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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

なぜ奈良ファミリーはいつも渋滞してるのか?──道路の宿命と50年の歴史に迫る

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奈良ファミリーってご存じですか?これは奈良県奈良市近鉄西大寺駅から徒歩3分という立地にある、近鉄百貨店やイオン、専門店などがひとつになった巨大商業施設です。なんと1972年に開業した歴史ある大きなお店です。

奈良ファミリのたぶん一番メインの出入口
…が、渋滞がヤバい。ほんとに。

国土交通省の記事では「時間帯による交通量の変化が激しく、特に西大寺平城宮跡付近の交通量は異常である。(「奈良ファミリー」付近、かなり混雑する!!)」とまで書かれています。

今回は「なぜ奈良ファミリー周辺がここまで混むのか?」を解説してみたいと思います。

奈良ファミリ駐車場MAP

奈良ファミリーの立地

奈良と大阪を結ぶ阪奈道路から西大寺駅付近で北向きの道路と分岐して京都方面に抜ける片道1車線沿いに建っています。

そして、近鉄西大寺駅は電車のターミナルであり、大阪方面・京都方面・奈良(奈良公園)方面・大和八木方面の4方向の路線が一気に集まります。

西大寺駅、いや、広いw

阪奈道路と京都を結ぶ道路の宿命

奈良県って、京都方面へ南北に抜けるルートが極端に少ないんです。合計片道10車線しかないんです。

(参考:片道2車線は国道168号線、県道2号線、国道24号線。片道1車線は県道142号、奈良市道20号線、奈良県道754号線、奈良市道52号線)

そして奈良県京都府を移動したい人が結構いて、国の調査によると約87,000人/日。ざっと仮定して車移動が半分、一台の車で2人乗る、つまり4分の1が実際の自動車で移動すると考えてみると約20,000台w

ということは1車線で約2000台使うんです。

国交省の基準によると、片側1車線の理想的な処理能力は1,800〜2,000台/日程度とされています。つまり奈良県と京都を移動する車だけでお腹いっぱいです。

地元交通量データもすごい

そして、奈良ファミリー前を通る奈良市道52号線。ここだけで、推定で6,463台(上下計)/日の車が走ります。さっきの「奈良〜京都」より多く走っているのは、京都まで行かない奈良県内だけで済む移動の人も加わるからなんですね。

いや、混む混む(笑)

駐車場事情は「分散型」

奈良ファミリーの駐車場は、店舗隣接の立体駐車場がメインです。それに加えて、東側には道路2本を挟んで平面駐車場が4つに広がっています。実は北側にも1か所はなれてあります(北第3駐車場)が、ほとんど使われていません(ちょっと歩かないといけないので)。

歴史を追えていないのですが、おそらく駐車場が混むからどんどん東側の土地に駐車場を作っていったという感じだと思います。

駐車場間の移動もガードマンさんが誘導しないと無理
公道の停止線と奈良ファミリーの停止線の距離が短いw
店舗と平面駐車所の間はちゃんと屋根が付いたブリッジがあります
すこし離れた北第3駐車場、ちょっとひっそりしてます

近隣道路

さっき、公道を2つ跨いで東側駐車場へ、と言いました。これには訳がありまして、公道と公道の間に幅10mぐらいの川が流れています。川を挟んで両側に公道があるんです。それ自体はいいのですが、なんと南側で東西に結ぶ道路(もちろんこれも片道1車線!しかも西大寺駅平城京を結ぶ交通量が多い道)と交差するのです。なんと信号と信号の間は10m!

信号交差点と信号交差点の間が10m
生活道路へ侵入禁止の看板、、、、いや、たぶん駐車場が複雑で混乱して入っちゃいそう。ガードマンさんが教えてくれるのかな
その結果、"連続して交差点が並ぶゾーン"が形成され、交差点詰まりが常態化してしまっています。

信号制御は頑張ってる。でも限界。

現地では確かに信号制御も工夫されていて、頑張ってはいます。ただ、それ以前に道が片側1車線なので「出ても詰まる、進んでも詰まる」状況。

たとえば南へ進めば阪奈道路へ。北へ進めば、また片側1車線のボトルネックが待っています。つまり、「奈良ファミリー周辺だけが渋滞してるんじゃなくて、その前後もすべて混んでる」という構造的問題なのです。

では、解決策は?

結論から言うと、即効性のある抜本的解決策はありません。ですが、いくつか中長期的な取り組みは動いています。

今後の改善ポイントとして、

  • 奈良と京都の移動用に京奈和自動車道(高速道路)新規建設
  • 同じ目的で、大和中央道(一般道)の整備進行(西大寺駅から少し西側に阪奈道と京都方面を結ぶ新しい道路計画)
  • 西大寺駅の南北を動きやすくするために、西大寺駅の高架化工事

ただし、どれも完成までには時間がかかりそう…。というかできるのかな、、、、

なぜこんなところに建設したの?

