... - 2015/07/15 20:10:07.53 z2bo+kr60 23/963

亜美「く、961プロ!?」

真美「あのジュピターとかの?」

「ああ。というか、ジュピターの担当プロデューサーは俺だった」

アイドル一同「えーっ!」

 ガヤガヤ…… ガヤガヤ……

小鳥「思ったとおりの反応ですね」

社長「まあ無理もなかろう」

律子「私も最初に聞いたときはかなり驚きましたし」

千早「そうか……だから見覚えがあったんだわ」

あずさ「千早ちゃん?」

千早「実は私、少し前にあった歌番組の収録の時に彼に挨拶したことがあったんです。その番組にジュピターも出ていて、それで」

あずさ「ああ、なるほどね」

千早「あの時は春香も一緒に出ていて……ねぇ、春香。春香も覚え」

春香「お久しぶりです! 私の事覚えてらっしゃいますか?」

「ああ、もちろんだ」

春香「ありがとうございます! 光栄です!」

千早「て……」

あずさ「流石春香ちゃんね」

千早「……ですね」

「天海春香、如月千早。あの節は世話になったな」

千早「どうも」

春香「まさかこんな形でお会いできるなんて、夢にも思っていませんでした!」

「俺もだよ。ま、改めてよろしくな」

春香「はい!」

千早「よろしくお願いします」

「……なんか、感じ良さそうな人だね」

貴音「ええ。少なくとも、邪な気は感じません」

「いや、邪って」

56 : 以下、名... - 2015/07/15 20:24:07.25 z2bo+kr60 24/963

美希「…………」

伊織「どうしたの? ぼーっとしちゃって」

美希「え? ああ、別に……」

伊織「大丈夫? あんたちょっと疲れてるんじゃない?」

やよい「美希さん、大丈夫ですか?」

美希「全然へーきなの。新しいプロデューサーも来てくれたし、今日からまたいっしょうけんめーがんばるの」

伊織「あらあら。あんたが一生懸命なんて、明日は雪かしらね」

美希「むー。でこちゃんってばひどいの」

伊織「でこちゃん言うな!」

「あの、プロデューサー。一つ質問してもいいですか?」

「ん? 何だ?」

「プロデューサーは、どうして961プロを辞めてうちに来たんですか?」

雪歩「あっ。それ私も聞きたいかも……」

「……それは……」

社長「私の口から説明しよう」

「社長」

社長「今、世間を騒がせているキラ事件。その陰にすっかり隠れてしまったが……前任のプロデューサーが亡くなる少し前の頃、アイドル業界の関係者が相次いで死亡した……というニュースがあっただろう」

「あー、そういえばありましたね」

雪歩「確かほとんどが事故や自殺……だったよね」

千早「ええ。それも、大きな事務所の社長や会長ばかり」

社長「うむ。まあキラ事件とは違い、こちらはあくまで偶然の連続だろうが……それでもこの頃、アイドル業界全体が陰鬱な空気に覆われていたのは事実だ」

伊織「まあ無理も無いわよね。なんか不吉な感じがしたもの」

貴音「真、面妖な出来事でした」

社長「そんな最中、我が事務所の前任のプロデューサーが急死した。それまで亡くなった人物に比べて地位が低かったということもあり、世間的には特にニュースにもならなかったが……」

美希「…………」

57 : 以下、名... - 2015/07/15 20:38:16.49 z2bo+kr60 25/963

社長「彼の死から一週間ほど経った頃、961プロの黒井社長から私の元に連絡があってね。『後任のプロデューサーが決まっていないなら、うちの敏腕プロデューサーを雇ってみないか』と」

春香「じゃあ、961プロの方から申し出があったってことですか?」

社長「うむ」

春香「それはまた、なんで……」

社長「実は、私と黒井社長は昔馴染みでね。かつては一緒に仕事をしていた仲だった」

社長「しかし、やがて私と黒井はアイドルの育成に対する考え方の違いから対立してしまってね。結局そのまま袂を分かつことになったんだ」

社長「それから早二十数年……もうほとんど碌に連絡も取っていなかったが、今になってこんな申し出をしてくるとは……やはり私達は、深いところではつながっていたのかもしれんな」

春香「それでプロデューサーさんはうちに移籍してきたんですか」

「ああ。まだ育成途上だったジュピターにも未練はあったが、黒井社長直々に『アイドル業界全体を活性化させるために力を貸してくれ』って頭を下げられてね。そこまでされて応じないのは男じゃない、って思ったんだ」

亜美「へー。クロちゃんはなかなか熱い漢なんだねぇ」

「亜美、流石にそれは気安く呼び過ぎなんじゃないかな……」

社長「とまあ、そういう経緯で彼はうちのプロデューサーになってくれたというわけだ。彼の辣腕ぶりは今のジュピターの活躍を見れば語るまでも無いだろう」

社長「突然の事態でありながら潔く決断をしてくれた彼、そして極めて優秀な逸材である彼を我が事務所に移籍させてくれた黒井社長の為にも、我々はより高みを目指して走り続けなければならん」

社長「さあ、今日は新たなる765プロの門出の日だ。では君、最後にプロデューサーとしての所信表明を頼む」

「えっと……まだ移籍してきたばかりですが、とにかく一生懸命頑張ります。夢は皆まとめてトップアイドル! どうかよろしくお願いします!」

 パチパチパチパチ……

59 : 以下、名... - 2015/07/15 21:01:35.70 z2bo+kr60 26/963

【同時刻・961プロ事務所/社長室】


冬馬「なあ、おっさん」

黒井「何だ」

冬馬「アイツの件……本当におっさんが決めたのか?」

黒井「何度同じ事を言わせる気だ」

冬馬「だって今まであれだけ765プロを目の敵にしてたってのに、何で今更急に……」

黒井「フン。別に高木の事を認めたわけではない。ただ今奴らに潰れられても面白くないだろうと思っただけだ」

冬馬「そりゃまあ、敵に塩を送るってこともあるかもしれねぇけどよ。でも何もアイツを渡さなくても……」

北斗「冬馬。もういいだろ。この件はプロデューサー自身も納得済みなんだから」

翔太「そーそー。僕達がとやかく言うことじゃないって」

冬馬「……チッ、分かったよ。その代わり、新しいプロデューサーはアイツくらいやれる奴じゃないとこっちから願い下げだからな」

黒井「フン。お前に言われるまでもない」

北斗「冬馬、もう行くぞ。次の仕事が始まる」

冬馬「ああ、分かってる」

翔太「じゃあまたね、クロちゃん」

 バタン

黒井「……フン」

黒井「これで満足か……?」

黒井「……キラめ……」

63 : 以下、名... - 2015/07/16 23:12:47.17 bELP4sIg0 27/963

【Lの私室】


「…………」

(リンド・L・テイラーを出演させた生中継から今日で一週間)

(何故あの時、キラはテイラーを殺さなかったのか)

(……あるいは、殺せなかったのか?)

(いや、テイラーは他の犯罪者達と同じ状態……実名も素顔も晒した状態でテレビに映っていた)

(キラがあの中継を観ていたとしたら、他の犯罪者達同様、殺すことに何ら支障は無かったはず)

(では……たまたまあの日、中継を観ていなかったとしたら?)

(いや、仮にそうだとしても、あの後『L』の存在は大きくニュースで取り上げられていたし、あの日の生中継の映像は今も無数の動画サイトにアップロードされている)

(キラが『L』の存在を認知していないはずはない……その気になれば今でも『L』であるテイラーを殺せるはず)

(しかし現実には、テイラーは今もICPOの完全監視の下、確かに生存している)

(つまりキラは意図的に『L』を殺していないということ……)

64 : 以下、名... - 2015/07/16 23:31:44.56 bELP4sIg0 28/963

(それは何故だ……?)

(もしキラがテイラーの犯罪者としての素性を知っていれば、殺すことに躊躇は無かったはず)

(しかし実際にはそうしていない……つまりキラはあくまでもテイラーを『L』として認識しており……かつ)

(犯罪者でない以上、たとえ自分を追う者であっても手には掛けない……そういうことか?)

「…………」

(あるいは、もう既にテイラーが偽物であるという可能性に気が付いている……?)

(しかし日本国内でその事実を知っているのは捜査本部の者のみ)

(では仮に捜査本部の情報が漏れていた、としたら……?)

(可能性は高くはない。だが今は少しでも手がかりが欲しい。……試してみるか)

(昨日警察から送られてきた情報……これを基にすれば……多少無理筋でも……)

「…………」

65 : 以下、名... - 2015/07/16 23:35:37.02 bELP4sIg0 29/963

【同時刻・警視庁/凶悪連続殺人特別捜査本部(キラ対策捜査本部)】


星井父「Lからの緊急招集って……何ですかね」

総一郎「さあな……未だにLの考えは読めんからな」

松田「もしかして、もうキラの正体が分かっちゃったりとか?」

星井父「あのなあ。日本全国民が容疑者なのに、どうやってもう分かるんだよ」

松田「そこはまあ、天才ならではの名推理で……」

星井父「天才ねぇ。今のところあんまりそういう風には見えないけどな」

松田「この前の生中継も空振りに終わりましたしね。……あっ。そういえば係長の娘さんの美希ちゃんも『天才アイドル』って呼ばれてますよね」

星井父「いきなり何の話をしてるんだお前は」

松田「いやあ、最近すごくよく見るから僕も段々ファンになってきちゃって。あ、今度サインお願いできますか?」

星井父「……俺の代筆で良ければやるよ。結構似てるって評判なんだぜ」

松田「えっ、係長が代筆してんすか? マジで?」

星井父「なわけないだろ。冗談だよ。つかお前こそ冗談だよな? 俺の娘のファンとか」

松田「え? マジですけど」

星井父「……マジか」

松田「はい。ダメですか?」

星井父「いやダメっていうか……普通にキモい」

松田「そんな! キモいとかひどいですよ……お義父さん」

星井父「誰がお義父さんだ! 誰が! 本当に気持ち悪いわ!」

総一郎「……二人とも、お喋りはそこまでにしておけ。ワタリが来たぞ」

星井父松田「! …………」

66 : 以下、名... - 2015/07/16 23:43:55.85 bELP4sIg0 30/963

ワタリ「捜査本部の皆様。本日は急に招集をかけてしまいすみません。Lから皆様にお話がありますので、つなぎます」

捜査本部一同「…………」

(ワタリの設置したノート型PCの画面に『L』の文字が映し出される)

『Lです。皆さんお集まりいただきありがとうございます』

『今日は早速ですが、皆さんに現時点での私の推理をお伝えしようと思います』

星井父「推理……?」

『推理の内容は、キラの人物像についてです』

松田「ほら! やっぱりLにはもう分かってるんですよ、キラの正体が」

星井父「本当か……?」

総一郎「…………」

『私が思うに……キラは、まだ子どもである可能性が高い』

星井父「こ……子ども?」

『はい。私はこの事件が起こった当初からその考えを持っていましたが――それを裏付けるデータがまだ無かったので、これまでその旨の発言は控えていました』

『ですが昨日、皆さんからご提供いただいたデータを観て、自分の考えを強くしました。こちらをご覧ください』

(ノート型PCの画面が複数の棒グラフを表わしたものに変わる)

総一郎「これは……」

『キラ事件の被害者の死亡推定時刻を表わしたものです』

『ご覧の通り、被害者の死亡推定時刻……つまりキラが殺人を行っていると思われる時間帯は、平日ではもっぱら19時頃から22時頃の間、土日はばらつきはありますが昼頃からやはり22時頃までとなっています』

星井父「つまり……深夜まで起きていないと考えられるから子ども、ってことか?」

『そうです』

星井父「そうです、って」

松田「な、なんかえらく安易ですね……」

総一郎「…………」

67 : 以下、名... - 2015/07/16 23:56:07.64 bELP4sIg0 31/963

『もちろん、これだけが理由ではありません。さっきも言いましたが、私は元々キラは子どもではないかと思っていましたので』

『その最たる理由は、このキラとしての活動そのものです』

星井父「? どういうことだ?」

『もし仮に、ある日突然、直接手を下さずに人を殺せるような能力が手に入ったら……普通の大人であれば金や地位、名誉といったものを得るために使うでしょう』

『おそらくキラは、神か何かを気取って悪人を裁いていき、世の中を良くしようとでも考えているのだと思われますが……そんなことを真面目に考えて実行に移すのは……せいぜい小学校高学年から高校生くらいまでです』

松田「……まあ、そう言われたらそうかもしれませんね」

星井父「確かにそんな能力の持ち主なら、その気になればいくらでも金も地位も手に入れられるだろうしな」

『また、これも皆さんからご提供いただいた情報ですが……これまで殺された犯罪者は、いずれも日本で情報を得ることができる者でした』

『このことを先ほどの推理と合わせると、キラはテレビやインターネットなどに比較的自由に接することのできる……ある程度裕福な家の子どもではないかと推測されます』

星井父「ふむ……」

総一郎「…………」

『――……以上が、現時点でのキラの人物像についての私の考えです。また何か分かりましたらお伝えします』

『では、私からは以上です』プツッ

68 : 以下、名... - 2015/07/17 00:01:06.66 2+HghUWN0 32/963

総一郎「――では今日はこれにて解散とする。夜勤は二組。他の者は捜査を続けるなり今日は上がって体を休めるなりしてくれ。以上だ」

星井父「緊急招集かけられた割には、なんか拍子抜けって感じの内容でしたね」

総一郎「うむ……」

松田「まあ子どもって言っても対象範囲広すぎですもんね。それなら局長や係長のお子さんだって入ってくるし」

星井父「松田。お前な……」

松田「あっ。今のは言葉のあやですよ。僕だってミキミキがキラだなんて思ってないですし」

星井父「ミキミキって呼ぶな! 人の娘を!」

松田「えー。ミキミキはミキミキでしょ」

総一郎「……Lは……」

星井父「え?」

松田「どうしました? 局長?」

総一郎「いや……なんでもない」

星井父松田「?」

総一郎「…………。(『キラは子どもである可能性が高い』……星井君の言うように、このことを伝えるためだけに、わざわざ我々を集めたのか……?)」

69 : 以下、名... - 2015/07/17 00:05:47.19 2+HghUWN0 33/963

【Lの私室】


「…………」

(多少の飛躍はあったが、これならそこまで無理の無い推理だろう)

(またキラが子どもであるという可能性は、私が実際に考えていたことでもある)

(これでもしキラが、捜査本部の情報を得る術を持っているとすれば……)

(今後のキラの裁きの傾向に、何らかの変化がみられるかもしれない)

