前回、交通渋滞の本質を「川の洪水」にたとえて説明しました。では、関西の巨大空港・関西国際空港(関空)が、なぜあの「南の海上」に作られたのかも、同じ”川の視点”から見てみませんか?
一般に言われる理由:「政治的判断」「用地確保」「騒音問題」
関空の立地について語られるとき、よく出てくる理由は以下のようなものです
確かにこれらも大切な要素です。でも、もう一歩踏み込んでみましょう。「あえて太平洋ベルト地帯から外した」という意思があったということを。
太平洋ベルトはすでに「限界流域」だった
ここで、再び川の比喩を思い出してください。
- 東京〜名古屋〜大阪〜神戸にかけての太平洋ベルト地帯は、産業・人口・交通が極度に集中した「本流のど真ん中」
- ここにさらに空港という巨大な「水流」(物流・人流)を流し込めば、洪水=都市機能の破綻が起こりかねない
つまり、関空の立地は「負荷分散」のための戦略的判断でもあったのです。
川で言えば、「もうこの本流にこれ以上水を流すとあふれる」から、支流の方に流路を分けたというわけです。
神戸案は「経済性は高いが、川があふれる場所」
実際、当初の候補地だった神戸沖・明石沖は、以下のような利点がありました
- 阪神地域へのアクセスが抜群
- インフラの整備コストも低く見積もられた
- 地盤も比較的安定していた
しかしその一方で
- 港湾・鉄道・道路の混雑が限界
- 大都市圏の上空を飛行せざるを得ない
- 騒音問題での住民対立は避けられない
など、まさに本流に水を流す危険性が高かった。
「神戸に作るのは合理的だが危険すぎる」「泉南沖なら、コストは高くても流域を壊さずに済む」という判断が、次第に優勢になっていったのです。
関空 = 調整池と放水路の役割を持った空港
- 都市に直接負荷をかけず
- 静かな南部に分流させ
- 騒音や混雑の被害を最小限にしながら
- 背後に新たなインフラ(関空連絡橋、関空道など)を整備することで
- 結果的に「全体の川の流れ(関西の物流・交通)」を安定化させた
こう見ると、あの立地は渋滞を未然に防ぐための、都市スケールのTDM(交通需要マネジメント)だったとも言えるのです。
誤解されがちな「経済性が低い」という評価
「遠い」「不便」「コストが高すぎた」と関空はよく批判されます。
でも、長期的に見れば経済性だけが正義ではありません。
川に例えると「安くて近いからといって、水をあふれかけの支流に流せば、結局大損害になる」ということです。
むしろ高コストでも流域全体の健全性を守るためには、関空のような選択が必要だったのです。
まとめ:関空の立地は、「川の流れを守る」選択だった
次に関空に行ったとき、ぜひ地図を眺めてみてください。
「なんでこんな場所に…?」と思うかもしれませんが、それはまさに都市という”川の流れ”を守るための、静かな戦略的選択だったのです。