前回の記事では、ららぽーと甲子園の駐車場の「使い方」を解説しました。
今回は、なぜこのような運用になっているのかを、深掘りします。
📋 目次
1. この施設が抱える特殊な状況
1.1 キッザニアの存在
- 営業開始がららぽーとより2時間早い(7:00〜)
- 1日2回の入れ替え制(第1部・第2部)
- 子ども連れという特性
1.2 甲子園球場の隣接
- イベント時は数万人規模の観客
- 駐車場の不正利用リスク
- 歩行者動線との交錯リスク
2. 方針①:人と車の完全分離
2.1 前提:2つの主要道路
ららぽーと甲子園には2つの主要道路があります。
| 項目 | 西側の道路 | 南側の道路 |
|---|---|---|
| 道路名 | 浜甲子園甲子園口停車場線 | 兵庫県道42号甲子園尼崎線 |
| 位置 | 店舗西側に南北に延びる | 店舗南側に東西に延びる |
| 特徴 | 店舗から甲子園駅・甲子園球場に一番近い | 中距離移動のための道路 |
| 道路仕様 | 片道2車線・中央分離帯あり・十分に広い歩道 | 片道2車線・中央分離帯あり・歩道あり |
| 混雑度 | 0.36(余裕あり) | 0.51(適度な余裕) |
| 24時間交通量 | 7,770台 | 11,358台 |
| 大型車混入率 | 10.8%(一般車中心) | 41.8%(物流車両多い) |
| ららぽーとでの役割 | 人の出入口 | 車中心の出入口 |
データ出典:道路交通センサス(令和3年度)
2.2 課題
甲子園球場イベント時は数万人規模の観客が歩くため、歩行者動線との交錯リスクがあります。
2.3 通常の対策vs.ららぽーと甲子園
通常の大型商業施設
- 使える道路は全て使う
- 駐車場出入口をできるだけ分散
- 数値上の渋滞率を緩和
(理論上の渋滞を減らさないと建築許可がもらえない可能性がある)
ららぽーと甲子園の選択
西側の道路 → 「人専用」扱い
南側の道路 → 「駐車場が並ぶ道路」
2.4 西側の道路:歩行者専用の店舗出入口
2.5 南側の道路:すべての駐車場出入口を集約
中央分離帯の活用:
- 右折入出庫ができない
- 西側から来る車 → 店舗側(北側)駐車場
- 東側から来る車 → 平面駐車場側(南側)駐車場
同じ道路でも、進行方向によってアクセスする駐車場が異なるため、実質的に渋滞が分散されます。
※店舗側と南側駐車場は横断歩道で安全に移動できます
2.6 効果
歩行者にとって
車利用者にとって
- 「まずは南側の道路を走る」という分かりやすいルート
- 駐車場からの出庫も南側道路に集約
- ダムのような機能で一気に流出せず徐々に地域へ放出
(出庫時間に時間がかかるという声もあるが、これはワザと施設内で待たせることで地域の交通がマヒしないようにしている)
2.7 公式アクセス経路の工夫
公式サイトのアクセス経路を見ると
- 西側の道路は地図に描いてあるが、矢印による推奨ルートにはなっていない
- 通常、片道2車線もある道路なら優先的に案内するはず
- 甲子園イベント時の混乱を防ぐため、あえて推奨していないと推測される
2.8 隠れた入口の存在
実は、西側道路からC駐車場(屋上)への入口が存在します。

電子看板まで設置されていますが、公式サイトには記載されていません。
おそらく:
- 積極的に案内するとややこしい
- 緊急時や混雑時の補助的な入口
- (さらに邪推すると)建築時の入出庫台数確保のため(建築許可に必要)
3. 方針②:時間差による需要分散
3.1 前提
ららぽーと甲子園にはキッザニア甲子園という子どものためのテーマパーク施設があります。キッザニア甲子園は未就学児〜中学生までのお子さんが多く詰めかけます。そのため車でのアクセスが必須になります。
3.2 課題
ららぽーと甲子園とキッザニア甲子園が同じ時間にオープンすると
3.3 対策:営業時間をあえてずらす
| 施設 | 平日 | 土日祝 |
|---|---|---|
| ショップ・サービス | 10:00〜20:00 | 10:00〜21:00 |