「…………」

70 : 以下、名... - 2015/07/17 00:15:46.48 2+HghUWN0 34/963

【同日夜・星井家のリビング】


菜緒「久しぶりだね。パパがこんな時間に帰って来れたの」

星井父「ああ。今は事件の方もそれほど目立った動きは無いからな」

美希「…………」

菜緒「ふーん。じゃあまだ全然目途立ってないの? キラの正体」

美希「!」

星井母「ちょっと菜緒。食事中にそういう話は……」

菜緒「えーでも気になるじゃん。ねぇねぇ、どうなのパパ?」

星井父「まあ確かに、まだほとんど絞られてはいない。だが……」

菜緒「だが?」

美希「…………」

星井父「今日になって、Lが『キラは子どもである可能性が高い』と言い出した」

菜緒「子ども?」

美希「! …………」

71 : 以下、名... - 2015/07/17 00:25:09.53 2+HghUWN0 35/963

星井父「ああ。なんでも、これまで夜の10時以降には犯罪者を殺していないから、ってのが理由の一つらしい」

菜緒「10時以降には殺していない……その時間にはもう寝てる、だから子どもってこと?」

星井父「ああ」

菜緒「……それはちょっと強引じゃない?」

星井父「まあな」

星井母「大人でも早寝の人はいるしねぇ」

菜緒「あっ。ママものってきた」

星井母「え? べ、別にのってないわよ」

菜緒「ねぇ、美希はどう思う?」

美希「えっ。み、ミキ? ミキは……」

菜緒「うん」

美希「……よくわかんないの」

菜緒「あんたねぇ。ちょっとは考えなさいよ」

美希「だってわかんないんだもん」

星井父「まあ、いずれにせよまだ核心には迫れていないってことだ」

菜緒「だよねー。大体日本中の子どもが容疑者なら、美希だって容疑者ってことになっちゃうし」

美希「!」

星井母「もう、何バカなこと言ってるの。菜緒」

菜緒「あはは、ごめんごめん」

美希「…………」

72 : 以下、名... - 2015/07/17 00:42:23.11 2+HghUWN0 36/963

【美希の自室】


美希「…………」

リューク「ククッ。Lの推理も大したもんだな。まさか死亡推定時刻から割り出してくるとは」

美希「…………」

リューク「で、どうするんだ?」

美希「え? 何が?」

リューク「何がって……裁きの時間帯。変えないのか?」

美希「? 変えないよ?」

リューク「そうか……っておい。変えないのかよ」

美希「だって、日本中の子どもなんて何百万人もいるんだよ? その中からミキ一人が特定されるなんてありえないって思うな」

リューク「まあそりゃそうだけど」

美希「それに、夜遅くに裁きをするのは眠くて辛いの。ミキの目は夜の10時を過ぎると上のまぶたと下のまぶたがくっついちゃうの」

リューク「いや、それなら時間指定して殺せばいいだろ」

美希「え? そんなことできるの?」

リューク「……ルールの中に書いてただろ。死因を書けば、更に詳しい死の状況を書けるって」

美希「あー。なるほど。そこで何時何分何秒に死ぬって書いたらその通りになるんだね」

リューク「そういうことだ」

美希「なるほどなの。でもまあめんどくさいからいいや」

リューク「あ、そう……」

美希「あふぅ。そういうわけで、ミキはもう既に眠いの。ぱぱっと今日の分書いて寝ちゃおうっと。明日も朝からレッスンだしね」

リューク「…………」

88 : 以下、名... - 2015/07/17 23:21:03.94 ziwkRtl/0 37/963

【翌日・765プロ事務所】


美希「あふぅ。レッスン疲れたの」

春香「朝からハードだったね」

美希「おかげでもうクタクタなの」

「レッスンお疲れ様。春香。美希」

春香「あっ。プロデューサーさん!」ダッ

「ん? どうした春香?」

春香「ふふっ、えっとですね……」ゴソゴソ

「?」

春香「はい、これ! 私が焼いてきたクッキーです! どうぞ!」

「おっ。これは美味そうだな。ありがとう。後で頂くよ」

春香「えー、今食べてくれないんですか?」

「すまん、あいにく今から外出なんだ。……美希」

美希「? はいなの」

957 : 前スレ>>89訂正 - 2016/08/06 13:57:31.74 jizsduFN0 38/963

「悪いがすぐに着替えてくれ。今から、今度一緒に仕事をする相手の会社のところに挨拶しに行くことになった」

美希「えー! 聞いてなかったの!」

「すまん、さっき急に決まったんだ」

美希「もー、ミキ疲れてるのにー」

「そう言うなって。これも仕事のうちだ」

美希「はーいなの」

春香「何なら私が代わりに行きましょうか? プロデューサーさん」

「いや、悪いがこの仕事はもう美希に決まってるんだ。春香はまた今度な」

春香「ちぇっ、ざーんねん。……あっ、そうだ。美希」

美希「? 何? 春香」

春香「はい、これ。美希の分。春香さん印の特製クッキー。これ食べてお仕事頑張って!」

美希「! ありがとうなの! 春香!」

「美希。早く」

美希「わ、分かってるの! ちょっと待っててなの!」ダッ

90 : 以下、名... - 2015/07/17 23:48:07.70 ziwkRtl/0 39/963

【ヨシダプロダクション/応接室】


「なんとか間に合ったな……」ハァハァ

美希「た、ただでさえ疲れてるミキに全力ダッシュさせるなんて、プロデューサーは結構ひどいって思うな……」ハァハァ

「仕方ないだろ。タクシー渋滞につかまっちゃったんだから」

美希「それで? ミキ、まだ何のお仕事かも聞いてないんだけど……」

「ああ、それはだな……」

 ガチャッ

「失礼します」

「! ご無沙汰しています」

「ご無沙汰しています。本当に移籍されたんですね」

「ええ、まあ……色々あって」

美希「……プロデューサー?」

「ああ、えっと……こちらが星井美希。当事務所の所属アイドルです。ほら美希、挨拶」

美希「あっ、うん。えっと。星井美希です、なの。よろしくお願いしますなの」ペコリ

「ふふっ。はい、よろしくお願いします。よく存じていますよ、星井美希さん。私はヨシダプロダクションでマネージャーを務めている吉井という者です。そしてこちらが――」

91 : 以下、名... - 2015/07/17 23:59:59.18 ziwkRtl/0 40/963

「はじめまして! 弥 海砂 っていいます。ヨシダプロダクションでアイドルやってます! まだデビューして日も浅い新人ですが、どうぞよろしくお願いします!」

「よろしくお願いします。弥さん」

美希「よろしくお願いしますなの」ペコリ

海砂「…………」ジーッ

美希「?」

海砂「ほ……」

美希「ほ?」

海砂「本物だ! 本物のミキミキだ!」

美希「えっ」

吉井「ちょっとミサ。落ち着いて」

海砂「だってミキミキだよ、ヨッシー! 本物の! 765プロの!」

美希「え? え?」

海砂「すごいすごい! やだ、ちょーかわいー! キャー!」

美希「…………」

「は、ははは……」

92 : 以下、名... - 2015/07/18 00:47:54.43 tPQVCQwZ0 41/963

美希「アイドル同士のコラボCM?」

「ああ。○×ピザのCMだ。元々は弥さんにきていた話だったんだが、吉井さんに頼んで、美希も一緒に出してもらえないかと企業側に推してもらってな。それでなんとかオーケーしてもらえたってわけだ」

吉井「あなたには以前からよくお世話になっていましたからね」

「いえいえ、それはお互い様ですよ」

美希「? そうなの?」

「まあ狭い業界だからな。俺が961プロに居た頃から、よくお互いに仕事先を紹介しあったりしていたんだ」

美希「へー」

吉井「それに、今を時めく765プロのアイドルさんとのコラボCMとなれば話題性も上がるし、まだ駆け出しのミサにとってはより名前が売れるチャンスになりますからね。まさにWin-Winというわけです」

海砂「うんうん。ミサも、ミキミキと一緒のCMに出れて嬉しいしね」

美希「ありがとうなの。そう言われるとミキも嬉しいの」

海砂「ふふっ。それにしても、やっぱり本物はテレビで観るよりずっと可愛いね」

美希「え? あ、ありがとうなの」

吉井「ミサ。一応星井さんの方が先輩なんだから」

海砂「あっ、そっか。ごめんなさい。気悪くしないでね?」

美希「えっ、ぜ、全然そんなことないの!」

海砂「そう? 良かった。ふふっ」

美希「あはっ」

94 : 以下、名... - 2015/07/18 01:02:00.42 tPQVCQwZ0 42/963

「…………」

美希「? どうしたの? プロデューサー」

「いや……なんかこう、事務所の垣根を越えてのアイドル同士の交流、ってのも良いもんだと思ってな」

美希「何それ。なんかジジくさいの」

「じ、ジジくさいってお前……」

吉井「ああ、でも分かりますよ。最近色々ありましたからね、この業界」

海砂「あー、あの一連のやつね。うちも社長が亡くなったし」

「そうでしたね」

吉井「あなたのところも、確か……」

「ええ。うち、といっても前の職場ですが。役員が一人、事故死で」

吉井「大変でしたね、お互い」

「まあ不幸中の幸いといいますか、うちはほぼ社長のワンマンだったので、大きな影響は無かったですけどね」

海砂「765プロは大丈夫だったんだっけ?」

美希「え? え、えっと……」

「他の事務所とはちょっと違いますが、俺の前任のプロデューサーが……」

吉井「ああ、そうか。それであなたが移ったんでしたね」

「ええ、まあ」

海砂「なーんか、こんな感じでここんとこずっと、アイドル業界全体が暗い感じだよね。早く明るくなってほしいな」

「業界というか、今は世の中全体が暗い雰囲気に包まれているような気がしますよ。キラ事件もありますし……」

美希「…………」

96 : 以下、名... - 2015/07/18 01:16:54.72 tPQVCQwZ0 43/963

吉井「……だからこその、今回のアイドルコラボCM。そういうことですよね?」

「ええ。この二人の頑張りが、世の中を再び明るく照らし出すきっかけとなる。俺はそう信じています」

美希「なんかすごいことになってるの」

吉井「それだけ期待してるってことよ。あなた達二人に」

海砂「よーし、美希ちゃん。一緒に力を合わせて頑張ろう」

美希「うん。ミキもガンバるの。海砂ちゃんと一緒に」

海砂「あ!」

美希「? どうしたの?」

海砂「ねぇヨッシー。前から考えるように言われてたミサの公式ニックネームの件だけど……『ミサミサ』って、どうかな?」

吉井「え」

海砂「美希ちゃんの人気にあやかってさ。良いと思わない?」

吉井「……いや、あやかるのは別にいいけど、でも何もネーミングまで真似なくても……」

「良いんじゃないですか?」

吉井「え?」

「『ミキミキ』と『ミサミサ』。なんだか覚えやすいし、コラボCMにもうってつけだと思います」

美希「うん。ミキもそれが良いって思うな」

吉井「……まあ、お二人にそう言っていただけるのなら……」

海砂「よーし! じゃあ改めて、『ミキミキ』と『ミサミサ』で頑張ろう! 美希ちゃん!」

美希「はいなの! 海砂ちゃん!」

97 : 以下、名... - 2015/07/18 01:50:52.12 tPQVCQwZ0 44/963

【同日夜・美希の自室】


美希「へー。海砂ちゃんってまだデビューして日も浅いって言ってたけど、もう結構ティーン誌やファッション誌とかに出てるんだ」

リューク「…………」

美希「あっ。深夜番組のアシスタントもやってる。ふーん。今度観てみようかな」

リューク「…………」

美希「あっ! 分かったの!」

リューク「え? 何がだ?」

美希「あのヨッシーっていう海砂ちゃんの女マネージャー、ずっと誰かに似てるなーって思ってたんだけど、律子に似てるの! あのメガネとか!」

リューク「……ああ、そう……」

美希「そういえば性格も結構律子っぽかったの。なんか真面目そうなとことか」

リューク「…………」

美希「……え?」

リューク「? 今度は何だ?」

110 : >>98訂正 - 2015/07/20 02:55:18.32 gS+WRwNz0 45/963

美希「これ……海砂ちゃんのファンの個人サイト……」

リューク「ん? 何々……『今から一年前、弥海砂の両親は強盗に殺された』……? うお、マジかよ」

美希「しかもこの犯人の名前……確か……」パラパラ

美希「何日か前、まだ裁いていなかった過去の凶悪事件の犯人をまとめて裁いたときに……」

美希「! ……やっぱり……」

リューク「おー、ばっちり書いてあるな」

美希「…………」

リューク「ククッ。つまりお前は彼女の両親の仇を討った恩人ってわけか。もちろん、向こうはそんなこと知るわけもないが」

美希「…………」

リューク「こういうことならいっそ、あの子に自分がキラだって教えてやったらどうだ? 今よりもっと仲良くなれるかもしれないぞ」

美希「…………」

リューク「そうしたら、お前が今一人でやってる裁きだって、喜んで手伝ってくれるかもしれない」

美希「……何バカなこと言ってるの、リューク」

リューク「あれ」

美希「海砂ちゃんはミキのアイドル仲間で普通の友達。それ以上でもそれ以下でもないの」

リューク「……ああ、そう……」

美希「…………」

美希(そうだよ。ミキは誰の力も助けも借りない)

美希(このデスノートだけで、皆が楽しく生きていける世界を作ってみせるの)

111 : 以下、名... - 2015/07/20 03:14:04.47 gS+WRwNz0 46/963

【Lの私室】


「…………」

(先日、私は捜査本部に対してキラの人物像についての自分の見解を述べたが……結局、その後もキラの裁きの傾向に変化はみられなかった)

(この現状では、キラが捜査本部から情報を得ている可能性は低いと判断せざるを得ない)

(あわよくば、ここからキラの手掛かりをつかめるかとも思ったが……)

(これでまた振り出しか)

ワタリ『L。日本の警察に頼んでいた情報が上がってきました』

「分かった。回してくれ」

ワタリ『こちらです』

「…………」

(私が警察に調べるよう依頼していたのは、これまでキラに殺された犯罪者が日本でどのような報道のされ方をしていたか、という点)

(キラが殺人を行う上で必要となる条件を知るために依頼していたものだ)

(それによると……)

(これまで殺された犯罪者は、すべて日本で顔と名前が報道されていた者……か)

(とすると、キラが殺人を行うためには、少なくとも対象者の顔と名前の両方を知ることが必要……?)

(つまりキラは、殺したい人物がいても、その者の顔を見ただけでは殺せない……?)

(いやだが、氏名不詳の者などでない限り、そもそも犯罪者の顔だけが報道されるということは無い。そして少なくともキラが活動を始めてからそのような報道がされたケースは無い)

(ならばもう少し……捜査本部の情報が漏れていないという前提であれば……)

「…………」

112 : 以下、名... - 2015/07/20 03:31:38.07 gS+WRwNz0 47/963

【同日・警視庁/凶悪連続殺人特別捜査本部(キラ対策捜査本部)】


『捜査本部の皆さん。この度は私の依頼に応じて情報を提供して下さりありがとうございました』

『これにより、私はキラの殺人に必要な条件をほぼ特定することができました』

星井父「! 本当か」

総一郎「…………」

『ただ、これは今後のキラ捜査の基本となる情報ですので、可能な限りより明確にしておきたい』

『そこで、皆さんに報道機関を使ってやって頂きたいことがあります』

星井父「また報道操作か……? 今度は何をする気だ」

松田「まさかまた自分の身代わりを晒させる気ですかね?」

総一郎「…………」

『今回お願いしたいことは、犯罪者の報道内容の操作です』

星井父「? 報道内容?」

総一郎「…………」

『そしてできれば、今から述べる内容を明日の報道で実施して頂きたい』

『まず、これまでのキラの裁きの傾向から、裁きの対象となりそうな重大犯罪を犯した者のうち、任意の一名を偽名で報道させて下さい。この際、顔写真は本人の物をそのまま使用して報道させて下さい』

星井父「? 偽名ということは……わざと誤った報道をしろということか?」

『はい。私の考えではキラの殺人には顔と名前が必要……しかしもし仮に顔だけでも殺せるとすれば、偽名での報道でもこの容疑者は殺される筈。逆にこの容疑者が殺されなければ、名前まで必要という私の考えが裏付けられることになります』

星井父「なるほど……」

総一郎「…………」

『そして次に、それとは別に、同じくキラの裁きの対象となりそうな犯罪を犯した者のうち、比較的年齢の近い容疑者二名の顔写真を入れ替えて報道させて下さい。この際、名前については二名とも本名での報道をお願いします』

松田「さっきの逆のパターンですね」

星井父「これでもしその二名が殺されれば名前だけでも殺せる……逆に殺されなければ名前だけでは殺せない、ということになるということか」

『その通りです。もっとも殺害対象を特定するという観点からは、いくら名前が分かっていても顔が分からない相手を殺せるとはまず考えにくいですが……念の為です』

『この三名以外の者は、これまでの犯罪者と同様、本名と本人の顔写真で報道させて下さい』

『そしてこれらの報道操作にもかかわらず、誤った情報で報道した三名の容疑者全員が殺された場合は速やかに……もしその中で殺されなかった者がいた場合は、数日間様子を見、それでも何も起こらなければ訂正の報道をさせて下さい』

