
日本で少子化が進んだのは消費税増税で子育て世代の収入が減少したから
消費税増税の問題について両論併記しているサイトの一つに、不動産会社のリビンマッチが2024年10月21日に更新した「消費税増税は賛成?反対?メリットとデメリットをわかりやすく解説」というものがある。このサイトではまず財務省が提言する消費税増税の理由について『日本では、超高齢化社会によって高齢者の人口が増加しています。内閣府の令和4年版高齢社会白書によると1950年時点では高齢者1人を現役世代の12.1人で支えていました。しかし、2020年には高齢者1人を支える現役世代の人数は2.1人まで減少しています。このままいくと、2065年には高齢者1人を現役世代の1.3人が支える計算です』と述べている。だが、日本の高齢化率が上昇していることを示す際に1950年のデータを持ってくるのはあまりにも古すぎるだろう。1950年はまだ終戦から5年しか経っておらず、第一次ベビーブーム(1947~49年)の影響で小さな子供がたくさんいた時代である。その上、労働力調査によれば65歳以上の就業者数は1968年の229万人から2023年の914万人まで4倍近くも増加していて、現代においては「現役世代が高齢者を支える」という図式は成り立たないのではないだろうか。
更に、消費税増税は日本の少子高齢化を更に促進してしまう側面も持っている。国民経済計算と人口動態統計から過去60年間(1963~2023年)の「名目GDP成長率と出生数」の相関係数を確認すると85.0%と高い数値が表れている。日本で少子化が進んだのは1990年代のバブル崩壊後にデフレ不況が深刻化する中で、消費税増税や歳出削減などを行って子育て世代の収入が減少したからだと言えるだろう(図31を参照)。

また、このサイトでは『消費税増税は法人税、所得税、相続税や贈与税などと比べると経済活動への影響は小さいと考えられます。それは税率が低く、物を購入したり役務の提供を受けなかったりすれば、税金を支払うことはないからです』と述べられている。しかし、これはあくまでもミクロの視点での話である。家庭の多くが増税を受け入れられずに節約して消費支出を減らした場合は個人消費が落ち込み、結果として国民の所得も減らされてしまう悪循環に陥るのではないだろうか。
国民の個人消費を表した名目家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は、東日本大震災が発生した2011年1~3月期の225.7兆円から消費税が8%に増税される直前の2014年1~3月期の248.2兆円まで3年間で22.5兆円も増加していた。2014年4月以降もこれと同じペースで消費の増加が続いていたら、家計消費は新型コロナウイルスが感染拡大する前の2020年1~3月期に293.2兆円、最新の2024年4~6月期に325.0兆円までのぼっていたことが予想される。
そうなると実際のところ、2020年1~3月期に名目GDPは554.3兆円、家計消費は246.4兆円、2024年4~6月期に名目GDPは607.6兆円、家計消費は272.0兆円だが、消費税が5%のままだったら名目GDPは2020年1~3月期に46.7兆円も押し上げられて601.0兆円となり、2024年4~6月期に53.1兆円も押し上げられて660.7兆円となっていただろう。消費税を5%から10%に増税したことで個人消費は合計で50兆円以上も失われてしまったのだ(図32を参照)。

更に、このサイトでは『消費税は現役世代に税負担が集中せず景気などの変化にも左右されにくい』と述べている。税金とは一般的に景気が過熱気味ならば国民の可処分所得を取り上げるために徴税を増やし、景気が悪化しているならば徴税を控えて国民の可処分所得を増やす安定化装置(ビルトイン・スタビライザー)としての機能が存在する。逆に言えば、景気の変動に対して税収が安定している消費税は不況でも失業者や赤字企業から容赦なく取り立てる欠点を持っているのではないだろうか。
総務省の家計調査から2018~2023年の5年間でどの世代が最も1か月あたりの消費支出の落ち込みが深刻なのか調べたところ、35~39歳の子育て世代では2862円も減少していた一方で、85歳以上の高齢者世代では2万2160円増加となっている。消費税10%増税やコロナ禍によって最も消費を減らしたのは30代後半であり、消費税は現役世代に厳しい税金だとも言えるだろう(表3を参照)。