| 飲食・フードコート | 11:00〜21:00 | 11:00〜22:00 |
| キッザニア第1部 | 09:00〜15:00 | 同左 |
| キッザニア第2部 | 16:00〜21:00 | 同左 |
駐車場の段階的開放:
| 時間 | 開場駐車場 | 対象 |
|---|---|---|
| 7:00〜9:30 | A駐車場のみ | キッザニア第1部専用 |
| 9:30〜10:00 | A・B・F・G駐車場 | 全利用者 |
| 10:00〜 | 全駐車場 | 全利用者 |
3.4 TDM(交通需要マネジメント)の実践
この時間差により:
朝(7:00〜10:00)
夜(20:00(21:00)〜)
3.5 ららぽーと本館もキッザニアの待機場として活用
朝の第1部入場待ちの列は
効果:
- 子ども連れでも快適に待てる
- 大規模な行列でも他の客に迷惑をかけない
- 天候に左右されない
4. 方針③:甲子園球場利用者への対策
甲子園でイベント開催時は、イベント開催中にららぽーとにいないと「+6,000円」が駐車場料金に上乗せされます。
これで、甲子園利用者はこのららぽーと駐車場から甲子園球場へ行くコストメリットが無くなるので自粛されます。
同じシステムは大阪吹田のエキスポシティでも導入(「ゼロシステム」)
5. 方針④:駐車場運用の工夫
5.1 積極的なゲート閉鎖
前回の記事で説明した通り、満車前にゲートを閉じる運用。
これにより:
- ドライバーに判断させない
- 空いている駐車場へ強制誘導
- 特定駐車場での渋滞を防ぐ
- 誘導員を配置して駐車場内での空きスペース探しをできるだけ少なくする
6. オープン後の対応
6.1 オープン直後の混乱
ららぽーと甲子園オープン後、西宮市議会(平成16年12月第7回定例会)で問題が指摘されました。
指摘された問題
交通渋滞:
- 初日7万人超の来客で大混雑
- 臨港線・甲子園筋が駐車場出入りで渋滞
- バスが時刻通りに来ない
- 交差点でUターンする車で危険
6.2 実施された対策
市の答弁によると
交通対策:
- 交通誘導員の増員・配置換え
- 土日は駐車場ごとに入庫制限
- 公共交通利用者に特典
- Uターン禁止看板設置
つまり、ソフト対策が中心。
市側の答弁:
「臨港線と甲子園筋との交差点改良なども含めまして、事業主に対し十分な対策を講じるよう要請してまいりたい」
6.3 その後の展開
抜本的な道路改良は実施されず、ソフト対策で対応。
そして2009年3月、キッザニアが増床。
つまり西宮市は: 1. 交通公害のリスクを認識しながらも 2. 地域の魅力創出を優先 3. 運用改善で対応する方針を選択
この判断が、現在の方針につながっています。
7. 現在のデータから検証
7.1 2026年1月3日の実測データ
正月三が日という最繁忙期での観測:
結論:全駐車場が同時に満車になることはありませんでした。
つまり、設計通りに機能していると証明されました。
8. まとめと妄想
8.1 まとめ:行動変容による需要分散
行動変容により駐車場利用のピークを他の時間帯や場所に割り振っています:
8.2 💡 交通マニアとしての妄想
概ね100点と言いたいところですが、それでも「もっとこうしたらいいんじゃ?」と思う箇所はあります。
妄想① 南側の歩道橋に屋根を付けて!
大きな荷物を持って傘をさすのはキツイです。せめて屋根がついていれば、南側の駐車場に対する負の感情は低減されそうです。
さらに南側の土地に家電量販店やホームセンターという低価格帯で中規模の店を配置して、男性客がこちらに駐車したくなる空間演出をすれば、南側にもっと駐車させられるかも(笑)
妄想② 北側と南側で完全に車で行き来できるブリッジ設置を
この施設は:
- 西から来た車 → 北側の店舗側駐車場
- 東から来た車 → 南側の平面駐車場
という設計思想ですが、これだとどこかでUターンする必要が出ます。事実、議会からもUターンで指摘が入っていました。
ブリッジを作ると:
と妄想してみました。
🔗 関連リンク・参考資料
最終更新:2026年1月10日