総一郎「…………」

113 : 以下、名... - 2015/07/20 03:39:49.13 gS+WRwNz0 48/963

星井父「Lがやろうとしていることは分かった。しかし……」

総一郎「……L。これでは犯罪者をキラの殺人の条件を知るための実験台に使っているのと同じ……やっていることはキラと大差無い。申し訳無いが、警察としては承服しかねる」

星井父「局長」

松田「確かにそうっすよね……。この捜査本部の中でも、キラが報道から犯罪者の情報を得ている以上、犯罪者個人が特定されるような報道はやめるべきだって意見も出ていますし」

『……その考えは一意見としては理解できますが、今警察がそのような措置を取ってしまうと、キラが抗議と脅しの意を込めて無作為に一般人を殺し始めたりする可能性もゼロではありません』

『犯罪者だから死んでもいい、などと言うつもりは毛頭ありません。それではまさにキラと同じ考えです』

『しかし現状のまま手をこまねいていても状況が変わらないことも確かです。これまで通り、キラの基準に沿う、一定以上の重大犯罪を犯した者が殺され続けるだけです』

『それならば、少なくとも今この状況でできることはやっておきたい』

総一郎「………」

『必ずしも人道に沿ったやり方とはいえないことは否定しません。しかしキラ事件そのものを終結させるためには必要なことです』

『どうかご理解下さい』

総一郎「……分かった。Lがそこまで言うのなら……」

星井父「局長」

松田「良いんですか?」

総一郎「良いとは思っていない。だが現時点で我々警察がキラの殺人の条件を特定できていないのも事実だ……」

星井父「それは……そうですが……」

『ご協力、感謝いたします。では、よろしくお願いいたします』

総一郎「…………」

114 : 以下、名... - 2015/07/20 03:46:25.83 gS+WRwNz0 49/963

【翌日夜・美希の自室】


美希「さて。今日も裁きの時間なの。テレビテレビっと」ピッ

リューク「もうすっかりキラとしての活動が日常の一コマになってるな」

美希「まーねー。なんだかんだでもうこの裁きを始めてから一か月近くになるし」

リューク「アイドルとしての活動の方も忙しくなってきてるっていうのに大したもんだな」

美希「その分ガッコの勉強はやばいけどね……ミキ、これでも一応受験生なのに」

リューク「受験なんてどうにでもなるだろ。たとえばデスノートを使って入学したい高校の校長を脅してみるとか」

美希「むー。ミキはそういう目的でノートを使ったりはしないの。見くびらないでほしいな」

リューク「ククッ。それは悪かったな」

TV『……本日未明、東京都渋谷区で強盗殺人事件が発生し……』

美希「おっと。早速きたの」

TV『……警察は中岡寺松四郎容疑者の行方を追っており……』

美希「中岡寺松四郎……ね。よし、顔も覚えたの」

リューク「……ん?」

美希「? どうしたの?」

リューク「いや……なんでもない」

美希「? 変なリューク。まあいいや」カキカキ

リューク「…………」

美希「よし。これでまず一人なの」

372 : >>115訂正 - 2015/08/05 00:09:33.78 UPMoMXPu0 50/963

TV『……続いて、昨日都内の銀行で発生し、行員ら三名が殺害された銀行強盗事件ですが、警察は犯人を麻薬取締法違反の容疑で行方を追っている恐田奇一郎・無職51歳と断定し……』

美希「はいはい、恐田奇一郎……っと。こんな大人しそうな顔して銀行強盗なんて、結構大胆な奴なの」カキカキ

リューク「……?」

TV『……先月15日に起きた女児誘拐殺人事件で、警察は鳩梅﨑元次郎容疑者を逮捕……』

美希「鳩梅﨑元次郎……ね。こっちはなんかいかにも悪そうな顔なの」カキカキ

リューク「……ククッ。なるほど、そういうことか」

美希「え? 何か言った? リューク」

リューク「いや、何も?」

美希「もー。人が頑張って裁きしてる時にジャマしないでほしいの。……あっ。海砂ちゃんから電話なの!」

リューク「俺はダメでミサはいいのかよ」

美希「うん。だって海砂ちゃんはミキの友達だもん」ピッ

リューク「…………」

美希「……もしもし? 海砂ちゃん? うん、まだ起きてたの」

美希「……うん。ああ、そこミキも行ってみたいって思ってたの! あはっ」

美希「うん、大丈夫なの。じゃあまた明日ね。おやすみなさいなの」ピッ

リューク「……ミサと会うのか? 明日」

美希「うん。明日オフだから駅前にできたケーキ屋さんでも行ってみない? って。ミキもちょうど明日お休みだし、前から一度行ってみたかったところだから良かったの」

リューク「へぇ。それは良かったな」

美希「さて、じゃあ残りの裁きもちゃっちゃと終わらせて寝ようっと。あふぅ」

リューク「…………」

116 : 以下、名... - 2015/07/20 04:01:40.00 gS+WRwNz0 51/963

【翌日】


美希「なんか友達と遊ぶの久しぶりなの」

リューク「そうなのか?」

美希「うん。事務所の友達とは、前のプロデューサーが亡くなってから、ちょっとしばらくそういうのはやめとこうみたいな空気になっちゃってたし」

美希「ガッコの友達の方も、ちょっと前にクラスメイトの男子が死んじゃったから、なんとなく羽目を外しにくい感じになってるの」

リューク「……どっちも自分で殺しといて……」

美希「なんか言った?」

リューク「いや、別に……」

美希「あっ、そうだ。これ、うっかり海砂ちゃんに触られないように気を付けないと。もうちょっと鞄の底の方に押しやっといた方がいいかな」グイグイ

リューク「……遊びに行く時でも持って行くんだな。デスノート」

美希「うん、そうだよ。当然なの」

リューク「前から思ってたんだが、そうやって常にノートを持ち歩くのって危なくないか? 今自分で言ってたように、何かの拍子に他のやつに触られたりする可能性もあるわけだし」

美希「それを言うなら、家に置きっぱなしの方がよっぽどアブナイの。ミキの部屋、ママがちょくちょく掃除しに入ってくるし、お姉ちゃんも勝手に入ってきてはミキの服とか借りてっちゃうしね」

リューク「……なるほどな。常に肌身離さず持ち歩いてる方が安全ってことか」

美希「そういうことなの。あっ! 海砂ちゃんなの! おーい、海砂ちゃーん!」

海砂「やっほー美希ちゃん。あっ、ちゃんと変装してるんだね」

美希「そーなの。ミキ的にはどっちでもイイって感じなんだけど、律子がしろしろってウルサくて」

海砂「それだけ売れてるって証拠じゃん。いいなあ、早くミサも売れるようになりたい」

美希「ミキ的には、海砂ちゃんならすぐ売れるようになるって思うな」

海砂「本当? 嬉しい、ありがとう! じゃ、早速行こっか」

美希「はいなの!」

117 : 以下、名... - 2015/07/20 04:25:38.82 gS+WRwNz0 52/963

【同日・Lの私室】


「…………」

(昨日報道された犯罪者で、キラの裁きの対象となりそうな重大犯罪を犯した者のうち、実際に殺されたのは顔と名前が正しく報道された者のみ)

(顔と名前のいずれかが誤った情報で報道された三名については、まだ誰も殺されていない)

(これはやはり……)

「……ワタリ。例の三名の犯罪者だが、数日間様子を見て何も無ければ……」

ワタリ『はい。その際は予定通りの対応を取る旨、警察と再度確認済みです』

「分かった。引き続きよろしく頼む」

(……さあ、どう出る? キラ……)

118 : 以下、名... - 2015/07/20 04:40:30.51 gS+WRwNz0 53/963

【数日後・美希の自室】


美希「あふぅ。今日もちゃっちゃと裁きいってみよーなの」ピッ

リューク「…………」

TV『……先日お伝えした、東京都渋谷区で起きた強盗殺人事件についてですが、容疑者の名前を誤ってお伝えしていました』

美希「……え?」

TV『正しくは『中岡字松四郎』容疑者でした。訂正してお詫びいたします』

美希「……ってことは……」パラパラ

美希「あっ。やっぱりミキ、間違った方で書いちゃってる。……ねえリューク、名前を間違えて書いちゃってたらやっぱり無効?」

リューク「ああ。無効だな」

美希「もー。二度手間になっちゃったの。ちゃんと報道してよね」カキカキ

リューク「…………」

TV『……えー、これも先日お伝えした銀行強盗事件と女児誘拐殺人事件についてですが、この二つの事件の容疑者の顔写真を取り違えてお伝えしていたことが判明しました」

美希「えっ! 取り違え!?」

リューク「…………」

TV『正しくは、銀行強盗事件の容疑者、恐田奇一郎の顔写真がこちら、そして女児誘拐殺人事件の容疑者、鳩梅﨑元次郎の顔写真がこちらとなります。訂正してお詫びいたします』

美希「……ねぇ、リューク」

リューク「ん? 何だ?」

美希「一応聞くけど、違う人の顔を思い浮かべながら名前を書いちゃった場合もやっぱり無効?」

リューク「ああ。無効だな」

美希「もー! 何なの!? こんなにいっぱい間違えないでほしいの!」カキカキ

リューク「……ククッ。不便だな、人間ってやつは。殺したい奴の顔を見ても名前が分からないとは」

美希「? どういうこと?」

119 : 以下、名... - 2015/07/20 04:53:19.89 gS+WRwNz0 54/963

リューク「ああ。そういやまだ説明してなかったな」

美希「?」

リューク「いいか、ミキ。死神とデスノートを持った人間とでは二つの大きな違いがある」

美希「二つの違い?」

リューク「ああ。そもそも何故、死神がデスノートに人間の名前を書くか知ってるか?」

美希「そんなの、ミキが知るわけないの」

リューク「……ククッ。それはな、死神は人間の寿命をもらっているからだ」

美希「? 寿命をもらう?」

リューク「ああ。たとえば、人間界で普通に60歳まで生きる人間を40歳で死ぬようにノートに書く。そうすると、60-40=20、その人間界での20年という時間が死神の寿命にプラスされるんだ」

リューク「だからよほど怠けてない限り、頭を拳銃でぶち抜かれようと心臓をナイフで刺されようと死神は死なない」

美希「ふぅん。そうなんだ」

リューク「もっとも、ダラダラと何百年も人間の名前を書く事を忘れていて死んだ死神も俺は見たし……」

リューク「俺も知らないが、死神を殺す方法ってのも存在してるらしい」

美希「へぇ」

リューク「しかし、ミキがデスノートに人間の名前を書いてもミキの寿命は延びない。これが死神とデスノートを持った人間との違いのひとつめだ」

美希「なるほどね。まあミキも流石に何百年も生きたくはないからそれはそれで良かったの」

リューク「ククッ。確かにもう散々殺しまくってるからな、お前の場合」

美希「むー。死神に言われたくないの」

リューク「ああ、すまん」

120 : 以下、名... - 2015/07/20 05:08:13.90 gS+WRwNz0 55/963

リューク「次にふたつめの違いだが……俺達死神は死神界から人間界を見下ろし、ノートに書く人間を選んでいる」

リューク「そこに多少の好き嫌いはあるかもしれないが、ほとんどがたまたま目に留まった人間だ」

リューク「じゃあ何故死神界から覗いているだけでその人間の名前が分かるかだが……」

美希「…………」

リューク「死神の目には……人間の顔を見ると、そいつの名前と寿命が顔の上に見えるんだ」

美希「! ……名前と寿命……」

リューク「そうだ。だから死神は殺す奴の名前が分からなくて困ることはないし、その人間を殺せば自分の寿命がどれだけ延びるかがはっきり分かる」

リューク「目が違う。それが俺とミキとの決定的な違いだ」

美希「…………」

リューク「そしてもちろん今、俺の目にはミキの名前と寿命が見えている」

美希「! …………」

リューク「人間界単位に直すと何年かはっきり分かる。もちろんそんな事はここまで口の裂けている俺でも口が裂けても言えない」

美希「……なるほどね。じゃあ……」

リューク「……?」

美希「もし名前が分からない犯罪者がいた場合、リュークに聞いたらそいつの名前を教えてくれるの?」

リューク「いや、あいにくだがそれもできない。死神界の掟があるからな。だが……」

美希「?」

121 : 以下、名... - 2015/07/20 05:24:40.79 gS+WRwNz0 56/963

リューク「死神は、自分の落としたノートを拾った人間の目を死神の目にしてやることができる」

美希「! 目を……死神の目に?」

リューク「ああ。ある古くから伝承されてきた取引をすることでな」

美希「と……取引って?」

リューク「死神の眼球の値段は……その人間の残りの寿命の半分だ」

美希「! …………」

リューク「つまり、あと50年生きるとすれば25年。あと一年の命なら半年だ」

美希「…………」

リューク「どうする? ミキ。この取引をすれば顔を見るだけで全ての人間の名前が分かる。そうすればもう今日みたいなことは無くなる」

美希「……リューク」

リューク「おう」

美希「確かにさっき、ミキは何百年も生きたくはないって言ったけど……だからって、寿命をみすみす減らすようなことはしたくないの」

リューク「…………」

美希「悪人達を消していき、皆が笑って生きていける世界を作るには、きっとそれなりに時間がかかると思うしね」

美希「だからそのためには、元々持ってる寿命まで減らすようなことはしたくないの。それに今日みたいなこともそう滅多には起こらないと思うし」

リューク「そうか。分かった。まあこの取引はミキがノートを持っている限りいつでも出来る。また気が向いたら言ってくれ」

美希「…………」

122 : 以下、名... - 2015/07/20 05:45:32.44 gS+WRwNz0 57/963

【翌日・Lの私室】


「…………」

(顔と名前のいずれかを誤った情報で報道していた三人の容疑者全員が、昨日、その訂正の報道を行った直後に心臓麻痺で死亡した……)

(状況的に、訂正報道を見たキラによって改めて裁きがなされたものとみてまず間違いないだろう)

(しかしこうも簡単に……これでは『私は顔と名前のいずれか一方の情報だけでは殺せません』と宣言しているようなもの)

(いや、だが当初の誤った情報による報道の時点で殺せていなかった以上、それはどのみち分かることともいえるか)

(いずれにせよ、キラの殺人には顔と名前の両方が必要……つまり、どちらか一方のみの情報では殺せない。今回そのことがはっきりと分かった)

(今後はこのことを念頭に置いて捜査を行うべき)

(そしてもちろん、この事実が意味するリスクも踏まえた上で……)

「…………」

(待っていろ……キラ)

(私は必ずお前を……死刑台に送ってみせる!)

