大宮日記 ラテン語、チョコザップ、漢文、大宮図書館

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【読了】野村真理『ガリツィアのユダヤ人』人文書院

さいたま市立大宮図書館所蔵

www.lib.city.saitama.jp

2025/06/06 大宮図書館より借入
2025/06/10 読了
2025/06/11 大宮図書館へ返却

すみません。楽して、Gemini 2.5 Pro に私の特に印象に残った箇所を読み込ませて、レビューを書いてもらいました。

現在、世界が固唾をのんで見守るウクライナ。その西部にかつて存在した「ガリツィア」という地をご存じだろうか。本書は、この地を舞台に、ポーランド人、ウクライナ人、そしてユダヤ人という三つの民族が織りなした、複雑で、あまりにも悲劇的な共存と対立の歴史を、丹念な史料研究に基づいて描き出した名著です。
私が本書を読んでまず心を掴まれたのは、「ポ・リン」という言葉の伝説です。ヘブライ語で「ここにとどまれ」を意味するこの言葉は、中世ヨーロッパで迫害を逃れたユダヤ人にとって、ポーランドがいかに安息の地であったかを物語っています 。当時のポーランド王はユダヤ人の経済力に着目し、「カリシュの特権」などで彼らを法的に保護しました 。ユダヤ人は、ポーランド貴族が未開の地であったウクライナへ進出する際にも、その経済活動の担い手として重要な役割を果たします 。貴族の広大な領地経営を請け負う「アレンダ」という賃貸借システムは、その象徴でした 。
しかし、この「ユダヤ人の楽園」には、初めから悲劇の種が蒔かれていました。貴族と農民の間に立つという構造的な役割ゆえに、「貴族の領地経営の片棒を担ぐユダヤ人は、農奴制にあえぐ農民の恨みを買わずにはいなかった」のです 。この蓄積された憎悪は、1648年のフメリニツキーの反乱で爆発し、ウクライナユダヤ人社会は壊滅的な打撃を受けます。本書は、この反乱が「ポーランドにおいてユダヤ人の楽園時代に終止符を打つ」画期であったと記しています 。
近代に入り、ポーランド人とウクライナ人のナショナリズムが激しく衝突する中で、ユダヤ人は再び苦難の道を歩むことになります 。両者の板挟みとなり、どちらの側につくかという苦渋の選択を迫られ、あるいはポーランド反ユダヤ主義の高まりの中で、遠くマダガスカル島への移住計画まで持ち上がる始末でした 。
そして、第二次世界大戦という未曾有のカタストロフが訪れます。ウクライナ民族主義者組織(OUN)は、独立のためにナチス・ドイツと手を結び、ユダヤ人問題を「『戦闘』におけるOUNの闘争と活動」と見なしました 。本書が静かに、しかし決定的な一文で記すように、「ウクライナ人は、東ガリツィアにおける以後のユダヤ人の運命に関心を持たなかった」のです 。この無関心の先に何が待っていたかを、私たちは知っています。
本書は、ガリツィアという「失われた世界」を通して、民族共存の複雑さと、それがナショナリズムの嵐の中でいかに脆く崩れ去るかを教えてくれます。現代のウクライナ情勢を理解するためにも、避けては通れない歴史の深層がここにあります。重厚で、時に読むのが辛い一冊ですが、それゆえに必読の書と言えるでしょう。

東へ行けば行くほど地獄なのはわかっていても踏みつけられて追い出されれば致し方ない。東しか方向はなかったのだから。しかしそれが反転しパレスティナアメリカへと向かう。そしてそれはさらなる地獄をまき散らしていく。どうすればいいのさ。