いや、完全に歴史の授業になります。さて皆さん、1972年という約50年前をイメージしてください。当時は自動車なんて贅沢中の贅沢、車移動より電車移動が一般的な時代。もちろんイオンモールとかもなく大きなお店といえば百貨店。そんな時代です。

🚉 駅前に、夢の百貨店ができた

奈良県民にとってちょっとした「未来」がやってきた。それが、近鉄百貨店奈良店──今の奈良ファミリーの誕生です。

電車の西大寺駅から来ることを前提にした、まさに当時の百貨店の構想だった!

西大寺駅は特急も止まるようです!

🚗 予想外だった、日本の"クルマ社会"

その後、想定外のことが起こる。それは、「日本がここまでクルマ社会になるとは、誰も思っていなかった」こと。

1972年当時、日本の乗用車保有台数は約900万台。だが、2020年代には6000万台を超える。7倍近い伸びである。

奈良も例外ではなく、都市部より公共交通が少ない分だけ、車社会化の進行は速かったかもしれません。いま奈良県で生活するにはほぼほぼ車が必須です。

🅿️ 駐車場が不足、そして増設

開業当初、奈良ファミリーの駐車場は決して大きくなかった。なぜなら電車で来るのが当たり前だったから。

しかし、マイカーが普及する中で、次第にこうなる。

「駐車場が足りない → 近くの土地を買い足して駐車場にする → 駐車台数は増える → 道路はそのまま」

結果、施設のキャパシティは拡大していく一方、その周辺の片道1車線道路には限界がきてしまう。

しかも、交差点が連続していたり、駅と施設の間を公道が挟んでいたりと、"構造的に渋滞しやすい"配置にもなっていた。

それでも、地域は慣れていった

でも、不思議なことに、地域はこの「交通の詰まり」を"受け入れて"いく。

それは、いきなり奈良ファミリーができたのではなく、もともとあった奈良ファミリーに車で来る人が徐々に増えていったからである。

いつしか奈良ファミリーは、「少し混んでるけど、昔からでそれが当たり前」として定着していた。

渋滞は"失敗"ではなく、風景になった

現代の都市計画や商業論から見ると、奈良ファミリーのような構造はたぶん"最適解"ではない。けれどそれでも、50年以上にわたって地域に愛され続けている。

これは「成功か失敗か」で測るものではなく、「時代のなかで育ってしまったもの」なんじゃないだろうか。

むしろこう言いたい。

奈良ファミリーは、ただの商業施設じゃない。これは「昭和から続く交通と商業のレガシー」であり、そして今なお人々が集まる、"奈良の風景"なんだと。

【番外編】もし今、奈良ファミリーを建てようとしたら

📜 昭和47年=1972年、奈良ファミリー誕生 当時は「百貨店」が大きいお店の時代。法律も今とは違います。いわば"都市型商業施設"への規制がメインで、「周辺交通への影響」なんて、正直そこまで重視されていなかった。なぜなら、車で移動なんてする人はごくわずかしかいなかったから渋滞を考える必要もほとんどなかった。

駅前一等地に百貨店を建てる。それだけで正義だった時代です。

🚧 でも今は違う。法律が全然違う。 その後大規模小売店舗立地法(通称:大店立地法が施行されて以降、大型店舗を出すには、事前に地域への影響(交通・騒音・物流など)を詳細に審査されることに。

🤔 現代のルールでは、奈良ファミリーは… 正直、今この場所に「新しく奈良ファミリーを作ります!」って言ったら、ほぼ無理ゲーです。

なぜかというと:

🔴 問題点(現在の法律下ではNGになりそうな点)

  • 周辺道路が片側1車線 → 交通処理能力が足りない
  • 交差点が密集・複雑 → 信号制御でさえカバーしきれない
  • 駐車場が複数箇所に分散 → 誘導計画が困難
  • 出入り口が公道と密接 → 渋滞・事故の懸念高い
  • 西大寺駅という交通ハブに接する → 生活動線との競合

⚠️ とどめ: 絶対にこんなところにこんな商業施設建てようとすると、文化財が出てくる(笑)そういう地の利です(笑)当時は文化財保護もいまより甘かったからですね!

つまり、地域住民や自治体の「合意形成」や「影響緩和策」そして「文化財調査」などに数年単位の協議が必要になるはずです。

🏛️ じゃあ、なぜ奈良ファミリーは生き残ってるのか? それは──

  • 昭和のうちに作っちゃった物件だから
  • そして、たまたま周りが車移動する人が増えてきて、ちょっとずつ駐車場を増やしたり信号制御したり対応していくしかなかった。要は、地域と共に時間をかけて車に"順応"してきたから
  • だから、渋滞も込みで"生活に組み込まれた"

つまり現代のルールではNG!当時だから出来た(笑)

施設基本情報

項目 内容
施設名 奈良ファミリー
都道府県 奈良県
運営会社 三菱UFJ信託銀行株式会社
敷地面積(m2) 24,818
延床面積(m2) 115,707
賃貸面積(m2) 82,927
専門店数 116
開業日 1970/12
映画館
駐車台数 2,000
駐車料金 有料
最寄駅 大和西大寺駅
距離(m) 500
最寄り高速 京奈和自動車
最寄りIC 木津IC
ICからの距離 6,372
入口の数 6
駐車場の数 6
GoogleMap リンク

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