129 : 以下、名... - 2015/07/21 00:26:11.92 JEu2SMmA0 58/963

【警察庁/凶悪連続殺人特別捜査本部(キラ対策捜査本部)】


総一郎「な……何だこれは?」

捜査員A「見ての通り辞表です」

総一郎「…………!」

捜査員A「他の事件の担当に回して頂くか、それができなければ警察を辞めます」

総一郎「……キラに殺されるかもしれないからか?」

捜査員A「はい」

総一郎「…………」

捜査員B「Lがキラの殺人の条件を特定してくれましたからね」

総一郎「キラは顔と名前が分からなければ殺せない……」

捜査員B「ええ。しかし逆に言えば、顔と名前さえ分かれば殺せる」

捜査員C「もちろん、顔と名前以外の条件がある可能性も否定はできませんが、これまでの裁きを見る限りおそらくそれは無いでしょう」

総一郎「…………」

捜査員B「私達はLとは違い、警察手帳という顔写真と名前の入った身分証明書を持って捜査をしています。堂々と顔を隠さずです」

捜査員A「キラはこれまでまだ犯罪者以外は殺していませんが、それはまだ我々捜査本部がキラに迫れていないからと考えます」

捜査員B「今後捜査が進展し、もし自分が捕まりそうになったら……私がキラなら、たとえ犯罪者でなくとも自分を捕まえようとする者は殺します」

捜査員C「捕まれば自分が死刑ですからね」

捜査員A「つまり我々はいつキラに殺されてもおかしくない……局長の仰ったとおり、これが部署異動を希望する理由です」

捜査員B「では局長、よろしくお願いします」

総一郎「…………」

130 : 以下、名... - 2015/07/21 00:32:15.18 JEu2SMmA0 59/963

【Lの私室】


「…………」

(キラの殺しの条件は分かった。これで今後ある程度キラに近づき、仮に顔を見られたとしても名前さえ知られなければ殺されることは無い)

(つまりこれからは、より直接的にキラの身辺に探りを入れる捜査も可能となるということ)

(ただそれは、私のようにどこにも顔や名前といった自分の情報を残していない者に限った話)

(常に身分証明書を携帯している警察の人間にとってはまた勝手が違うだろう)

(それに今後の捜査はキラの足取りに直結する可能性もある……現状、捜査本部の情報が外に漏れているとは考えていないが、それでもリスクは可能な限り減らしておきたい)

(そのために必要なのは……今後のキラ捜査は、外部に情報を漏らすことが無いと確信できる人間のみで行っていくこと)

(この点、今の捜査本部は捜査効率は高いが大所帯過ぎる……)

(しかしこちらから『捜査員を厳選してくれ』と切り出すのも『私はあなた方を信用していません』と言うようなもの)

(キラ捜査に警察の協力は不可欠……ここで警察との信頼関係を壊してしまうのはまずい)

(さて……どうするか……)

ワタリ『L。捜査本部の夜神局長からです。携帯電話からの発信のようです』

「携帯から? 分かった。つないでくれ」

131 : 以下、名... - 2015/07/21 00:44:40.88 JEu2SMmA0 60/963

総一郎『L。局長の夜神だ』

「お疲れ様です。携帯からとは珍しいですね。何かありましたか?」

総一郎『ああ。今は周囲に他の者がいない状況で通話している。実は今日、捜査本部から三名、異動を希望する者が現れた』

「! ……理由は?」

総一郎『このまま捜査が進めば、いつキラに殺されるか分からないから、ということだ』

「……そうですか。実は私も同じことを考えていました」

総一郎『そうなのか?』

「はい。キラが顔と名前だけで人を殺せると分かった以上、身分証明書を持って捜査している警察の皆さんが殺されてしまう可能性は十分にありますから」

総一郎『なるほどな』

「で、どう対応されたんですか?」

総一郎『……私の方から、捜査本部の捜査員全員に向けて一つの提案をした』

「? 提案?」

総一郎『ああ。……確かに今後、我々はキラに殺されるかもしれない。このような状況である以上、今ここで捜査から外れても降格などにはしない。自分の人生、家族、友の事をよく考え、そういったものを犠牲にしてでもキラと戦おうという信念のある者だけ、今から三時間後にこの捜査本部に居てくれ、と』

「! 夜神さん」

総一郎『L。あなたは勝手をされて怒っているかもしれないが、これは我々警察内部の組織体制の問題……どうか許してほしい』

「いえ……逆です。夜神さん」

総一郎『? 逆?』

「はい。私もこれからの捜査は人数を絞って行うべきと考えていました。それをどうそちらへ切り出そうかと思案していたところです」

総一郎『! そうだったのか?』

「はい。その理由はまた後ほどお話しいたします。とにかくその夜神さんの提案は私にとっては願っても無いものです。感謝します。ではメンバーが確定した段階でまた連絡して下さい」

総一郎『ああ、分かった』

132 : 以下、名... - 2015/07/21 00:49:05.59 JEu2SMmA0 61/963

【三時間後・警察庁/凶悪連続殺人特別捜査本部(キラ対策捜査本部)】


『今、そこに残っておられる方が今後もキラと戦って行く覚悟をお持ちの方、ということでよろしいですね』

総一郎「ああ。私を含めて七名が残っている」

星井父「…………」

松田「…………」

相沢「…………」

模木「…………」

伊出「…………」

宇生田「…………」

『分かりました。私は強い正義感を持ったあなた方こそを信じます』

『それでは、これから今後の捜査の進め方についてご説明します』

総一郎「……いや、待ってくれ。L」

『?』

総一郎「ここに居る者は全員、命を懸けてキラを追う覚悟を持った者だが……全員が全く同じ考えというわけではない。伊出。宇生田」

伊出「L。我々は命懸けでキラを捕まえると決心した。キラに対して命を懸ける意味は分かっているはずだ」

宇生田「しかし、あなたはいつも顔を見せず我々に指図するだけ……このままでは我々はあなたを信用して協力することができない」

『…………』

133 : 以下、名... - 2015/07/21 01:00:53.05 JEu2SMmA0 62/963

伊出「キラの殺人には顔と名前が必要……これは他でもない、L。あなたが検証してくれたことだ」

伊出「そして今後、互いに信用し協力してキラを追っていくためには……そもそもの前提として、互いに互いをキラでないと確信しあっていることが必要不可欠」

宇生田「現に世間では『L=キラ』、つまりLの二重人格という説を立てている者もいる」

宇生田「もちろん、我々がそう思っているというわけではない。だが、L。我々とともに捜査をする気があるならここに来て顔を見せ、名前も教えてほしい」

『! …………』

伊出「あなたは当然、我々全員の顔と名前を知っているだろう。なのに我々はあなたの顔も名前も知らない……これではあまりにアンフェアだ」

伊出「もしあなたが今言った条件を受け容れてくれるのなら……我々もあなたと共にキラを追うことに異存はない」

総一郎「…………」

『……すみません』

伊出宇生田「!」

『私は、いずれにせよあなた方全員の前に顔を見せることは考えていました』

『これはあなた方も仰ったように、互いに対する信用の証とするためです』

『しかし、名前を教えることだけはできません』

『これは私が世界のどこにも自分の名前を情報として残していないからということもありますが……』

『それ以上に、いかなる状況においても、キラの殺人に必要となる情報を開示するべきではないと考えているからです』

総一郎「L……」

134 : 以下、名... - 2015/07/21 01:06:55.83 JEu2SMmA0 63/963

伊出「分かりました。それならば仕方ありません。私はあなたとは組まずに、警察内部で独自にキラを追います」

宇生田「私も同じです」

総一郎「伊出。宇生田……」

伊出「局長。後の事はお任せします」

宇生田「こちらでもし有益な情報が見つかれば、必ずお伝えしますので」

総一郎「すまん……よろしく頼む」

(伊出と宇生田が捜査本部から去る)

総一郎「では、改めて……L。今この場に居る五名が、あなたを信用し、あなたと共にキラを追う覚悟を持った者達だ」

星井父「…………」

松田「…………」

相沢「…………」

模木「…………」

『分かりました。……ワタリ』

ワタリ「はい」

(『L』の文字が映し出されたノート型PCを総一郎達の方へ向けるワタリ)

総一郎「?」

星井父「なんだ?」

147 : >>135再訂正 - 2015/07/21 23:07:01.93 5dCx7/pX0 64/963

(PCの画面にメッセージウィンドウが表示され、文字が次々と入力されていく)


『今、これから起きることは
 我々七人だけの秘密にして
 頂きたい。

 先ほども言ったように、
 私が信用した、あなた方五人と
 今すぐにでも会う事を考えています。

 会う事、会った事、これからの我々の行動、
 全てを一切会話にしない。
 今ここに居ない者、もちろん警察内部、
 自分の身内や友人等にも漏らさない。

 上記の事を約束して頂けるのであれば、
 警察庁の建物からすぐの帝東ホテルまで来て下さい。
 
 私は今、このホテルの一室にいます。

 私はこれから数日おきに
 都内のホテルを移動します。

 今後、警察庁の捜査本部は
 飾りの捜査本部とし、

 私の居るホテルの部屋を
 事実上の捜査本部として頂きたい

 もちろんこれは、キラに私の顔を知られたくない
 という防衛策であり、
 あなた方とまったく同じ土俵に立つ事にはなりません。
 しかし、これが私を信用してもらい共に捜査をする為に
 今、私が歩み寄れるボーダーラインです。

 この条件で協力して頂けるなら
 二組に分かれ、30分以上の間を空けて
 ワタリに私の居る部屋の番号のメモをもらい、
 午前0時までに、ここに来て頂きたい。

 では、お待ちしております。』

148 : 以下、名... - 2015/07/21 23:12:44.53 5dCx7/pX0 65/963

【一時間後・帝東ホテル】


(ホテルの一室のドアの前に立つ総一郎と星井父)

総一郎「この部屋にLが……」

星井父「一体どんな人なんでしょうね」

総一郎「うむ……」

星井父「おっ、来たな。後発組」

相沢「お待たせしました」

松田「いよいよっすね」

模木「…………」

総一郎「よし。では行こう」

 コンコン

「お待ちしておりました。お入り下さい」

総一郎「…………」

 ガチャッ

「Lです」

総一郎「…………」

星井父「…………」

相沢「…………」

松田「…………」

模木「…………」

149 : 以下、名... - 2015/07/21 23:24:17.10 5dCx7/pX0 66/963

「? どうしました? 面食らったような顔をして」

総一郎「あ、いえ……申し遅れました。警察庁の夜神です」

星井父「星井です」

相沢「相沢です」

松田「松田です」

模木「模木です」

「よろしくお願いします。もっとも今後、その名前はこの捜査本部以外では名乗らないようにして下さい」

総一郎「え?」

「用心のためです。そして私のこともこれからは『L』ではなく『竜崎』と呼んで下さい」

総一郎「わ、分かった」

「では早速ですが……捜査の話をする前に、『この中にキラはいない』ということを明らかにする為に一人ずつお話をさせて頂きたい」

星井父「? し、しかしエ……いや、竜崎。あなたはさっき我々を信用すると……」

「もちろん信用しています。そうでなければこのように顔を出すことはしません」

星井父「じゃあ……」

「それとこれとは別の話です。キラが巧みに私を誘導し、自分の顔を出しても良いと思わせる程度にまで私を信用させたという可能性もありますから」

松田「それって結局信用してないってことなんじゃ……」

総一郎「いや、ここは竜崎の言うとおりにしよう」

星井父「局長」

総一郎「もし仮に、始めから捜査本部にキラがいて情報を得ていたのなら、今ここに残っている可能性は高い。ならば納得のいくまで調べてもらった方が我々としても安心できる」

松田「確かに。ここに残れば竜崎の顔見れたわけですしね」

星井父「分かりました。局長がそう言うのなら」

相沢「私も構いません」

模木「私もです」

「ありがとうございます。では夜神さんからこちらの部屋へ」

150 : 以下、名... - 2015/07/21 23:30:08.92 5dCx7/pX0 67/963

【数時間後】


「一人一人に尋問する様な事をして申し訳ありませんでした」

「この中にキラはいません」

総一郎「竜崎……何故いないと言い切れるんです?」

「一言でいえば、キラであるかどうか確かめるあるトリックを用意していたんですが……皆さんにはそのトリックを仕掛ける気すら起こりませんでした」

一同「…………」

 ピピピピ

「失礼」ピッ

「……わかった。こっちも終わった所だ。自分のキーで入ってきてくれ」ピッ

「ワタリが来ます」

一同「!」

 ガチャッ

「皆様、お疲れ様です。ワタリと申します。と言っても、先ほどまで一緒に居たばかりですが」

一同「…………」

ワタリ「いつもの格好だとワタリですと言わんばかりで、このホテルに竜崎がいるとばれますので」

総一郎「な、なるほど……」

ワタリ「こうして私の顔をお見せできるのも、竜崎が皆さんを信用した証拠です」

星井父「は、はい……」

松田「ハハハ……」

151 : 以下、名... - 2015/07/21 23:35:00.84 5dCx7/pX0 68/963

ワタリ「竜崎、言われた物をお持ちしました」

「皆さんにお渡しして」

(持っていたボックスを開いて総一郎達に見せるワタリ)

ワタリ「皆さんの新しい警察手帳です」

総一郎「!?」

星井父「新しい?」

松田「名前も役職もでたらめ……」

相沢「偽名の警察手帳、ってわけか」

「キラは殺人に顔と名前が必要……その前提で命懸けでキラを追うんです。このくらい当然です」

総一郎「さっき『この本部以外で名前を名乗らないように』と言っていたのはこういうことか」

「はい。今後、外でどうしても名前を出す時はその偽名の警察手帳でお願いします」

星井父「しかし警察が偽造証というのは……」

総一郎「いや、キラが殺人に名前も必要ならば、これは我々の命を守る為に大いに効果がある……これは持っていた方がいい」

松田「私もそう思います」

相沢「うむ」

「では……いよいよ本題に入らせて頂きます。今後の捜査の進め方について」

152 : 以下、名... - 2015/07/21 23:53:18.30 5dCx7/pX0 69/963

「まず基本的な事ですが……今のまま、キラの裁きの対象となっている犯罪者の情報だけを基にキラを追っていても、おそらく永久にキラは見つけられません」

総一郎「! …………」

「それは言うまでもなく、キラがテレビやネットといった誰でも簡単にアクセスできる情報から裁きの対象となる犯罪者を選んでいるからです」

星井父「まあ、そうだな。このままじゃ日本全国民……いや、下手すりゃ世界中の人間がキラ候補だ」

「ですので現状、キラを絞り込める要素があるとしたらただ一つ。『キラの手による犯罪者以外の被害者』だけです」

相沢「『犯罪者以外の被害者』……そんなのいるのか?」

松田「キラはこれまで、少なくとも表立っては……犯罪者以外は殺してないですよね。あのエ……竜崎の身代わりとして生中継に出演していた者も殺さなかった」

「はい。でも本当にいないかどうかは調べてみない限り分かりません」

星井父「だが竜崎。仮にいたところで死因は心臓麻痺だぞ? それをキラの手によるものとそうでないもの、どうやって判別する?」

「もちろん一人や二人の心臓麻痺死者だけでは無理でしょう。しかし百人や二百人、あるいは千人や二千人……」

「それだけの数の心臓麻痺死者を網羅的に調べれば、その中から、何らかの共通項を持った者達が浮かび上がるかもしれません。同じ地域、同じ会社、同じ学校……」

星井父「…………」

「そしてその共通項はキラに……神を気取り、犯罪者殺しをしているキラではなく、あくまで普通の社会生活を営んでいる一人の人間としてのキラに、結びつく可能性があります」

154 : 以下、名... - 2015/07/22 00:43:35.22 ZwEK8URp0 70/963

「またもしキラが犯罪者以外の者を殺していたとしたら……そこには必ず何らかの『動機』があるはずです。神を気取った犯罪者殺しとは、また別の動機が」

相沢「怨恨か?」

「そうですね。その可能性が一番高いと思います。キラが普通に社会生活を送っている人間なら、日常の中で殺してやりたいと思う人間の一人や二人いてもおかしくはありません。そして言うまでもなく、それはキラを特定する上での大きな手がかりとなります」

松田「竜崎。別の可能性として、金や地位を得る目的、というのも考えられるのでは?」

「一応の可能性としてはそれもあると思います。ただ私はキラはまだ子どもではないかと推理しているので、可能性としては低いと思っています」

松田「あっ。そういえば言ってましたね……」

総一郎「だが仮にキラが子どもだとしても、特に個人的な怨恨等は無く、単純に自分の殺人の能力を試しただけ……という可能性はあるんじゃないか?」

「はい。もちろんその可能性はあります。その場合はキラ個人を絞り込むのは難しいでしょうね。たまたま目に留まっただけの赤の他人を殺した可能性もあるわけですから」

相沢「しかしそんなことを言って捜査の範囲を広げようとしなければ、いつまで経ってもキラを捕まえることはできない……というわけか」

「そういうことです。だから私達は、たとえ99%無駄になると分かっていても、残り1%がキラにつながる可能性があるのなら、その可能性を信じて徹底的に捜査するしかありません」

