
2025年、日本映画界にとっては歴史的な年だった。アニメ一辺倒だった昨今、実写映画の興行成績が半年間も話題になり二十数年ぶりに記録を塗り替えた。それも仕掛けた興行によるものではなく、作品評価が引導して客の足を映画館に向かわせたのが嬉しい
そんな一年、わたくしもコンスタントに映画館に通い目標の本数をほぼ達成することができた。プライベートではいくつかの出来事もあったけど、元気に映画館へ行ける身体とカツカツではあるが経済的な蓄えに感謝しよう
そして、2026年も好きな映画を好きなだけ鑑賞できるよう真摯に生きてゆく。いつもの通り、映画一年の計をベストテン形式で残し、再出発だ
①「国宝」
圧倒的一等賞。学生時代からの映画好き友人同士で毎年ベストテンを投票しあっているけど、いつもは僅差で割れる一位が2025年は断トツでこの作品に票が集まった。脚本、演出、撮影、演技のどれもがこの十年来の邦画でも群を抜いていた
②「ふつうの子ども」
呉美保監督作品にはあまり相性が良くないと敬遠していたのだが、この小品には痛く感心させられた。何しろ子供の扱い方がうまい。是枝監督や西川監督並みの子供遣いだと思う。小さな世界を描いているのに語られる奥行きは結構深淵なのも凄い
③「フロントライン」
あのコロナ過に起こった象徴的な事件を題材にしたところが先ずは素晴らしい。今になってみればの感想が、いくつも出てきそうな対応や世間の無知さを描きながらも、社会派ドラマじゃなくてしっかりエンターテイメントにして観せてくれた
④「爆弾」
佐藤二朗の怪演に引っ張られ、ほとんどが取調室の狭い空間なのに深い闇を見せ続けられている感覚。たまに原作より面白い映像作品に出合うことがあるけど、この作品もその一例になった。役者のウエートってやっぱり大きいんだと再認識させられた
⑤「アノーラ」
アカデミー受賞作にしては小品であり性労働従事者を主人公にするなど、最近の傾向とは少し変わっていたかな。往年のニューシネマ時代なら題材になりそうなお話を現代社会に問う監督の真意はわからないが、主演女優の一途な暴走が最後まで観せ切った
⑥「宝島」
映画化した勇気にポイントを幾分かあげたのは正直なところ。終盤のエピソードは原作に忠実ではあるけれど、何でもかんでも謎解きをする必要はなかったと思う。沖縄の人々が根っ子に持っているアメリカと日本に対する言いようのない感情が痛い
⑦「チェーンソーマン レゼ篇」
2025年のアニメは鬼滅映画の爆発的ヒットで盛り上がった。でも作品の質としてはこのチェーンソーマン映画版が圧倒的に面白かった。テレビアニメで観ていたキャラクターが初恋を経てちょっとだけ大人に、そして感情ある人間に成長するところは涙
⑧「ファーストキス」
やや破綻のあるお話もファンタジーとして許せるならば、離縁を決断した冷めた夫婦にも奇蹟は訪れるんだと信じさせてくれる。恋愛感情自体が幻想なのかもしれないが、大人になった今だからこそ寄り添いたくなるラブストーリーだ
⑨「悪い夏」
働けるのに働かず不正に公的資金を受給し続ける不届き者が少なからずいるらしい。この作品はそんな輩と生活保護を判断する小役人の戦いを小気味よく描いている。ただし、正義は勝つ的な教科書映画ではなくてダークなストーリーが良く出来てた
⑩「旅と日々」
三宅唱の監督作品なので期待が大きすぎた。中毒性の高い、つげ義春の原作漫画に軸足を持っていかれたように感じた。不条理で結末のない話だし、二つの違うエピソードで作られていたのも影響しているのか。新境地といえばそうなんだろうが
番外
「室町無頼」の痛快時代劇、「この夏の星を見る」に登場するコロナ過の青春、「てっぺんの向こうにあなたがいる」「東京タクシー」は小百合さん千恵子さんが健在だ。「でっちあげ」の怖さや「サンセット・サンライズ」の地方賛歌も忘れられない良さがあった
個人的に優れた仕事だと思ったのは下記の通り
監督 李相日(国宝) 的確で力強い映画作り
脚本 奥寺佐渡子(国宝) 3時間の脚本をまとめ上げた才能
主演女優 マイキー・マディソン(アノーラ) 米映画女優の底力
主演男優 吉沢亮(国宝) 美しく切ない力演
助演女優 龍内公美(ふつうの子ども) ぶっ飛んだママを軽妙に演じる
助演男優 横浜流星(国宝) 美しく切ない力演2
注目 嶋田鉄太(ふつうの子ども) 将来楽しみな子役
黒川想矢(国宝)(この夏の星を見る) クリアな存在感

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