若者の勤労意欲が下がっているのは消費税増税で経済が低迷しているから
それに加えて、このサイトでは『消費税の増税は一般消費者にとってあまりメリットはありません。しかし、消費税増税は他の税目と比べて幅広い世代に平等に課税されます。現役世代が働く意欲を阻害されるのを防止できる可能性があることがメリットです』と主張している。だが、所得税だけでなく消費税も現役世代の勤労意欲を阻害する税制であることは知らない人も多いだろう。
例えば、統計数理研究所の「日本人の国民性調査」では『仕事について次の2つの意見があります。どちらがあなたの気持ちに近いですか?』という質問項目がある。その中で「お金があれば、仕事がなくても人生がつまらないとは思わない」の20代の回答者は1983年の19%から2013年の40%まで増加している。それに対し、「直近5年間の名目GDP成長率」は1983年のプラス6.7%から2013年のマイナス0.7%まで減少していて、若者の勤労意欲が下がっているのは成長率が落ちて経済が低迷しているからだろう(図33を参照)。

1980年代以降に経済成長率は落ちたのは、やはり消費税増税も原因の一つだと言えるのではないだろうか。名目GDP成長率の平均は物品税から消費税3%の時代である1970~1996年度は8.01%にのぼっていたのに対し、消費税5%から10%の時代である1997~2023年度は0.40%と約20分の1程度にまで減少してしまった。
また、このサイトでは『消費税は経費を不当に操作できないため、脱税を防止することが可能です』とも述べている。しかし、国税庁によれば2022年7月から2023年6月までの税務調査で、消費税を申告していない7615人の個人事業者が過去最高となる計198億円を追徴課税されたことが報告されている。その他にも、消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2023年度に発生した消費税の滞納税額は4383億円と、国税全体の滞納額(7997億円)における54.8%を占めている(図34を参照)。

その一方で、このサイトでは不動産の売却代金を元手に海外移住する人が増加している問題についても取り上げられており、『外務省領事局政策課の「海外在留邦人数調査統計」によれば、海外に住む日本人の数は1989年当時58万6972人でしたが2022年には130万8515人と2倍以上に増えています。「海外移住は高所得者だけ」というイメージを持つ人も少なくありませんが、海外出稼ぎとしてオーストラリアが注目されたように、海外のほうが稼げるからと移住する人も珍しくありません。また、フランスでは小学校から大学院までの学費が日本の10分の1以下で、毎月約2~3万円の補助金が支給されるなど金銭面で日本よりメリットの大きい国もあります。そのため低所得者であっても、海外移住に踏み切る人は意外と多いのです。日本人を含む外国人移住者が増加しているマレーシアなど、一部の海外では移住条件を厳しくするなどの対応策も見られるほど海外移住はメジャーになってきているのです』と述べられている。
オーストラリアやフランスが人気の移住先として注目される理由は、経済が好調だったり社会保障が充実していたりする以外にも生活必需品の税率が日本より低いことが挙げられるだろう。生鮮食料品は日本が8%なのに対し、フランスは5.5%、オーストラリアは0%になっている。また、マレーシアは2018年に6%の消費税を完全に廃止して物品税に近い売上・サービス税(SST)に戻した。高橋洋一氏や枝野幸男氏はマレーシアの消費税廃止を失敗だったと言い張っているが、過去20年間の政府歳入の推移を見るとマレーシアは2004年の1163.3リンギットから2024年の3641.7リンギットまで約3.13倍まで増加しているのに対し、日本は2004年の150.2兆円から2024年の218.4兆円まで約1.45倍の増加に留まっている。マレーシアは消費税を廃止して成功している国なのだ(図35を参照)。
2024年10月27日に実施された衆院選では、与党の自民党が公示前の247議席から大きく減らし、1955年の結党以来2番目に少ない191議席にとどまる大敗を喫した。公明党も公示前の32議席を下回る24議席に終わった。石破政権は内閣支持率を回復させるためにも景気対策として消費税廃止を決定するべきではないだろうか。

<参考資料>
労働力調査 長期時系列データ
国民経済計算 2024年4-6月期2次速報値
人口動態総覧の年次推移
消費税は廃止一択だ!
家計調査 家計収支編
日本人の国民性調査 #7.25 お金と仕事
消費税無申告は7,615件、追徴課税198億円って一体どうなってる?
フランスの税制
GST(商品サービス税):オーストラリア
マレーシアの税制