総一郎「ああ、そうだな。現状での目ぼしい手掛かりが無い以上、しらみつぶしにやるしかない。で、竜崎。具体的にはどうする?」

「そうですね。とりあえず……キラの最初の犯行と思われる新宿の通り魔の殺人……その日から過去一年間分の日本全国の心臓麻痺死者を洗い出しましょう」

星井父「!」

松田「い、一年間分!?」

「はい。また死因は『心臓麻痺』に限らず、心不全、心筋梗塞、心臓発作……その他、現在行われているキラによる殺人と実質的に同視しうる死因により亡くなった者全てです」

相沢「それはまた膨大な数になるな」

松田「しかも日本全国ですか」

「はい。現状、キラが日本の……いえ、この地球上のどこに居るのか、まだ特定できていませんので」

星井父「…………」

155 : 以下、名... - 2015/07/22 01:20:43.63 ZwEK8URp0 71/963

「ただ、私はやはり少なくとも日本にはいるだろうと思っています。理由は前に述べたとおり、キラは日本国内でしか報道されていなかった、件の新宿の通り魔を最初に殺しているからです。ですので、まずは日本国内を徹底的に洗いたい」

総一郎「過去の分から、というのは何か理由があるのか?」

「はい。普通の人間が、ある日突然顔と名前だけで人を殺せるような能力を持ち、またその能力を実際に使うとしたら、まず最初に思いつくのは自分の身近にいる人間で、殺したいと思っている人間を殺すことだと考えられるからです」

「逆に、神を気取った犯罪者殺しを始めた後で、思い出したように身近な人間を殺すとは少し考えにくいですから」

松田「なるほど」

「また先ほど夜神さんが仰ったように、犯罪者殺しを始める前に適当な人間で能力を試していた可能性もありますしね。この場合には、先ほども言ったようにキラ個人を特定しうるほどの確証は得にくいと思われますが、キラの居る地域をある程度絞り込むくらいならできるかもしれません」

相沢「竜崎。あなたの考えはよく分かった。しかしそこまで具体的に捜査方法を考えていたのなら、捜査員がもっと大勢いたときにこの捜査を始めていても良かったのでは? この人数でも可能ではあるが、掛かる時間が段違い……」

「いえ……逆です。私はむしろこうなるまで、今言った捜査方法を取るつもりはありませんでした」

相沢「? それはどういうことだ?」

総一郎「そういえば竜崎……あなたは今日、『これからの捜査は人数を絞って行うべきと考えていた』と言っていたな。そのことか?」

「はい。この捜査方法はいわば小細工無しの正面突破。その代わりもし的中した場合には、一気にキラに肉迫しうる可能性があります」

松田「確かに」

星井父「…………」

「しかしそれは同時にリスクでもある。もし身内……つまり捜査本部にキラに通じる者がいた場合、その情報がそのままキラに伝わる可能性がある」

「そうなればキラを捕まえるどころか、追う者は逆に殺されてしまう可能性が高い。そしてキラは逃げ、また生き残った捜査員の多くも殺されることを恐れ、委縮してそれまでのようにキラを追えなくなると考えられます」

総一郎「……だから、あなたは捜査本部が今の状態になるまで待っていたということか。捜査本部の人間が死を恐れず悪に立ち向かい、そしてあなたを信用し、またあなたも信用できる人間だけの集まりになるまで……」

「はい」

「ここに残り、命懸けでキラを追うと言っていただけた皆さんとだからこそ……私はこの方法でキラを追うことができます」

156 : 以下、名... - 2015/07/22 01:33:53.06 ZwEK8URp0 72/963

相沢「そう言ってもらえるのは光栄だが……しかし現実的にはなかなか大変な作業だな」

松田「まあこの人数で過去一年分、日本全国の心臓麻痺死者ですからね」

総一郎「しかしやるしかあるまい。今は竜崎の言うように正面突破しかないんだ」

「はい。私も探偵としてのネットワークを活用して可能な限り調べます。皆さんもどうかよろしくお願いします」

星井父「…………」

模木「係長?」

星井父「ん? な、何だ。模木」

模木「いえ……何か思い詰めてらっしゃるように見えたので……」

星井父「あ、ああ……これでまた当分家に帰れないと思うとな……ハハハ」

模木「そうですか」

星井父「…………」

星井父(新宿の通り魔の事件の直前……美希の事務所のプロデューサーが……)

星井父(それに確か、同じ頃に美希のクラスメイトの男子も……)

星井父(…………)

星井父(いや、どうせどちらもキラ事件には無関係だろうし、調べればすぐに分かること……あえて今言う必要も無いだろう)

星井父「…………」

158 : 以下、名... - 2015/07/22 01:39:04.61 ZwEK8URp0 73/963

【同時刻・美希の自室】


リューク「ククッ。珍しいな。こんな時間になってもまだ起きてるなんて」

美希「だって明日テストなのにまだ範囲の半分も終わってないんだもん……あふぅ」

リューク「大変だな。中学生ってのも」

美希「ねぇリューク。問題を見ただけで答えが分かる目って無いの? ミキ、そういう目なら取引考えるんだけど……」

リューク「残念ながら無いな」

美希「あーんもー! 誰か助けてなのー!」

167 : 以下、名... - 2015/07/22 23:48:04.52 6ivkHY360 74/963

【翌日・765プロ事務所からの帰路】


美希「くぁあ……あふぅ」

春香「随分大きなあくびだね。美希」

美希「んー……今日テストだったから、昨日ほとんど寝てないの」

春香「えっ! 美希が? 試験中すらも余裕で爆睡してそうな美希が!?」

美希「……流石にそれは失礼って思うな」

春香「あはは、ごめんごめん」

伊織「でも確かに、あんたが睡眠時間削ってまで勉強してたなんて驚きね」

美希「むー。そりゃするよ。ミキだって一応受験生だもん」

美希(裁き始めてからいきなり成績下がったらパパやママに変に思われそうだし……)

伊織「? なんか言った?」

美希「なんでもないの」

伊織「そう? ならいいけど。でも確かにもう受験シーズンなのよね。私も気合入れて頑張らないと」

168 : 以下、名... - 2015/07/23 00:02:32.82 0FyKElvl0 75/963

やよい「伊織ちゃん、頑張ってね」

伊織「ありがとう、やよい。でも来年はあんたも受験なんだから、今のうちから少しずつでも準備しといた方が良いわよ」

やよい「……えへへ~」

伊織「? 何? その笑い」

やよい「実は私、とっておきの秘策があるんだ」

伊織「秘策?」

春香「もしかして、もう通う塾を決めてあるとか?」

やよい「いえ、私の学校の友達に、ものすごく頭の良いお兄さんがいる子がいるんです。そのお兄さん、今高3らしいんですけど、全国模試は毎回一位、東大合格間違い無し、って」

美希「全国模試一位!?」

伊織「それはまたすごいわね」

春香「じゃあやよいの秘策っていうのは……」

やよい「はい! 友達に頼んで、来年そのお兄さんに家庭教師お願いしようかなーって。あ、もちろんお金はちゃんと払いますよ!」

伊織「なるほど、確かにそれは名案かもね」

春香「でもそこまで頭良い人だったら、授業を受ける側の理解が追いつかなさそうな気もするなあ」

やよい「あう……確かにそれはあるかもです。私、学校の成績かなり下の方だし……」

美希「大丈夫なの、やよい。ミキだって特別学校の成績良くないし!」

伊織「何のフォローなのよそれは……」

174 : 以下、名... - 2015/07/23 00:33:27.85 0FyKElvl0 76/963

春香「あはは。まあ受験生諸君頑張れって感じだね」

やよい「あれ? でも春香さんも来年高3じゃ」

春香「やめてやよい! 私はまだ夢見る少女でいたいの! 数Ⅱとか数Bとか見たくないの!」

やよい「ご、ごめんなさい」

伊織「にひひっ。じゃあこっちの受験が終わったら散々プレッシャーかけてあげるわよ、春香」

春香「あうぅ、やめてぇ……」

やよい「春香さん、来年は受験生同士、一緒に頑張りましょう!」

春香「うん、そうだね。やよい。一緒に頑張ろう! ていうか、私もそのお兄さんに勉強見てもらいたいな……」

やよい「じゃあ明日、学校で友達に聞いてみましょうか?」

春香「え、いいの?」

やよい「はい。とりあえず聞いてみるだけなら」

春香「ありがとう、やよい! じゃあ早速よろしく!」

やよい「はーい、わっかりましたー!」

春香「よーしよし。これでもう春香さんの未来は開けたも同然ですよ! 同然!」

伊織「ったく、もう。調子良いんだから」

春香「えへへ」

美希「…………」

伊織「? どうしたの? 美希」

美希「ん? んーん、別に? ただやっぱり眠いなあって。あふぅ」

伊織「もう。勉強も大事だけど、夜はちゃんと寝なきゃだめよ? 無理して体調崩したら元も子も無いんだからね」

美希「はーいなの」

美希(こういう時間が、いつまでも続けばいいのにな)

373 : >>180再訂正 - 2015/08/05 00:10:56.34 UPMoMXPu0 77/963

【三週間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


「皆さん、過去一年分、日本全国の心臓麻痺死者の調査お疲れ様でした」

「現時点で、我々が検知した該当の心臓麻痺死者――これには心不全、心筋梗塞、心臓発作などキラによる殺人と実質的に同視しうる死因により亡くなった者全てを含みますが――その数は15万2435人です」

「毎年厚生労働省が発表している心臓麻痺等の死亡者の総数から推計するに、おそらく全量の7~8割方に相当するデータは収集できたものと思われます」

「今後も残りのデータを収集する作業は継続しますが、もう既にこれだけの数のデータが集まっていますので、並行してこれらのデータの分析も行っていきたいと思います」

「ここまで来れたのも、ひとえに皆さんの不断の努力の賜物です。本当にありがとうございます」

総一郎「いや、竜崎……この短期間でここまでの量のデータが集められたのは、あなたの探偵としてのネットワークによるところが大きい。こちらこそ感謝する」

相沢「L、コイル、ドヌーヴ……まさか世界の三大探偵といわれるこの三名が全員竜崎だったとはな」

「私は元々持っていたものを利用したに過ぎません。ですが一応、私が他の名前も持っていることは秘密にしておいてください」

松田「しかし、年代別、性別、地域別、職業別、死亡時期……可能な限りあらゆる項目でこれらの死亡者を類型化してみましたが、まだこれといって目立った共通項はありませんね」

星井父「強いて言えば、そのほとんどが高齢者ってことか……まあある意味当然だが」

総一郎「そうだな。だがまあこの数だ。後は竜崎の言うように、残りの2~3割の死亡者のデータを収集しつつ、既にあるデータについては地道に分析を重ねていくしかあるまい」

「そうですね……キラ事件開始に近い時期に死亡した者達が何らかの共通した傾向を持っているなどということも、今のところは特に……ん?」

相沢「? 竜崎?」

181 : 以下、名... - 2015/07/23 23:08:09.51 PGv9cuOp0 78/963

「…………」

(収集したデータのうち、最も新しい日付のものは新宿の通り魔がキラに殺された日の前日のもの)

(この日、日本全国で計412名が心臓麻痺等により死亡。そのうち398名が元々心臓に病を患っていたと思われる高齢者)

(残り14名のうち、それまで全く心臓に関する病気を患っておらず、既往歴も無かった者は4名。そしてその中で死因が文字通り『心臓麻痺』と分類された者は1名)

(その1名は『765プロダクション』というアイドル事務所のプロデューサーだった者……)

(…………)

相沢「どうしたんだ?」

「いえ……ただ少し……」

相沢「?」

「『765プロダクション』……この名前、どこかで……」

星井父「!」

(そうか。確か、この捜査本部を日本の警察内に設置してもらった当初、捜査員及びその家族のプロフィールを警察からもらった時に――……)

総一郎「竜崎。それは――」

星井父「局長。私から」

総一郎「! 星井君」

星井父「竜崎」

「はい」

星井父「どうせ知られていることだろうし、隠すことでもないから言う。その事務所は俺の娘・星井美希が所属している事務所だ」

「ええ、そうでしたね。今思い出しました。では星井さん。あなたはこのプロデューサーの件は……」

星井父「ああ。もちろん知っていた」

「…………」

958 : 前スレ>>182訂正 - 2016/08/06 14:00:36.74 jizsduFN0 79/963

星井父「変に勘ぐるなよ。言わなかったのはどう考えてもキラ事件には結びつかないからだ。そもそも死んだプロデューサーは犯罪者でもなんでもない。俺も娘が事務所に入るときに一度だけ会ったことがあるが、まだ若いのに人当たりの良い男だった。どう考えてもキラに標的にされるような人間じゃない」

「……そうですか」

松田「そ、そうですよ。ミキミキの事務所がキラ事件に関係してるわけないじゃないですか」

「ミキミキ?」

星井父「……娘のアイドルとしてのニックネームだ。しかし松田、今その呼び方をするのはやめろ」

松田「す、すみません」

「……松田さんは765プロダクションのアイドルに詳しいんですか?」

松田「えっ。ああ、まあ……それなりに。765プロ以外のアイドルも好きですけどね。特に最近のイチオシはヨシダプロの……」

「ではこの頃、765プロダクション関係で他に何か心当たりのある出来事はありませんでしたか?」

松田「えっ」

星井父「おい竜崎。お前……」

「別に娘さんの事務所を疑っているわけではありません。ただ新宿の通り魔が殺された日の前日に、文字通り『心臓麻痺』で死亡していたのは765プロダクションのプロデューサーだけだったから聞いているだけです」

星井父「…………」

松田「そうっすね……まあでも、765プロに限っての話は多分無いと思いますけど……あっ」

「?」

松田「そういえばこの頃、アイドル事務所の関係者が相次いで死亡した、っていうニュースがありましたよ」

「! …………」

星井父「…………」

183 : 以下、名... - 2015/07/23 23:36:49.30 PGv9cuOp0 80/963

相沢「ああ、そういえばワイドショーが中心となって何度か取り上げていたな。確かほとんどが事故や自殺っていう」

松田「そうなんすよ。それも大手事務所の社長や会長ばかり。もっともその後にキラ事件が起こったんですっかり陰に隠れちゃいましたけどね。それに最近はアイドル事務所関係者で新たに誰かが亡くなったっていう話も聞かないですし」

「……ワタリ。その事件、というか出来事についての情報を」

ワタリ『はい』

(LのPC画面に複数のネット記事の情報が表示される。それを素早く目で追うL)

「アイドル事務所関係者……それも大御所ばかりが事故や自殺により相次いで死亡……」

「その数、実に三か月間で八人……」

星井父「竜崎。それは確かに奇妙な出来事だったが、死因が事故や自殺である以上、キラ事件と結びつけるのは無理があると思うが……」

「キラが心臓麻痺以外でも人を殺せるとしたら?」

星井父「! …………」

総一郎「心臓麻痺以外で……?」

相沢「竜崎。それは流石に飛躍では……」

「そうでしょうか? 今我々に分かっているのはキラの殺しの条件だけです。具体的な殺人の方法はまだ解明できていません。単にこれまでキラによって殺されたと思われる者の死因が心臓麻痺だっただけで、それはキラが心臓麻痺以外では殺せないとする論拠にはならないはずです」

松田「それはまあ、確かに……」

星井父「…………」

「それならば、少しでも可能性がある以上は徹底的に調べるべきです。以前から言っているように、そうしなければいつまで経ってもキラの糸口はつかめません」

星井父「……しかし……」

184 : 以下、名... - 2015/07/24 00:16:02.88 WJqItyho0 81/963

「三か月間で八人ものアイドル事務所の大御所が事故や自殺により死亡」

「それとほぼ同時期に、765プロダクションのプロデューサーが心臓麻痺により死亡」

「そしてその直後にキラ事件が始まり、被害者は全て心臓麻痺により死亡」

「……現状では、これらの事件ないし出来事の間に相互に関連性があるのかどうか分かりません。なので、それをはっきりさせるためには調べてみるしかありません。たとえ99%が無駄になるとしても、最後の1%がキラにつながる可能性があるのなら、です」

総一郎「うむ……そうだな……」

星井父「…………」

「では相沢さんと松田さんは765プロダクションのプロデューサーが亡くなった日の一年前から現在に至るまで、既に報道されている分も含め、日本全国全てのアイドル事務所の関係者で死亡した者について調べて下さい。死んだ者の地位、死因は問いません」

「そして夜神さんと模木さんは……同じく765プロダクションのプロデューサーが亡くなった日の一年前から現在に至るまで、765プロダクションの役員、従業員、所属アイドルに限定して、その周囲で死亡した者について重点的に調べて下さい。本人、家族、友人、知人全て含めてです。死因は問いません」

星井父「! …………」

総一郎「竜崎。そこまで捜査範囲を広げるのか」

「765プロダクションは所属アイドル12人の小さな事務所です。この規模なら従業員も多くはないでしょうから、そこまで時間は掛からないはずです」

総一郎「いや、そういう意味ではなく……」

星井父「竜崎。何故そこまでうちの娘の事務所を?」

「……仮に、件のアイドル事務所関係者連続死亡事案に含めて考えるとしても、765プロダクションのプロデューサーだけは少し性質が異なります」

「まずこの事務所だけ、社長や会長などではなく一従業員が死亡しています。しかもその死因も他の事務所の者とは異なり、キラ事件の被害者と同じ心臓麻痺です」

「そしてこのプロデューサーの死亡直後にキラ事件が発生しています」

「さらにこのプロデューサーの死を最後に、現在報道されている限りにおいては、アイドル事務所関係者で新たに死亡した者はいないとのことです。……もっとも、この点の正確な情報については相沢さん達の捜査結果待ちですが」

「以上が、765プロダクションの関係者を他の事務所の関係者より詳しく調べる理由です。別に星井さんの娘さんが在籍しているからではありません」

星井父「…………」

星井父(この流れでは、美希のクラスメイトの男子の件もすぐに……どうせ調べられるなら今言っておくべきか?)

