AIを使いこなしたい多くの人が抱えている問題はここにある。
多くの現場では「良いプロンプトをください」という要望が先に立つ。再現性のある成果を急ぐあまり、完成形だけを集めようとする。しかしその結果、同じプロンプトを使っても人によってアウトプットが安定しない。これはAIの性能差ではなく、プロンプトの背景にある思考が共有されていないから起きる。
なぜこうなるかというと、プロンプトを「文章」として扱っているからだ。
本来プロンプトは、課題設定・判断軸・切り捨て条件をまとめた思考の設計図なのに、表層の言い回しだけが流通してしまう。設計意図が抜け落ちた状態では、応用も修正もできない。ここが問題の核心になる。
では、どのような思考をすればプロンプトを作れるようになるのか。流れは三段階で説明できる。
最初にやるべきは、問いを定義することだ。
「何を出力させたいか」ではなく、「何を解決したいのか」「何が決まっていないのか」を言語化する。ここが曖昧だと、どんなに丁寧な指示を書いてもAIは迷う。プロンプトの8割は、この問いの切り出しで決まる。
次に、判断基準を外に出す。
専門性がある人ほど、良し悪しを直感で判断している。この直感を「評価軸」として文章化する。重視する観点、避けたい方向性、優先順位。これを明示すると、AIは書き手の頭の中と同じ道順で考え始める。
最後に、思考の順序を指定する。
いきなり答えを出させない。現状整理 → 仮説 → 検証 → 出力、のように通ってほしい思考ルートを与える。ここで初めて、プロンプトは「指示文」から「思考装置」に変わる。
この流れで作られたプロンプトは、使い回しがきく。
なぜなら、文章ではなく考え方が埋め込まれているからだ。だから他人が読んでも、その人なりに調整できるし、AIの出力を見ながら設計を直せる。
つまり講座で伝えるべき順番はこうなる。
問題提起:なぜプロンプト集は再現しないのか
原因説明:プロンプトを文章として消費しているから
思考法提示:問い・判断軸・思考順序を設計する
結果:専門性を折りたたんだプロンプトが作れるようになる
この構造で話せば、「プロンプトを配ってほしい」という要望自体が、自然と次の段階へ引き上げられる。
プロンプトを学ぶ話ではなく、考え方を可視化する話になるからだ。
では、よくある失敗パターン → なぜ起きるか → どう考え直すか → それをどうプロンプトに落とすか、この順で具体例を出す。
まず、よくあるパターン。
多くの現場で最初に出てくるのは、
「このテーマでブログ記事を書いてください。SEOを意識して、わかりやすく」
というタイプのプロンプトだ。
一見ちゃんとしているように見えるが、出てくる記事は凡庸になる。どこかで読んだような構成で、差別化もなく、読後に何も残らない。
これはAIが悪いのではない。問いが存在していない。
なぜこうなるか。
このプロンプトには「解決したい問題」が書かれていない。書き手が本当は何に困っていて、読者に何を理解させたいのかが省略されている。AIは空白を一般論で埋めるしかなくなる。結果として、平均点の文章が出る。
ここで思考を一段戻す。
この人が本当にやりたいのは、
「記事を書くこと」ではなく
「読者が◯◯を誤解している状態を正したい」
とか
「意思決定の判断材料を一段引き上げたい」
はずだ。
つまり最初に言語化すべきは、
出力物ではなく、問題状況。
ここでプロンプトはこう変わる。
「◯◯について、多くの人はAだと思っているが、それはBという点で誤解がある。
その誤解が生まれる背景を整理した上で、正しく理解するための思考の枠組みを提示したい」
この時点で、AIの動きが変わる。
もう「記事生成マシン」ではなく、「問題整理役」になる。
次に、判断軸を入れる。
専門性がある人は、良い記事かどうかを無意識に判断している。
浅い説明を嫌う、断定を避けたい、実務に使えない話は不要。
これを明示しない限り、AIは気を利かせられない。
そこでこう足す。
「一般論の要約は不要。
初心者向けの説明は省き、実務で判断が分かれるポイントに絞る。
断定は避け、なぜ判断が分かれるのかを構造で示す」
これは文章の指示ではなく、価値観の共有だ。
最後に、思考の順序を指定する。
多くの人はここをすっ飛ばして「結論を書いて」と言う。
だがそれだと、AIは自分の中の最短ルートで答えを出す。
代わりにこう書く。
「まず現場でよく見られる誤解を列挙し、
次にその誤解が生まれる原因を構造的に分解し、
その上で、より妥当な考え方の枠組みを提示してほしい」
これで、AIは考えながら書く。
整理すると、このサンプルでやっていることは一貫している。
・最初に「何が問題か」を定義している
・次に「どう判断したいか」を共有している
・最後に「どう考えてほしいか」を指定している
だから、文章のトーンや長さを変えても、芯はブレない。
ここで伝えたい核心はこれだ。
良いプロンプトは、
「何を書かせるか」ではなく
「どう考えさせるか」を書いている。
この型を理解すれば、職種が変わっても、テーマが変わっても応用できる。
プロンプト集が不要になる理由も、ここにある。
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