スイス在住の医師・平井麻依子氏の著書『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』(2025/1/30)サンマーク出版を読んでいて、羽田新ルート問題ウォッチャーにとって、とても興味深い記載を発見。
本書のメインテーマではないが、コーネル大学の論文と英国の医学誌「ランセット」の論文に係る記述だ。
あらためて「ランセット」の論文(英文)を調べてみると、「航空機騒音の5dBの違いは、英国では2か月の読解力の遅れ、オランダでは1か月の読解力の遅れに相当した」という衝撃的な調査結果が記されているのである。
『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』での気づき
『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』(2025/1/30)サンマーク出版を読了。
新宿区出身でスイス在住の医師・平井麻依子氏。35歳の若さで脳腫瘍を患う。放射線治療と薬物治療がうまくいったものの、気分障害や集中力低下、頭痛など、術後の後遺症に悩まされたという。
そんな著者が論文、患者インタビュー、医師との会話を通じて辿り着いたのが「脳のコンディションを整えること」の重要性だった。本書には、「脳のコンディションを整えること」が記されている。
本書のメインテーマではないが、羽田新ルート問題ウォッチャーにとって、とても興味深いことが記されているので引用する。
大気汚染や騒音は気づかないうちに脳に影響!
(前略)次は、騒音によるストレスについてです。人間が作り出す騒音の量は30年ごとに倍増しており、それは人口増加速度よりも高スピ―ドです。
アメリカ・コーネル大学のキャリー・エヴァンスが1998年に発表した論文があります。ミュンヘン国際空港が開設される前後の2年間に、近辺に暮らす子供を対象にした調査です。
ストレスホルモンである、アドレナリンとノルアドレナリンの数値を開港から定期的に計測しました。
すると、空港近辺に暮らす子供の数値は、静かな地域に暮らす子供と比べ2倍近く高いことがわかりました。2005年、イギリスの医学誌『ランセット』に掲載された論文でもわかったことがあります。
イギリス、スペイン、オランダの主要空港の近辺にある小学校に通う数千人の子供たちが騒音により、読解力と記憶力と行動に明らかに悪影響を受けていると報告しました。
騒音が5デシベル上昇すると、読解力に2か月分の遅れが出ました。
このように、高速道路や飛行機の騒音のように無害に思えるもの、普段気に留めないものであっても脳に影響を及ぼすのです。(以下略)(P84-85)
本書で言及されている二つの論文を以下に整理する。
コーネル大学の論文:騒音が児童のストレスを著しく上昇させる
コーネル大学のキャリー・エヴァンスが1998年に発表した論文。
「慢性的な騒音曝露と生理学的反応:環境ストレス下で暮らす子どもたちを対象とした前向き研究」
※上記リンク先にアクセスすると、論文全文を無料で見ることができる。
(↓ 機械翻訳)
要約
航空機騒音への慢性曝露は、9歳から11歳の児童において、2年間にわたり精神生理学的ストレス(安静時血圧および夜間のエピネフリンおよびノンピネフリン)を上昇させ、生活の質の指標を低下させた。騒音の影響を受けている地域と比較対象地域において、大規模新国際空港の開港前後に収集されたデータは、聴覚障害を引き起こすのに必要なレベルをはるかに下回る環境レベルにおいても、騒音が児童のストレスを著しく上昇させることを示している。
英国医学誌「ランセット」論文:騒音5dB上昇で読解力に2か月分の遅れ
英国の医学誌「ランセット」に掲載された論文。
Aircraft and road traffic noise and children’s cognition and health: a cross-national study
※上記リンク先にアクセスすると、論文全文(PDF)を無料で見ることができる。
「航空機および道路交通騒音と子どもの認知能力および健康:国際比較研究」

(↓ 機械翻訳)
背景
環境ストレスへの曝露は、子どもの健康と認知発達を阻害する可能性があります。
大気汚染、鉛、化学物質の影響は研究されてきましたが、騒音の影響についてはあまり研究されていません。そこで本研究では、航空機騒音および道路交通騒音への曝露が子どもの認知能力と健康に及ぼす影響を評価することを目的としました。
方法国際横断研究を実施し、オランダ77校、スペイン27校、イギリス30校の主要空港周辺の自治体管轄区域にある89校に通う9~10歳の子ども3,207人のうち2,844人を評価しました。
騒音等高線図、モデリング、および現地測定から予測される、学校における外部航空機騒音および道路交通騒音への曝露の程度に基づいて子どもを選抜し、国内の学校を社会経済的地位に基づいてマッチングさせました。
認知機能と健康状態は、教室で実施された標準化されたテストと質問票によって測定しました。また、質問票を用いて、保護者の社会経済的地位、教育歴、民族的出身に関する情報も収集した。
結果慢性的な航空機騒音への曝露と、読解力(p=0.0097)および認識記憶力(p=0.0141)の障害との間には、曝露効果と線形の関連が認められた。
また、母親の教育歴、社会経済的地位、持病、教室における騒音遮断の程度を調整した後も、不快感(p0.0001)との非線形の関連が維持されていた。
道路交通騒音への曝露は、エピソード記憶(概念想起:p=0.0066、情報想起:p=0.0489)の増加と線形の関連が認められたが、不快感(p=0.0047)とも線形の関連が認められた。航空機騒音も交通騒音も、持続的注意、自己申告による健康状態、または全体的な精神的健康には影響を与えなかった。
解釈
私たちの研究結果は、慢性的な環境ストレス要因である航空機騒音が、特に読解力において、子供の認知発達を阻害する可能性があることを示唆している。
論文のP1945(PDFの5枚目)に、平井麻依子氏が著書で引用していたくだりが記載されている。
(↓ 機械翻訳)
各国の読解力に対する航空機騒音への異なる曝露レベルにおける効果量は一貫していた(異質性検定 p=0.9、関連の方向は同じ)。
航空機騒音の5 dB の違いは、英国では 2 か月の読解力の遅れ、オランダでは 1 か月の読解力の遅れに相当した。スペインについては国内データはない。オランダとスペインでは、航空機騒音の 20 dB 増加は読解力テストで SD(標準偏差) の 8 分の 1 の低下と関連していたが、英国では SD (標準偏差)の 5 分の 1 の低下であった。
効果量は社会経済的ステータスによって異ならなかった。図 1 は、年齢、性別、国で調整した航空機騒音の 5 dB 帯域別の読解力を示している。
「航空機騒音の5 dB の違いは、英国では 2 か月の読解力の遅れ」という調査結果。日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
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