星井父(いやだが美希の名前が何度か挙がった後でそれは……そもそも美希がキラ事件に関係しているはずがないし……)

星井父(…………)

「なお、これらの捜査については星井さんは外れて下さい。娘さんは元より、星井さん自身も捜査対象者に入ることになりますので。星井さんは引き続き、残りの心臓麻痺死者のデータを収集するとともに、アイドル事務所関係者以外の心臓麻痺死者間において、何らかの共通項がみられないかの分析をお願いします」

星井父「……分かった……」

204 : 以下、名... - 2015/07/25 17:07:30.11 WBvK/i+Y0 82/963

【翌日・765プロ事務所へ向かう道中】


春香「おはよう、美希」

美希「あっ、春香。おはようなの」

春香「今日も寒いね」

美希「うん。冬真っ盛りってカンジなの」

春香「そして近づく受験の足音……」

美希「うぅ……それは言わないでほしいの」

春香「あはは。ごめんごめん。あ、そういえばこの前のテストはどうだったの?」

美希「まあぼちぼちってカンジかな。一夜漬けで詰め込んだ割には」

春香「そっか。志望校には手が届きそう?」

美希「そうだね。元々ミキは家から近くてそんなに難しくないトコ受ける予定だったから、多分大丈夫なの」

春香「そっかー。真や雪歩ももうすぐセンター試験だし、本当受験シーズン真っ只中って感じだね」

美希「春になったら、入れ代わりで春香も受験生デビューだしね」

春香「そうなんだよね……はあ、気が重いなあ」

美希「そういえば、この前やよいに頼んでた家庭教師の話はどうなったの?」

春香「ああ、多分やってもらえるって」

美希「よかったの。これで春香も東大合格間違い無しなの」

春香「東大て。どんだけハードル上げるのよ」

美希「あはは。あ、着いたの」

205 : 以下、名... - 2015/07/25 17:21:31.07 WBvK/i+Y0 83/963

【765プロ事務所】


春香「おはようございます」

美希「おはよーございますなの」

「ああ、おはよう。春香。美希」

春香「ん?」

(事務所内に見知らぬスーツ姿の男性が2名立っており、社長、律子、小鳥と何か話している)

春香「プロデューサーさん。そちらは……」

「ああ、えっと……」

(春香と美希に気付いた2名の男性が、スーツの内ポケットから黒い手帳のようなものを取り出す)

総一郎「警察庁の朝日です」

模木「模地です」

春香「えっ」

美希「け、警察?」

社長「ああ、おはよう君達。ちょっと急なんだが、この刑事さん達が我々に聞きたいことがあるということでね。今日事務所に来た者から順に、一人ずつ話を聞いてもらうことになった」

美希「!?」

春香「そ、それって……何かの事件の捜査ってことですか?」

社長「ああ、例のキラ事件の関係だそうだ」

美希「! …………」

春香「キラ事件って……それで何でうちに?」

総一郎「詳しくは後ほどご説明いたしますが……キラ事件開始に近い時期に、こちらでプロデューサーをされていた方が心臓麻痺でお亡くなりになったとの情報を得たものでして。おそらくキラ事件とは無関係だろうとは思うのですが、念の為、お話をお聞かせ願いたいということです」

春香「前のプロデューサーさんの……」

美希「…………」

「まあ、あくまで参考人としての事情聴取って位置付けだ。ちなみに俺と社長、律子、音無さんはもう話をした」

美希「!」

「もっとも俺は入れ代わりで入った身だから、前のプロデューサーについて話せることはほとんど無かったけどな」

総一郎「そういう次第ですので、ご協力をお願いします。なおお話し頂いた内容の秘密は厳守しますので、その点はご安心下さい」

春香「あ、はい。そういうことなら……」

美希「…………」

206 : 以下、名... - 2015/07/25 17:30:48.60 WBvK/i+Y0 84/963

美希(どういうことなの……? 何でいきなり警察が?)

美希(まさかもうミキに辿り着いて……? いや違う、そんなことありえない)

美希(証拠はノートしか無いんだから、ミキがキラだって分かるはずないの)

美希(だからこれはさっき、朝日って人が言ってたように、前のプロデューサーがキラ事件開始の直前に心臓麻痺で死んだから……それで、念の為に話を聞きに来ただけ)

美希(そう。ただそれだけのこと……別にミキを疑っているわけじゃない)

美希(でもこの人達、キラ事件の捜査で来たってことは、パパと一緒に仕事してる人達ってことだよね)

美希(ってことは当然、ミキがパパの子どもだってことも知っているはず)

美希(パパはこのことを知っているの?)

美希(最近ほとんど帰って来ないし、帰って来ても夜遅くてミキとはすれ違いばっかだからまともに話せてないけど……)

美希(もしパパが知っているとしたら……)

美希「…………」

社長「えー、天海君はこの後レッスンの予定だったな。刑事さん達もできる限り君達の都合を優先して下さるとのことなので、まずは星井君から頼む。天海君はレッスンの準備を」

美希「!」

春香「は、はい。じゃあ頑張ってね。美希」

美希「う……うん」

総一郎「では星井さん。こちらへお願いします」

美希「…………」

207 : 以下、名... - 2015/07/25 17:44:58.00 WBvK/i+Y0 85/963

【765プロ事務所/社長室】


(社長室の中央部分にパイプ椅子が三つ置かれており、そのうちの一つに美希が、向かい合う残りの二つに総一郎達が腰掛ける)

総一郎「星井美希さん、ですね」

美希「は、はい……なの」

総一郎「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。先ほどもお話ししたように、ちょっとお話をお聞きするだけなので」

模木「知っていることだけをお話し頂ければ大丈夫ですので。また、言いたくないことは言わなくても結構です」

美希「わかりました、なの」

美希(パパのことは何も言ってこない……まさかミキがパパの子どもだってことを知らない? いや、そんなはずは……)

美希(……まあ、いいの。今はこっちに集中しないと……)

総一郎「では早速ですが、以前この事務所に務められていたプロデューサー……□□さんの事についてお聞きします」

美希「! …………」

総一郎「□□さんが亡くなられた時――○月×日の19時頃ですが――この時、あなたはどこで何をしていましたか?」

美希「えっ。そ、それって」

総一郎「ああ、別にあなたを何か疑っているとか、そういうわけではありません。この事務所の方全員にお聞きしていることですので」

模木「ご容赦下さい」

美希「……えっと、確か……普通に家……自分の部屋に居ました、なの」

総一郎「部屋で何をしていたか、覚えていますか?」

美希「うーん……あんまりよく覚えてないけど、多分漫画読んだり、スマホいじったり……そんな感じでゴロゴロしてたと思います、なの」

総一郎「なるほど。ではそのことを証明できる方はいますか?」

美希「多分マ……お母さんが家に居ました、なの。だからミキが家に居たことは聞いてもらえれば分かると思います、なの」

総一郎「分かりました。では□□さんが亡くなったことを知ったのはいつですか?」

美希「えっと……その次の日、朝事務所に来たときに社長から聞きました、なの」

総一郎「ではそこで初めて知ったと」

美希「はい、なの」

総一郎「分かりました」

美希「…………」

208 : 以下、名... - 2015/07/25 17:53:34.20 WBvK/i+Y0 86/963

総一郎「では次に、この□□さんという方ですが……生前、どういう方でしたか?」

美希「どういう、って?」

総一郎「星井さんから見て、良い人だったか、それとも悪い人だったのか。何でも結構です。あなたの印象をお聞かせ下さい」

美希「え、えっと……」

模木「これは□□さんが亡くなったことがキラ事件と関係があるのかどうかを調べるために聞いているものです。あなたもキラ事件の事はご存知ですね?」

美希「は、はい、なの。テレビでよくやってるし……」

模木「テレビ等で報道されている通り、キラは現在、犯罪者を心臓麻痺で殺していると考えられます。そしてこの□□さんは犯罪者ではありませんが、キラ事件が始まる直前に心臓麻痺で亡くなっている」

美希「…………」

模木「なのでもし□□さんも犯罪者達と同じようにキラに殺されたのだとすれば、殺されるだけの何らかの理由があったと思われます。犯罪者ではないとしても、キラの標的になってしまうような理由が。それを知るための質問だとご理解下さい」

美希「えっと、じゃあ前のプロデューサーが裏で悪いことをしてなかったかとか、そういうこと……?」

総一郎「簡単に言えばそういうことです。たとえば、キラが犯罪者以外に不道徳な人間や人に迷惑を掛けるような人間も殺しているとすれば、そういった人達はこれまで『キラ事件の被害者』としては検知されていませんので」

模木「つまり、これはキラの殺害対象がこれまでの我々警察の認識よりもっと広かったとすれば、という仮定の下での捜査です」

美希「なんかちょっと難しいけど……要は前のプロデューサーがキラに殺されてもおかしくないような悪い人だったか、っていうことだよね」

総一郎「そうです。何か心当たりはありませんか? どんな些細な事でも結構です」

美希「…………」

209 : 以下、名... - 2015/07/25 18:13:06.99 WBvK/i+Y0 87/963

美希(どうしよう……本当の事を言うべき?)

美希(社長や律子、小鳥は前のプロデューサーがミキ達にセクハラしていたことは知らない……多分、正直に話したとしても『仕事の出来はあまり良くなかった』とかそんな程度のはず)

美希(でも仮にここでミキがウソをついても、この後春香が同じ質問をされるんだろうし、さらにその後には他の皆も……)

美希(そうなったら、もし皆が全部正直に話した場合、ミキだけが違うことを言っていたらかえって怪しまれる……)

美希(そもそも他の皆が警察に対してウソをついたりするとは思えないし……『話した内容の秘密は守る』って言われてる以上、ウソをついてまで前のプロデューサーをかばう理由も無いの)

美希(そうするとやっぱり……正直に言うしか……)

美希(いや、大丈夫……前のプロデューサーにひどいことされたり言われたりしてたのはこの事務所のアイドル全員だし、ミキだけが特別疑われたりすることは無いはず)

美希(直接身体を触られたりしてたのは、ミキ以外だと春香と雪歩くらいだったけど……それでも、ミキだけが前のプロデューサーを恨んでいたように思われることは無いはず……多分……)

美希(…………)

総一郎「星井さん?」

美希「は、はいなの」

総一郎「どうですか? 先ほどもご説明したように、ここで話して頂いたことの秘密は厳守します。他の方に言いにくいようなことでも、安心して話して頂いて構いませんよ」

美希「は、はい……なの」

総一郎「…………」

模木「…………」

211 : 以下、名... - 2015/07/25 18:30:43.43 WBvK/i+Y0 88/963

美希「正直に言うと……前のプロデューサーからは、よくセクハラをされていました……なの」

総一郎「!」

模木「セクハラ……ですか」

美希「はい、なの」

総一郎「どういうことをされていたのか、具体的にお聞かせ願えますか」

美希「う、うん……。えっと、たとえば、事務所で二人きりのときとか、仕事先に向かう車の中とかで、いきなり肩や腰に触ってきたりとか……」

総一郎「肩や腰……他には?」

美希「……太ももやおしりも、時々……」

総一郎「頻度……回数でいうと、どのくらいですか?」

美希「えっと……毎日とかではなかったけど、週に3~4回はあったかな……」

総一郎「なるほど」

美希「…………」

総一郎「あなた以外にも、セクハラ被害を受けていた人はいますか?」

美希「うん。春香や雪歩も、ミキと同じように身体触られたってよく言ってたの」

総一郎「天海さんと萩原さん……ですね」

美希「うん。触られてるところを直接見たことはないけど」

総一郎「他の方は、そういう被害には?」

美希「身体触られたっていう話は聞いてないけど、言葉でセクハラっぽいこと言われたりとかは、多分うちのアイドルの子は全員……」

総一郎「言葉でのセクハラ……それはどういう内容ですか?」

美希「えっと……人によって違うと思うけど、たとえば『なんでそんなに胸がデカいんだ』とか、逆に『何でそんなに胸が無いんだ』とか……言われた相手が傷つくようなこと、いっぱい」

総一郎「では、あなたが言われて嫌だったことにはどんなことがありますか?」

美希「今言った『なんでそんなに胸がデカいんだ』とか、『胸に栄養がいってるから頭に栄養がいってない』とか……『いっそ俺が揉んでもっと大きくしてやろうか』とか……そういう感じ」

総一郎「なるほど。でも先ほどのお話からすると、実際に胸を触られたことはなかったということですか?」

美希「うん。それは流石にやばいって思ったんじゃないかな」

総一郎「そうですか」

美希「…………」

217 : 以下、名... - 2015/07/25 18:57:19.36 WBvK/i+Y0 89/963

総一郎「ありがとうございました」

美希「いえいえ、なの」

総一郎「ではすみませんが、もう少しだけ……」

美希「…………」

美希(まだあるの? もう嫌なの……)

総一郎「□□さんが亡くなった日の一年前くらいから現在に至るまで、あなたの周囲で亡くなった方はいますか? 家族、友人、知人全て含めてです」

美希「!」

模木「これは心臓麻痺に限らず、死因は問いません」

美希「えっと、それって……ミキを疑ってるってコト……?」

総一郎「いえ、そうではありません。ただ□□さんがキラに殺されたのだとすれば、その他にも765プロさんの関係者の方が被害に遭っている可能性がありますので、念の為の確認です」

美希「でもそれなら心臓麻痺で亡くなった人だけでいいんじゃ……?」

総一郎「仰る通りです。ただキラの殺人の方法はまだ完全には特定できていませんので、これも念の為です」

美希「…………」

美希(まさか警察は『キラは心臓麻痺以外でも人を殺せる』ということまでもう掴んでいるの?)

美希(いや、これは警察というよりLって人の考え?)

美希(でもそれこそ、デスノートのルールを知らない限り絶対に分からないはず……ミキは心臓麻痺以外で誰かを殺したことはないし……)

美希(いや今はそれより、この状況をどう切り抜けるかを考えないと……)

美希(クラスメイトのAの件……でもここで言わないと流石に怪しまれる……)

美希(当然だけど、少なくともパパはとっくに知ってるし……もしパパがもう既にこの人達に話しているとしたら、ミキが知らないって言った場合すぐにそれがウソと分かる)

美希(もしパパがまだ言っていなくても、警察が調べればどうせすぐに分かるだろうし……)

美希「…………」

218 : 以下、名... - 2015/07/25 19:13:45.12 WBvK/i+Y0 90/963

美希(ならやっぱりもう正直に言うしか……でもこのことが分かったら、キラの容疑者ってもうミキ一人だけになる……?)

