【宇垣美里さんの 映画『手に魂を込め、歩いてみれば』についてのコメントから】
少し前、報じられるガザのニュースに憤る私に、かつての友人は「なんのために知るの?」と言った。あまりの価値観の違いに言葉を失い、何も言えなかった。
でも今なら、言える。やっぱり見なくてはならない、知らなくてはならない。無関心であることは、誰かの痛みを否定するほどの力があるのだから。
この戦争を未だ止められない世界に生きる者として、受け止める義務がある。変えられないなんて、思わない。
「無関心であることは、誰かの痛みを否定するほどの力がある」
私たちは戦争を止めたい。そして、私たちは戦争を止められる。そう信じることができる人でありたい。いつの日か、私たちが多数派になることを願い続ける力がほしい。
むか~し習ったかも知れないマルサスの「人口論」
マルサスは「人口は人間の本能である性欲により幾何級数的に増加するのに対して、食料は算術級数的にしか増加しない」と唱えました(i)。人口を何とかして制限しなければ、食料資源が必ず不足して、貧困が始まるという危機感に基づいた主張です。
(i) マルサス Thomas Robert Malthus は古典派を代表するイギリスの経済学者。1798年初版の「人口論」に登場した言葉です。年がら年中発情しているホモ・サピエンス、その性欲には限りがない、という、強烈な人間観をお持ちであったのかも。
ちなみに、「幾何級数的」「算術級数的」の例として、N=2t と N=30t を比較してみます(人口とそれを養う食糧の量を N、時間を t で表します):

まず、「算術級数的増加」は一般に N = at の形で表現できる。これを t でビブンすると、dN/dt = a となる(たぶん一番簡単な微分方程式)。人口が増加する向きのことを考えるなら a > 0。人口の増加率が定数なのです。
一方、「幾何級数的増加」は N= at (a >1) で表現できる(指数函数的、と言い換えられます)。ここから先はパワーポイントの “数式” で作った説明。

dN/dt = AN ということは、人口の増加率が人口に比例しています。幾何級数的に増加する場合は、人口が多いほど増加率が高くなるのです。エラいこっちゃ、です。
どちらも「単調増大」の函数なのですが、幾何級数的だと・・・ 倍の倍の fight 倍倍 fight by CANDY TUNE (ii)。・・・それはそれは恐ろしいことになる。上のグラフのケースでは、t ~8 付近で食糧不足に陥り、奪い合いが始まる・・・焼肉定食、もとい、弱肉強食の世界となっているわけです。マルサスの描いた未来はとんでもない破滅的なものでした。
(ii) 流行を取り入れてみましたが、オジサン的には消化不良も甚だしいです。
「幾何級数的」よりは「定常状態」がお好き・・・
いや、それでは単純すぎるだろう、人口が指数関数的に増え続けるなんて、何かがおかしい。人口が増加する一方で、現実には資源・食糧は限られているだろうし、人口密度が高くなると環境も悪化する。であれば、人口増加にはいずれブレーキがかかるはず。最後は一定の人口に落ち着くのではないか。
そのように考えたのは、ベルギーの数学者、フェルフルスト Pierre-François Verhulst です(iii)。彼は今日「ロジスティック方程式」と呼ばれる人口増減の予測式を提案しましたが、残念ながらその価値が見出されたのは彼の死後のことだったそう。
(iii) 人口予測に関するフランス語の論文 "Notice sur la loi que la population suit dans son accroissement" を1838年に発表しました。
さて、「ロジスティック方程式」はこんな姿をしています:

増加率 r に「内的」が付いているのは、「ほっといたらそうなる」のようなイメージ。環境収容力 K は個体数 N の限界値みたいなものです。その役割は上の式で N が増大して K に近づくと、カッコの中が 0 に近づき、結果として右辺の値は 0 に近づく。つまり、個体数 N が限界値のK に近づくと、個体数の増加率 dN/dt が 0 に近づく仕組みを作っているのです。
そしてこれは 11/29 の「隣の芝生は青いけど・・・」のとき紹介した式と同じ形です。

なるほど、N の増大が N の2乗で抑制されていますね。そのおかげでこんなグラフになるわけで・・・

世の皆様は、あらゆる分野のめまぐるしい変化の中で生活しているはずなのに、このグラフのように「そのうち一定の状態に落ち着く」ことを無意識のうちに期待しているのではないでしょうか。でもね、そうはいきませんよぉ~ が当たり前だし、簡単に落ち着かない方がよいのが普通なのです。
たとえば、日々の気象が定常状態になってしまったら・・・ 同じところに雨が降り続けるとか、ある地点の気温がずーっと15℃のまま経過するとか。これ、困りますよね? せめて周期的な変化くらいはして欲しいですね。とはいえ、変化の周期が簡単に読めるのもつまらないですね・・・・・・そこそこの刺激はほしいものです。
そこで(え?そうなのか?)、よくある考え方ですが、定常状態の代わりに「平均的な状態」を考えておいて、実際の現象はそこからの「ずれ」が加わったものとして扱う。気象庁の「日本の気候変動 2025」にはこんな図があります:

地球温暖化が取り沙汰されているところですから、「平均的な状態」でさえ一定値ではなくて、赤線のように右肩上がりになっています。青線で示された5年移動平均も、黒点プロットの各年の平均気温は、赤線から「ずれた」値であって、赤線の周囲に分布している、と考えるのです。
「困難は分割せよ」(ルネ・デカルト René Descartes; 『方法序説』)っていうわけです。もっとも、困難を分割して、それぞれ解決してから、全部ガッチャンコする、なんて方法がウマくいくとは限りません。確かな事例としては、地球温暖化の原因は数々ありますが、個別に影響を評価して足し算しても答えは合わないですからね。そこんところはヨロシクです。
ロジスティック方程式を解く
そんなことより、ロジスティック方程式の解を紹介しておきましょう。「もしかしたら二番目に簡単な微分方程式」よりはムツカシイですが、高校生が大学受験で立ち向かう数学のレベルだと思います。

あとは、初期条件「t=0 のとき N=N0」(物事を考え始めたときの人口を与えるのです)を用いると、具体的な解が決まります。

このように「解析的に解けた」のですから、上に赤い字で示した式、 t に関する滑らかな函数になっているはずです。できればその姿をお見せしたい・・・・・・
・・・・・・こちらの事情ですが、主に計算と作図に使用するために、と環境整備中だった PC が10月に故障。業者さんに修理を依頼したのですが、なんとマザーボードに障害があったとのことでした。あれこれ格闘してもらった結果、今朝、変わり果てた姿で戻ってきました。
いや、そうではないですね。本体まるごと交換していただいたのです。これから少々時間をかけてイジり倒したいと思います。うまくいけば、ロジスティック写像の分岐図など、美麗な図を用意できるかも知れません。
言い訳が出てきたところで、今年はここまで~


