美希(前のプロデューサーとA……どっちとも関わりがあるのは、ミキしかいないし……)

美希(どうしよう? 最悪、今ここでこの刑事さん達を……ってバカ、そんなことしたら一層ミキが疑われるだけ)

美希(それにノートは今持ってるこの鞄の中に入ってるけど、どのみちこの状況で二人分の名前を書けるわけもないし……)

美希(じゃあやっぱりここは……もう……)

リューク「……ミキ」

美希「? (リューク?)」

リューク「いつでも目の取引はできるからな。コンタクトを入れるのと変わらない。数秒で済む」

美希「…………。(取引? 何でこのタイミングで?)」

総一郎「星井さん?」

美希「あっ、ご、ごめんなさいなの。(もう……今色々考えてるんだからちょっと黙っててほしいの!)」

リューク「……ククッ」

総一郎「どうですか? 特にいないようであれば……」

美希「あ、えっと……い、います、なの」

総一郎「! それはどなたですか?」

美希「えっと……ミキと同じクラスだった、A君……」

総一郎「亡くなったんですか?」

美希「はい、なの」

総一郎「死因は?」

美希「……確か、心臓麻痺……」

総一郎「! それはいつ頃ですか?」

美希「えっと確か、前のプロデューサーが亡くなった日の……次の、次の日……かな」

総一郎「! ………」

模木「それは……」

美希(……驚いてる? ってことは知らなかったの?)

美希(じゃあパパは……Aの事、この人達には言ってなかった……?)

219 : 以下、名... - 2015/07/25 19:27:19.26 WBvK/i+Y0 91/963

総一郎「前のプロデューサーが亡くなった日の……翌々日……か」

模木「ちょうど、ぎりぎり前回の調査範囲外ですね」

総一郎「うむ……」

美希「? (調査範囲外……?)」

総一郎「ああ、失礼しました。ではそのA君の事についていくつか質問させて下さい」

美希「は、はい……なの」

総一郎「まず、そのA君というのはどういう子でしたか?」

美希「えっと……特にどうってことは……別に不良とかでもなくて、普通の子だったの」

総一郎「では性格でいうと、大人しい方ですか?」

美希「ううん、どっちかというと結構騒がしいタイプ……かな」

総一郎「なるほど。ではA君が他のクラスメイトに迷惑を掛けたりしていたことなどはありましたか?」

美希「え、えっと……」

美希(どうしよう……本当の事を言うと、ますます……でももしこの刑事さん達がミキのクラスの他のコ達にも聞き取りしたら……)

美希(ダメなの。ここでウソをついても結局どこかでボロが出る)

美希(もうここは賭けに出るしか……)

美希「迷惑っていうか……ちょくちょく、女子にセクハラっぽい事を言って困らせたりしてたことはあったかな……」

総一郎「セクハラ……具体的には?」

美希「えっと、たとえば、『昨日休んでたのは生理か?』とか『スカートもっと短くしたらどうだ』とか……そんな感じの、色々」

総一郎「なるほど。ではあなたもそういうことを言われたことはあったんですか?」

美希「まあ……ミキはアイドルもやってたから、その関係で時々……」

総一郎「どんなことを言われたんですか?」

美希「えっと、『もっと際どい水着着て写真集出せよ』とか『雑誌で見る方が胸デカく見えるけど、何か入れてるのか』とか……」

総一郎「そうですか。ではそれ以外には? 言葉以外に、身体を触られたりとかはありましたか? あなた自身でも、あなた以外の生徒でも」

美希「そういうのは無かったの。他の子にも、多分してなかったと思う」

総一郎「分かりました。では次に、A君が亡くなった当日の事について教えて下さい」

美希「はい……なの」

222 : 以下、名... - 2015/07/25 19:45:58.59 WBvK/i+Y0 92/963

総一郎「A君が亡くなったのは……○月△日でよろしいですか」

美希「うん」

総一郎「時間で言うと、何時頃ですか? それと、亡くなった場所は?」

美希「えっと……二限の始まる前だったから……朝の10時前くらいかな。場所は教室」

総一郎「A君が亡くなった時、あなたも教室にいましたか?」

美希「う、うん……いました、なの」

総一郎「ではその時の状況について教えて下さい」

美希「えっと……確か、急に何人かの男子が騒ぎ出して、何事かと思って近付いてみたら、A君が床に倒れてて……」

総一郎「そのまま亡くなった、と」

美希「多分……その後先生が来て、すぐに救急隊員の人を呼んで、そのまま運ばれて行ったから……それからどうなったのかまでは分からないけど」

総一郎「なるほど。ちなみにこの日、あなたはA君と何か話したりはしましたか?」

美希「確か……朝、始業前にミキのところに来て何か言ってきたような気はするけど……いつものことかと思って、適当にあしらったから……内容までは覚えてないの」

総一郎「そうですか」

美希「はい、なの。(一応、これくらいは言っとかないと後で矛盾出てきそうだし……)」

総一郎「分かりました。模地、他に何かあるか?」

模木「いえ。私の方からは特に」

総一郎「それでは、今日はこのへんで。長時間にわたり、ご協力ありがとうございました」

美希「今日は、ってことは……またあるの?」

総一郎「ええ。今後の捜査の状況次第では、またお話をお伺いさせて頂くかもしれません。そのときはまたよろしくお願いします」

模木「よろしくお願いします」

美希「……わかりました、なの」

374 : >>223訂正 - 2015/08/05 00:12:16.84 UPMoMXPu0 93/963

【765プロ事務所/執務室】


春香「あっ。美希」

美希「春香」

春香「どうだった?」

美希「んー。別にフツーだったの。ただ知ってることを話しただけ」

春香「そっか。お疲れ様」

美希「ありがとうなの」

総一郎「えー、では次、天海さん。お願いします」

春香「はーい。じゃあ行ってくるね」

美希「うん。行ってらっしゃいなの」

(総一郎に促され、社長室へと入っていく春香)

美希「…………」

リューク「ククッ。大ピンチってやつじゃないのか? コレ」

美希(確かに……このままだと……)

「美希? 大丈夫か? 少し顔色がすぐれないようだが……」

美希「ん? ううん、大丈夫なの。ただちょっと慣れないことだったから、疲れちゃっただけ」

「はは。まあそうだよな。俺も初めてだよ、こんなの」

美希「あはっ。……さてと、じゃあミキ、レッスン行くね」

「ああ。でも疲れてるようなら、少し休憩してからでもいいぞ。一応、先生には事情を言ってあるから」

美希「ありがとう、プロデューサー。でも大丈夫なの」

「そうか。じゃあ頑張って来い」

美希「はーいなの」

 ガチャッ バタン

美希「…………」

224 : 以下、名... - 2015/07/25 20:07:43.59 WBvK/i+Y0 94/963

【同日夕刻・765プロ事務所からの帰路】


「いやー、でもびっくりしたなあ。まさかいきなり警察の人が来るなんて」

雪歩「私、あんな近い距離で男の人二人から色々質問されたから、すごく気疲れしちゃった……」

「はは、確かに雪歩には別の意味で辛かったかもね」

雪歩「でも警察の人も大変だよね。こんな風に、心臓麻痺で亡くなった人を一人ずつ、順々に調べてるのかな……」

「うーん、どうなんだろ? 少なくとも前のプロデューサーの場合は、たまたま亡くなった日がキラ事件の時期に近かったからだと思うけど。確か、あの朝日って刑事さんが最初にそう言ってたし」

美希「…………」

「ねえ。美希は何か知らないの?」

美希「えっ」

「いや、美希のお父さんって警察官だったよね? だから何か聞いてないかなって」

美希「えっと……ちょっとわかんないの。最近、パパあんまり帰って来てないし……」

「そっか。残念」

美希「…………」

雪歩「でもこれって、私達の中にキラがいるかも、って思われてるってことなのかな……」

美希「!」

「いやー、流石にそれはないと思うけど」

雪歩「でも前にも同じような話したと思うけど、前のプロデューサー、外面だけは良かったから、あの人の悪いところを知ってるのは多分私達だけだって……」

春香「……ねぇ、もうやめない? そういう話するの」

「! 春香」

雪歩「春香ちゃん」

225 : 以下、名... - 2015/07/25 20:21:25.57 WBvK/i+Y0 95/963

春香「警察の人達がどういう考えのもとで私達に聞き取りをしたのかなんて、私達がいくら考えても分かるわけないんだし……大体私達の中にキラがいるはずないんだから、考えても仕方ないよ」

「でも春香、前に『前のプロデューサーはキラに殺されたのかも』って言ってなかった?」

春香「あ、あの時はだって、まさかこんな風に本当に刑事さんが来たりするなんて思ってもみなかったし……なんていうか、実際にこういうことになると、考え過ぎるとかえって良くないかなって」

「まあ、それもそうだね。ボク達が考えてどうにかなることでもないし」

雪歩「そうだね。それに私達の場合、キラ事件よりもっと大事な事が目の前に迫ってるし……ね。真ちゃん」

「もちろん分かってるよ、雪歩。もう10日切ったもんね」

春香「ああ、センター試験だね」

雪歩「うん。これから二人で一緒にファミレスで追い込みする予定なんだ」

春香「そっか。頑張ってね」

「ありがとう。じゃあそういうわけで、ボク達こっちだから。また明日ね、春香。美希」

雪歩「バイバイ、春香ちゃん。美希ちゃん」

春香「うん。またね」

美希「…………」

「美希?」

美希「えっ。ああ、うん……またね、なの。真くん、雪歩」

「大丈夫? なんか疲れてない? 美希」

美希「ううん。へーきなの」

「そう? ならいいけど。じゃ、またね」

美希「うん。また明日」

(ファミレスの方に向かって歩いて行く真と雪歩)

春香「どうする? 美希。私達もどっかで晩ごはん食べてく?」

美希「あー、今日はやめとくの。ミキも一応受験生だし、帰って勉強しないと」

春香「そっか、了解。美希も頑張ってね」

美希「うん。ありがとうなの、春香」

美希(…………)

226 : 以下、名... - 2015/07/25 20:34:39.65 WBvK/i+Y0 96/963

【同日夜・星井家】


美希「…………」

美希(まさかこのドアを開けたらパパがミキを待ってて、『美希、お前を逮捕する』とか……)

美希(な……ないない! そんなことあるはずないの!)

美希(大体こんな風に家の前で立ち止まってるところを誰かに見られた方が怪しまれるの)

 ガチャッ

美希「……ただいま、なの」

星井父「おー、お帰り。美希」

美希「!」

星井父「ん? どうした? 面食らった顔して」

美希「あ、え、ええと……パパがこんな時間に家に帰って来てるのって久しぶりだから、ちょっとびっくりしたの」

星井父「はは、それもそうだな。すまんすまん。たまたま仕事を早く切り上げられてな」

美希「そ、そうなの」

星井母「美希、もうこの後すぐにごはんでいい? 今ちょうどできたところなんだけど」

美希「うん」

星井母「じゃあちょっと待っててね」

美希「お姉ちゃんは?」

星井母「今日は大学のサークルの飲み会だって」

美希「そう」

星井父「…………」

美希「…………」

227 : 以下、名... - 2015/07/25 20:57:21.51 WBvK/i+Y0 97/963

美希(パパは何も言ってこない……)

美希(どうして? まさか知らないの? 今日あの刑事さん達がうちの事務所に来たこと……)

美希(もしかして、パパ、キラ事件の担当から外れたのかな……?)

美希(でももしパパが知っているとしたら……ミキがそれを言わずに黙っているのは……)

美希(…………)

美希「ね、ねえ……パパ」

星井父「ん?」

美希「えっと、今日ね。ミキの事務所に刑事さん達が来たの」

星井父「!」

美希「確か、朝日さんって人と、模地さんって人。前のプロデューサーの事とか、色々聞かれて。パパ、何か知ってる?」

星井父「……いや、パパ、今ちょっと別の仕事をやっててな」

美希「え? そうなの? じゃあもうキラ事件の担当じゃないの?」

星井父「んー、まあそんな感じかな。ハハ……」

美希「……ふぅん……」

美希(パパ……なんか隠してる……? でもここでミキが深く突っ込むのもおかしいし……)

星井父「…………」

星井父(今の捜査状況……765プロに比重を置いた捜査がされている事は美希には話せない……局長達がどこまで美希に話したのかも分からないし……)

星井父(本当は『お前が疑われているわけじゃないから安心しろ』と言ってやりたいが……しかし俺がそれを言うと、俺が捜査状況を知っていることが美希にばれてしまう……)

星井父(どのみち話せないのなら、知らないふりをしておいた方が良い……中途半端に情報を与えると、かえって不安を煽ることになりかねない……)

星井父(……すまん、美希……)

星井母「はい、お待たせ。どうしたの? 二人とも押し黙っちゃって」

美希「え? んーん、なんでもないの。いただきまーす!」

星井父「はは。落ち着いて食べろよ。美希」

星井母「なんか久しぶりね。こうして親子で食卓を囲むの」

美希「お姉ちゃんがいないけどね」

星井父「じゃあ今度は菜緒もいるときに帰って来るようにするよ」

美希「本当? パパ」

星井父「ああ、約束する」

星井母「大丈夫なの? 気軽にそんなこと言っちゃって」

星井父「ああ。前よりは仕事も落ち着いてきたからな」

星井母「そうなの? それならいいけど」

美希「…………」

228 : 以下、名... - 2015/07/25 21:19:03.62 WBvK/i+Y0 98/963

【二時間後・美希の自室】


美希「…………」

リューク「あれ? ミキ。今日の裁きはお休みか?」

美希「…………」

リューク「まあ、今の状況だと下手に動かない方が良いか」

美希「……ううん。裁きはするよ」パラッ

リューク「お、するのか」

美希「だって『765プロの関係者に聞き取りした直後に裁きが止まった』なんてことになったら、ますます疑われるの」

リューク「ククッ。確かにな。じゃあ同じ理由であの刑事達も殺さないってことか」

美希「そうだよ。そんなことしたら、うちの事務所の中にキラがいるって言ってるようなものなの」

リューク「なるほどな。まあでもどのみち……」

美希「?」

リューク「おっと、なんでもない。危うく口が滑るところだったぜ。ククッ」

美希「? なんなの? リューク」

リューク「いや、本当に何でもない。忘れてくれ。あ、それよりお前もリンゴ食うか? 美味いぞ」シャクシャク

美希「いらないの。死神の食べかけなんて」

リューク「……ああ、そう……」

美希「…………」

(ネットのニュース記事を読む美希)

美希「実子を窒息死させた疑いで逮捕……皮梨響子……」

美希「……皮……梨……」プルプル

リューク「おいおいミキ。手が震えてるぞ?」

美希「う、うるさいの!」

リューク「ククッ。今日の一件で相当動揺しているようだな。まあ無理も無いか」

美希「…………」

美希(今、警察はどこまでミキを疑っているの……?)

美希(前のプロデューサーの件、Aの件……おそらくもうどちらもLに伝わった)

美希(でもこれだけではまだミキ=キラっていう証拠にはならないはず)

美希(このデスノートが押さえられない限りは……)

美希「……隣人をナイフでめった刺しにして殺害……柾原省吾……」

238 : 以下、名... - 2015/07/26 09:36:20.58 VEXgVeMI0 99/963

【一週間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


「……皆さん、ご報告ありがとうございました」

総一郎「…………」

相沢「…………」

模木「…………」

松田「…………」

星井父「…………」

「…………」

(アイドル事務所関係者については……既に報道されている者以外で、ニュースになっていたアイドル事務所関係者連続死亡事案に関連しそうな死亡者はいなかった。また765プロダクションの前任のプロデューサーの死亡以降、新たに亡くなった者もいない)

(そして、765プロダクションの方は……)

(心臓麻痺で亡くなった前任のプロデューサー……社長、事務員、同僚の女性プロデューサーからは一様にその仕事能力を疑問視する声が……しかしコネで入社したがゆえに誰も彼に注意が出来なかったという実態)

(そして所属アイドルからは……その全員から、彼による何らかのセクハラ被害を受けていたとの証言が得られた。無配慮な言動によるものがほとんどのようだが、その中で身体への接触までされていたのが……星井美希、天海春香、萩原雪歩の三名)

(以上のことから、強弱はあれど、一応、当時在籍していた765プロダクションの関係者全員に前任のプロデューサーを殺害する動機はあったといえる)

(もう一点、765プロダクション関係者の周辺での死亡事案については……)

(近親の高齢者の死亡など、特段キラと無関係と思われるものが大半だったが……ただ、一人だけ)

(何の予兆も前触れも無く、ある日突然、心臓麻痺で死亡した者がいる。しかもキラ事件の開始とほぼ同じタイミング……新宿の通り魔が殺された日の翌日に)

(その人物は区立△△中学校三年の男子生徒……765プロ所属アイドル・星井美希のクラスメイト)

(またその男子生徒は、普段から性的な言動で女子生徒をからかうことが多く、星井美希もその対象となることが間々あった)

(この事実は星井美希自身の供述に加え、他のクラスメイト数名への後日の聞き取り調査からも裏付けられたとのこと)

(これらの事実が意味するのは……)

「…………」

星井父「…………」

239 : 以下、名... - 2015/07/26 09:45:08.63 VEXgVeMI0 100/963

「……星井さん」

星井父「…………」

「美希さんのクラスメイトの件、あなたは知っていましたね」

星井父「ああ。妻から聞いていた」

「だがあえて今まで言わなかった……」

星井父「前任のプロデューサーの件もあったし、娘に変にバイアスを掛けられたくなかったからな。それにいずれ分かることだろうとも思っていた」

「そうですね。捜査官としての立場を別にすれば、一般的な父親の心理としてはそれが自然だと思います」

星井父「…………」

「しかし実際どう思われますか?」

星井父「どう、とは?」

「765プロダクションの前任のプロデューサー、新宿の通り魔、そして区立△△中学の男子生徒。この三名の死亡日は全て連続しています。そしてその死因は全て心臓麻痺です」

星井父「…………」

「新宿の通り魔は別にしても、765プロダクションの前任のプロデューサーと区立△△中学の男子生徒。この両名と接点があったのは星井美希さんただ一人」

「さらにいずれの人物に対しても、美希さんが少なくとも好意的な感情は持っていなかったであろうことが推測されます」

星井父「…………」

「これらの事実を踏まえて、どう思われますか」

星井父「だからどう、というのは」

「娘さんがキラであるという可能性についてどう思われますか、という意味です」

星井父「! …………」

240 : 以下、名... - 2015/07/26 09:57:58.75 VEXgVeMI0 101/963

「…………」

星井父「確かに、美希が現時点でそのような疑惑を掛けられるのは仕方がないことだとは思う」

総一郎「星井君……」

松田「係長……」

星井父「俺は前任のプロデューサーの件も、美希のクラスメイトの件もいずれも知っていた。しかしたまたま時期と死因が重なっただけで、キラ事件には到底結びつくはずが無いと思っていたし、仮に結びついたとしても、美希とは全く無関係だろうと思っていた」

「だから知っていたけどあえて言わなかった。そういうことですね?」

星井父「そうだ。いずれの人物に対しても、美希には殺す動機なんて無いと思っていたからな。……今日の、局長達の報告を聞くまでは」

総一郎「星井君……」

「では、今は考えが変わった……と?」

星井父「いや……それでも美希が人殺しなんてするはずがない。そう思っていることに変わりは無い。だが……」

「? だが?」

星井父「俺は美希が前任のプロデューサーにセクハラされていたことも……クラスの男子からそんなからかいをされていたことも全く知らなかった。今までずっと、誰よりも美希の事を理解していたつもりだったのに……だ」

「…………」

星井父「だから、もし俺もまだ知らないような美希の別の一面があるとすれば、あるいは……。さっきからずっと、そんな考えが頭の中をよぎっているのは事実だ」

松田「そ、そんなことないっすよ! 係長!」

星井父「松田」

松田「ミキミ……美希ちゃんがキラなんて、そんなことあるわけないじゃないっすか!」

星井父「……しかし……」

松田「しっかりして下さいよ! 父親が娘を信じないでどうするんですか!」

星井父「松田。気持ちは嬉しいが、俺は美希の父親である前に一人の警察官であり、このキラ対策捜査本部の捜査員だ」

松田「係長……」

星井父「だから……竜崎。どうかあなたの気の済むまで、娘を捜査してほしい」

松田「! 係長」

総一郎「星井君」

「…………」

242 : 以下、名... - 2015/07/26 10:22:37.36 VEXgVeMI0 102/963

相沢「まあ、そうだな……。係長の娘さんとはいえ、嫌疑がある以上、捜査は捜査として、しないわけにはいかないだろう」

総一郎「うむ……」

「そうですね……ただ現状ではまだ状況証拠しかありませんし、単に相対的にみて、美希さんが一番疑わしいだけというレベルに過ぎません」

星井父「竜崎」

「前任のプロデューサーだけなら、少なくとも身体を触られていた天海春香や萩原雪歩と同程度の動機ということになるでしょうし……男子生徒の方も、美希さんだけが被害に遭っていたというわけでもなく、またそのからかいの程度も殺意まで生じさせるレベルであったかというと正直疑問です」

「ただ現状で美希さんが一番疑わしいのは今言った通りですので……とりあえず、もう少し彼女の身辺を洗うことにします」

「そういうわけですので、模木さんは引き続き、美希さんのクラスメイトの残り全員に対する聞き取りをお願いします」

模木「はい」

「相沢さんと松田さんは、美希さんの周囲で死亡した者が他にいないか、可能な限り過去に遡って調べて下さい」

相沢「分かった」

松田「やりましょう。係長の為にも」

星井父「松田……」

「夜神さんは、美希さんと天海春香、萩原雪歩の三名に少し比重を置きつつ、当時在籍していた765プロダクションの関係者全員と前任のプロデューサーとの間の人間関係についてもう少し詳しく調べて下さい」

総一郎「……ああ、分かった」

「そして星井さんは……」

星井「分かってる。引き続き、残りの心臓麻痺死者のデータ収集と、アイドル事務所関係者以外の心臓麻痺死者間における共通項の有無の分析……だろう。俺が自分の娘の捜査をするわけにはいかないからな」

「はい。申し訳ありませんがよろしくお願いいたします」

「私も、美希さんだけにこだわらず、キラへの手がかりが他に無いかを横断的に調べてみます。では今日はこれで解散とします。お疲れ様でした」

総一郎「…………」

243 : 以下、名... - 2015/07/26 10:29:29.41 VEXgVeMI0 103/963

【キラ対策捜査本部のあるホテルからほど近くの路上】


 ピピピピ……

総一郎「? 非通知の着信?」

総一郎「はい」ピッ

『もしもし。竜崎です。朝日さんですか』

総一郎「ああ、朝日だ。どうした?」

『今、お一人ですか?』

総一郎「ああ、一人だが?」

『では大変申し訳ありませんが、今すぐ誰にも言わずに一人で捜査本部に戻って来て下さい。朝日さんにだけお話ししたいことがあります』

総一郎「……分かった。実は私もあなたに話したいことがあったんだ」

『そうですか。ではすみませんがよろしくお願いいたします』

総一郎「ああ。すぐに行く」ピッ

288 : >>244修正 - 2015/07/27 23:25:57.79 OG427H770 104/963

【キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


総一郎「竜崎」

「お手間を取らせてしまいすみません。夜神さん」

総一郎「いや、いい。それより話とは」

「夜神さんの方から先にどうぞ」

総一郎「……分かった。端的に言って、今はやはり星井君の娘さん……星井美希を徹底的に調べるべきだと思う」

「…………」

総一郎「竜崎も言っていたが、彼女と接点のある人物が二人も、しかもそのいずれもがキラ事件開始とほぼ同じタイミングで心臓麻痺死なんて怪し過ぎる」

総一郎「先ほど、あなたは私に当時在籍していた765プロの関係者全員と前任のプロデューサーとの間の人間関係の精査を指示したが、今はそれより星井美希に絞って捜査した方が……私も彼女の身辺に限定した捜査を行った方が良いと思う」

「……夜神さん」

総一郎「? 何だ? 竜崎」

「素晴らしいです」

総一郎「え?」

「私が夜神さんにお話ししようとしていたことは、今夜神さんが私に仰ったこととほぼ同じです」

総一郎「! では竜崎。あなたも……」

「はい。私も今は可能な限り星井美希に焦点を絞って捜査すべきと考えています。彼女は現時点において限りなく黒に近いグレーです」

総一郎「そうだったのか。では、先ほどの私への指示は……」

「はい。あれは他の捜査員の方の目を逸らすために出したダミーの指示です。本当の指示は今からお伝えします」

総一郎「……分かった。では頼む」

245 : 以下、名... - 2015/07/26 10:53:49.03 VEXgVeMI0 105/963

「はい。他の捜査員の方には黙って、星井美希の部屋……いえ、星井係長の自宅全体に監視カメラと盗聴器を設置します。夜神さんには私と共にその監視をして頂きたい」

総一郎「! か……監視カメラと盗聴器!?」

「はい」

総一郎「い……いくらなんでもそれは無理だ。竜崎。もしばれたら人権侵害どころか完全に犯罪……」

「絶対にばれないように取り付けます」

総一郎「し、しかし……」

「先ほども言いましたが、今一番キラとして疑わしい者が星井美希であることは間違いありません」

「そして仮に星井美希がキラであるとした場合、彼女は以前リンド・L・テイラーの挑発をかわしている」

「つまりこちらがいくら罠を張っても、それには乗ってこない可能性が高い。そうすると、現状と同様の捜査を続けて状況証拠だけを積み重ねていっても、おそらく決定的な証拠は掴めないままでしょう」

「ならばもう殺人の現場……今彼女がキラとして裁きを行っている場面を直接押さえる他ありません」

総一郎「理屈は理解できるが……しかしそれならせめて、星井君の了承を……」

「いえ。それは無理です」

総一郎「無理?」

246 : 以下、名... - 2015/07/26 11:10:15.43 VEXgVeMI0 106/963

「はい。星井さんは優れた捜査官ですが……自分の娘の事となると明らかに私情を優先させています。現に彼は、前任のプロデューサーの件も、娘のクラスメイトの件も、いずれも知っていたのに我々には伝えていなかった」

「伝えれば娘に確実に嫌疑が掛かる。いずれ知られることだとしても、それを少しでも先延ばしにしたい……あわよくば、我々が見落とすことを期待していたものと考えられます」

総一郎「…………」

「しかしそれは娘を想う一人の父親の感情としては極自然なものだと思います。ですので私はこのことで特に彼を咎めようとは思っていません」

「ただ捜査については話が別です。我々の目的はキラを捕まえること。その為には常に最善の一手を打っておく必要がある」

「星井さんは先ほど『気の済むまで娘を捜査してくれ』と言っていましたが……だからといって、年頃の娘の私生活を、赤の他人である私達に24時間監視されることを呑むとは到底思えません。また仮に一度は呑んだとしても、監視が続く中で『もうやめてくれ』などと言い出さないとも限らないですし、耐え切れなくなって星井美希本人に事実を打ち明けてしまう可能性すらあります」

総一郎「…………」

「そんな形で、キラの殺人の証拠を押さえるチャンスをみすみす棒に振ることだけは絶対に避けたい」

「また他の捜査員の方も、星井さんに同情してこの捜査には反対する可能性が高い。だから夜神さん。あなただけにお伝えしました」

「あなただけは、私情を排して真の正義のために最善の行動を選択して頂けるものと確信しているからです」

総一郎「…………」

249 : 以下、名... - 2015/07/26 11:30:50.73 VEXgVeMI0 107/963

総一郎「竜崎」

「はい」

総一郎「本当にばれないように設置できるんだな?」

「はい。絶対にばれません」

総一郎「設置の期間は?」

「そうですね……とりあえず七日間としますが、状況により早く撤去することも延長することもありえます」

「そしてカメラを撤去する場合はあわせて必ず盗聴器も撤去することとし、盗聴器だけをこっそり残すようなことは絶対にしません。これでどうですか?」

総一郎「……分かった。あなたを信じよう。竜崎」

「ありがとうございます。夜神さん。……ワタリ」

ワタリ「はい」

「盗聴器、カメラ、モニターの準備にどれくらいかかる?」

ワタリ「明日以降であれば……家人全員の不在時間が分かればいつでも取り付けられます」

「分かった。星井さんは言うまでもなくこの捜査本部に常駐……母親は地方公務員、姉は大学生、そして星井美希本人は中学生でありアイドル事務所にも通っている……この状況ならほとんど苦労なく付けられるでしょう」

「ただ流石にこの部屋にモニターを置くわけにはいきませんので……資料室という名目で別の部屋を借りてそこにモニターを置き、我々はそこで監視をするようにしましょう」

「また監視カメラの映像データと盗聴器が拾う音声は自動でこの捜査本部外にあるワタリのPCにも転送されるようにしておき、我々が監視できないときはワタリに監視してもらうようにします」

総一郎「……分かった」

「ご理解頂き、ありがとうございます」

総一郎「…………」

250 : 以下、名... - 2015/07/26 11:48:30.92 VEXgVeMI0 108/963

【同時刻・765プロ事務所からの帰路】


美希「…………」

リューク「大丈夫か? ミキ。ここ最近、目に見えてやつれてきてるぞ」

美希「…………」

リューク「あらら。無視かよ。こりゃ重症だな」

美希「…………」

美希(一週間前のあの日から、不安が日に日に膨らんでいく)

美希(あの後はこれといってミキの周りで大きな動きは無い。裁きも今までと同じペースで続けてる……)

美希(パパにはあれから何も聞けてない。家に居る時間は前より増えたけど、もうキラ事件には関わっていないようなことを言っていたから、ミキからそれ以上には聞けない)

美希(いや、でももうどのみち、パパから情報を得るとかどうとかいうレベルの話でもないか)

美希(前のプロデューサーとクラスメイトのA……この両方と接点があるのがミキしかいない以上、遅かれ早かれ……)

美希(いや、でもデスノート……デスノートを押さえられない限り、証拠は……)

美希(ああ……だめなの。最近もうずっと同じ思考が頭の中をぐるぐる回ってて、吐きそう)

春香「みーきっ!」ドンッ

美希「うひゃあ!」

春香「わっ! びっくりした」

美希「は……春香? もう、驚かせないでなの……」

春香「あはは。ごめんごめん。ちょっとびっくりさせようと思ったら、勢いつき過ぎちゃった」

美希「もー……」

春香「……怒った?」

美希「ううん。怒ってないの」

春香「そう、良かった。じゃあ一緒に帰ろ」

美希「うん」

253 : 以下、名... - 2015/07/26 12:18:27.06 VEXgVeMI0 109/963

春香「でさ、響ちゃんが……」

美希「あはは。実に響らしいの」

春香「……なんか、ちょっと久しぶりだね」

美希「え?」

春香「こういう風に、他愛も無い話で盛り上がるの」

美希「あー……まあ最近、色々あったしね」

春香「うん。そうだね」

美希「…………」

春香「ねえ、美希」

美希「? 何? 春香」

春香「実は私……美希にずっと聞きたいことがあったんだ」

美希「……え?」

春香「今、聞いてもいい……かな?」

美希「な、何?」

春香「うん……えっとね」

美希「…………」

美希(ま、まさか……『実は美希がキラなんじゃないの?』とか……?)

美希(い、いや、そんなことはありえないの。だって春香はAのことは知らないんだし)

美希(今の状況でミキだけを疑うはずが……)

春香「美希って、さ」




















春香「いつデスノートを拾ったの?」


















美希「…………え?」



続き
美希「デスノート」【2】


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